粉飾された2兆円 -2

 この2兆円というトホウもない数字、実は国土交通省が私の地元で推し進めている、6,000億円規模の治水事業の経済効果として公表されている金額です。前回お話したB/C(ビー・バイ・シー)比率のB(ベネフィット)に相当するものです。



 この大規模な事業は、島根県出雲地方の中心を貫く斐伊川水系の治水事業として計画され、2つのダムと放水路と河川改修の3つの事業からなるとして、国交省は「三点セット」と言い慣わしています。

 このうちの河川改修こそ、現在松江市民が直面している大きな問題で、その内容は、私が住んでいる松江市の真中を流れている大橋川を改修しようとするものです。地域住民の多くがこの大橋川改修工事に疑問を抱いており、なんとしても事業を推し進めようとしている国交省、島根県、松江市と地域住民との間に大きな溝ができているのが現状です。

流れのゆくえ(*読売新聞:大橋川改修事業に関する企画・連載記事)
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/shimane/feature/matue1206887920034_02/

 私も、水郷と称される松江市にとって極めて重要な役割を担っている大橋川を、単なる治水目的のために、河底を掘ったり河岸を削ったり、あるいは景観をブチ壊しにする高い堤防を築いたりしていじくりまわす必要が本当にあるのか、強い疑念を抱いてきました。そのために、この数ヶ月の間、入手できる限りの資料を集めては、分析・検討を加えてきたところです。これまでに私が手許に集めた資料は、この工事に関連する公文書を中心にA4判で4,000枚を超え、気がついたら、コクヨのバインダー・ファイルが16冊にもなっていました。
 地域住民の強い拒否反応を押しのけてまで、国交省は一体何をやろうとしているのか、私は住民としての感情をひとまずさしおいて、できるだけ客観的かつ冷徹な眼をもって片っぱしから資料に目を通していきました。
 その結果出てきたのが、一枚の公文書であり、その中から2兆円という眼を疑うような、トンデモない数字が現われてきたという訳です。

 思えば三年前、ホリエモンこと堀江貴文氏率いるライブドアのインチキを嗅ぎとった私は、ライブドアと堀江氏に関連する、公表されている法定資料を中心にA4版で3,000枚を超える資料を分析・吟味しているうちに、“一枚の法定資料”に行き当り、これによって確信をもって“ホリエモンの錬金術”を書き進めることができたことを想い出します。
 このたび、4,000枚の公文書等の中から炙(あぶ)り出した一枚の公文書も、“ホリエモンの錬金術”のときと同様に、私の直感に確固とした根拠を与えることになり、責任をもってブログ記事を書き進める切り札となりました。
 偶然とでも言うべきでしょうか、両者には奇妙な一致点がありました。堀江貴文氏がインチキ上場をやってのけることができたのは上場時の株価を算定するためのDCF法(ディスカウンテッド・キャッシュフロー・メソッド)を悪用した結果でしたが、国交省のインチキ(私は後に詳しく論証いたします)もまた、DCF法を悪用することによってなされていることです。というのも、B/C分析のB(ベネフィット)の算定の基本にある考え方が他ならぬDCF法だからです。ホリエモンと国交省、インチキのやり方だけでなく、ゴマかしのスケールが大きい点でもよく似ていますね。

(この項つづく)

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 ここで一句。

“官僚に してみりゃちょろい 議員たち” -福岡、只乃愚痴。

 

(毎日新聞、平成20年4月22日号より)

(50年以上も続いてきた一党独裁の政治と政・官・業の癒着のトライアングル、昨年の参院選あたりから大きく風向きが変ってきたようです。これからは不良役人だけでなく、不用役人もはじき出されることでしょう。税金を食い荒す天下り役人は、「過去官僚」(“さらば財務省!”の著者.高橋洋一氏の造語)としてクズ箱入りです。議員だけでなく、一般国民も厳しく見つめていることをお忘れなく。)

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