400年に一度のチャンス -12

***12.官愚の国

 福島第一原発の事故は、明らかな人災である。毎日のようにテレビに出てくる東電関係者、原子力関連の役人達、原子力専門家と称する御用学者達、顔を見るだけでヘドが出そうである。まるで他人ごとのような口ぶりだからだ。“日本の原発では事故は起らない、仮に起ったとしても万全の防護策が施してあるから安全だ。日本の原発技術は世界最高レベルのものであるから安心してよい。” このような「原発の安全神話」をまことしやかに吹聴して国民を騙してきたのは誰であったか。

 石油問題が起るたびに、原発のコスト計算をまことしやかに作り上げて、最も安上がりな原発と偽って推進してきたのは誰であったか。プルトニウムを含む使用済核燃料、廃炉、原発事故、これらの処理費をいいかげんに積算してなされているコスト計算など、国民を騙すための虚言(たわごと)だ。

 極めつきの虚言は原発は地球に優しいとするものだ。“地球温暖化は何としても防がなければならない、温暖化の原因はCO2だ。CO2を全く出さない原発は温暖化防止に役立つ優れもので、地球に優しいものである。”

TV、新聞をはじめあらゆるメディアを駆使して、荒唐無稽なコマーシャルがタレ流されていたのは記憶に新しい。
 スリーマイル島原発の事故、チェルノブイリ原発の事故、日本でも東海村の原燃の事故が現実に起きているのにも拘らず、“地球に優しい”などとよく言えたものである。

 私が住んでいる松江市は、日本で唯一、県庁所在地に原発が立地する街だ。現在、1号機と2号機が稼働しており、3号機も完成して来年から稼働する予定になっている。
 島根原発の10キロ圏内に住んでいる私としては、このたびの原発事故は決して他人ごとではない。

 20年近く前、島根原発の3号機が計画されたときのことである。一人の過去官僚(「粉飾された2兆円 -2」参照)が、御用学者(当時、大学学長、故人)と御用商人(当時、商工会議所会頭、故人)を引き連れて、中国電力と島根県に3号機推進の陳情をしたことがあった。この過去官僚、原発を積極的に推し進めてきた経済産業省(当時は通商産業省)の出身ではない。日銀出身で、地方銀行に天下りしてきた役人崩れである。つまり、キャリアと称される一握りの役人達が省庁を越えて一丸となって危険な原発を推し進めていたということだ。
 この過去官僚、陳情の際に口にしたのが『地球に優しい原発を是非増設して下さい』というものであった。私はTVニュースでこの人物の虚言を聞き、唖然とした。そこまでの嘘を公言して、私達のかけがえのない故郷(ふるさと)を危険に晒そうとするのか、私の身体は怒りに震えた。この人物とは面識があり、私の知人名簿に入れていたが、この時点で名簿から外した。知人名簿が汚れると思ったからである。
 ちなみにこの役人崩れ、当時農林省が進めていた中海本庄工区干拓事業(「亀井静香氏は守旧派か? -1」参照)の推進論者であった。島根原発3号機と時を同じくして、1,600haに及ぶ私達の宝の海を産業廃棄物で埋め立てて金を稼ぎ、森林公園として活用するプランを本気になって提唱した人物である。「ゆりかもめの会」(「亀井静香氏は守旧派か? -2」参照)の方々のご活躍がなければ、古代出雲王国のド真中に“日本一のゴミ捨て場”が出現するところであった。

 高橋洋一氏の「官愚の国」(祥伝社)が上梓された。キャリア官僚としての実体験から、日本の官僚の実態を赤裸々に記したものだ。愚かなキャリア官僚が日本を支配し、牛耳ってきたというのである。その最たるものがエネルギー政策であり、偽りの原発政策だ。
 私は、不良公務員の実態の一端を明らかにした(「不良公務員の実態」参照)ところであるが、不良である上に、無能ときたら救いようがない。

 平成23年3月30日、菅総理は原発を含むエネルギー基本計画の再検討を言明した。同時に、現在の不良かつ無能なキャリア官僚と天下りしている過去官僚の総点検を行って日本国の大掃除をしていただきたい。

(この項つづく)

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 ここで一句。

“原発には口を拭って野党づら” -福岡市、河原公輔

 

(朝日新聞、平成23年4月2日付、朝日川柳西木空人選より)

(選者評に曰く、どこにいるの自民。追加して曰く、ひたすら隠れて他人顔。)

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