ホリエモンの錬金術 -7(※資料)

●資料D

DCF法:ディスカウント・キャッシュフロー法(Discounted Cash Flow Method)。

企業価値をP、各年度のキャッシュフローをCn、資本還元率をrとすれば、企業価値Pは、

P = C0+(C1÷(1+r))+(C2÷(1+r)2)+…+(Cn÷(1+r)n

であるとみなす考え方をDCF法といいます。つまり、DCF法は、将来見込まれる各年度のキャッシュフローを現在の値打ちに引き戻して(=還元して)合計したものを「企業価値」と考える方法のことです。
これによれば、一株当りの時価は、「 (企業価値P) ÷ (発行済株式数) 」となります。
株価の算定方式には、様々なものがあり、ライブドアがよりどころとしている公正慣習規則2号に参考として掲げられているのは次の通りです(“店頭有価証券の売買その他の取引に関する規則―公正慣習規則第2号、上場前の公募又は売出し等に関する規則の取扱別添2、価格の算定根拠の記載について“)。

1.純資産方式
(1)簿価純資産法
(2)時価純資産法
・法人税等控除方式
・法人税等非控除方式
2.収益方式
(1)収益還元法
(2)ディスカウントキャッシュフロー法
3.配当方式
(1)配当還元法
(2)ゴードンモデル法
4.比準方式
(1)類似会社比準法
(2)類似業種比準法
(3)取引事例法
5.併用方式

上記の「2.収益方式」の(2)に示されているディスカウントキャッシュフロー法は、将来のキャッシュ・フローCnをどのように見込むのか、あるいは、資本還元率r(ライブドアはrを20%としています)をどのように設定するかがポイントですので、他の株価算定方式と比較してどうしても恣意的になり易いものです。
ライブドアが、このDCF法を隠れ蓑(みの)にして、いかにデタラメな「株価=時価」を算定したのか、回をあらためて説明します。


***●資料E
平成11年9月、(株)光通信等に対して第三者割当増資をする直前の会社の純資産(資本金+利益剰余金)を目論見書の記載から推計してみますと(目論見書に開示されている、同年9月末日の貸借対照表の数値を増資直前のものと見なします)、
^^t
^cc^No.
^cc^勘定科目
^cc^金額
^^
^1
^資本金
^rr^40,000千円
^^
^2
^利益剰余金
^rr^25,572千円
^^
^cc” colspan=”2^合計
^rr^65,572千円
^^/
となります。従って、一株当り純資産は、
65,572千円÷800株=81,965円。
第三者割当増資が一株300万円ですから、PBR(株価純資産倍率)を計算してみますと、
3,000千円÷81,965円=36.6倍
にもなってしまいます。
ちなみに、会社が(株)光通信に第三者割当増資をした平成11年9月4日のPBR(株価純資産倍率)は、日経225種平均で2.37倍、同500種平均で2.35倍、また東証一部全銘柄平均で2.29倍、同二部全銘柄平均で2.28倍(日本経済新聞、平成11年9月4日付)となっており、いずれの平均PBRでも3倍を超えていません。


***●資料F
平成12年3月時点の修正PBRを計算して検討してみましょう。

まず、平成12年3月マザーズ上場直前の純資産は、見せかけとも言える増資の6億円を差し引いて考えれば、平成11年9月時点とさほど変ることはないでしょう。平成12年3月末時点の会社の財務状況は開示されていませんが、第5期中間期(自平成11年10月1日至平成12年3月31日)の資金収支の実績が開示されています(目論見書63~64ページ)。これによれば、経常収支(営業収入+営業外収入-営業支出-営業外支出)は、マイナスの13,283千円となっていますので、平成12年3月末時点の会社の利益剰余金は、平成11年9月末時点と比較して減っていることはあっても、増えていることはないと考えられます。
つまり、純資産は多くとも、前記の通り、65,572千円と考えていいでしょう。
後からスリ抜けていった光通信とグッドウィル・コーポレーションに割り当てられた200株は除いて考えますので、当初の株式数800株をもとに計算することになります。
この800株は、平成12年1月12日に1:12の株式分割が実施されていますので、上場時点では、800株の12倍の9,600株になっています。
従って、修正後の一株当り純資産は、
65,572千円÷9,600株=6,830円
となります。
公募価格が一株600万円ですから、修正PBR(株価純資産倍率)は、
6,000千円÷6,830円=878.4倍
と、にわかには信じ難いトンデモないものになってしまうのです。
ちなみに、会社上場時(平成12年4月6日)のPBR(株価純資産倍率)は、日経225種平均で2.63倍、同500種平均で2.84倍、また東証一部全銘柄平均で2.60倍、同二部全銘柄平均で1.75倍(日本経済新聞、平成12年4月7日付)となっており、平均PBRは3倍を超えてはいません。


***●資料G
****「ブックビルディング方式」
これについては、堀江さんが極めて判り易く、その実態を説明しています。

“ブックビルディングは、大口の機関投資家達の意見を参考にして、証券会社が仮条件という株価を提示。これをもとに投資家たちが希望株価における希望購入株数を証券会社を通じて申告、その申告結果などから市場動向に合った発行価格を決定するという方式である。”(「堀江貴文のカンタン!儲かる会社のつくり方」 P.132~P.133)

ここまでは一般的な説明でいわば建前のものです。次に続く説明がいかにも“コドモ”らしいもので面白いですね。

“投資家の申告はあくまで参考であって、最終的には価格は証券会社が決めることになる。それには明確な基準はなく、かなり恣意的に「これぐらいでしょう」というところで決まってしまうのだ。IPOの場合は当たり前だが、株式が市場で売買されていないので時価というものが存在していないし(山根注.スゴイことを言っていますね)、おまけに平均株価などその時々の状況に応じて、適正な発行価格というのはどんどん変わっていく。”(前掲書、P.133)

上場の際の値決めの実態が、これほどアケスケに、アッケラカンと語られるのは珍しいことでしょうね。確かに、この言葉どおりに、主幹事証券とグルになって発行価格をどんどんつり上げているのですから、大和証券SBCM(株)も内情をバラされてさぞかし驚いたことでしょう。
上場前には「時価というものが存在しない」と言い切っているホリエモンですから、DCF方式といい、ブックビルディング方式といい、一般投資家には何のことだかよく分からないカタカナ言葉を使って煙にまいただけのことで、適正価格の算定などどうでもいいことだったのでしょうね。
実際にどのようにして値決めしたのか、堀江さんは、著書の中で次のように言っています。

“仮にオン・ザ・エッヂが上場すれば、どのくらいの時価総額になるだろう?ということをまず考えた。

そして実際に計算してみて、たぶんわが社は、「500億~600億円程度の価値があるのではないだろうか」という想定になった。“(前掲書、P.138)

なんとも無邪気に語っていますね。ブックビルディングの内幕をバラしたことといい、さすが“コドモ”ホリエモンです。

 

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