引かれ者の小唄

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135 自弁品アラカルト -その3

****3)その3  刑務所内にある売店の品物の名称と価格は独房内に掲示されており、被収容者が購入することができるものであった。勿論、売店まで行って自由に購入できる訳ではなく、その上数量とか購入金額などの制限がついていた。  購入するためには、まず購入希望の願箋を書かなければならない。願箋はその都度「担当さん」と称する担当看守に願い出て、もらい受けるのである。  願箋を書いて看守に手渡すと、三日か […]

134 自弁品アラカルト -その2

***5.自弁品アラカルト ****2)その2  「被勾留者所内生活の心得」の35ページから37ページにかけて、拘置所内で使用できる衣類と寝具が列挙されていた。  驚いたのは、下着類の中に、ズロース、サルマタ、越中ふんどしとか腰巻(女)が書き出されていることであった。第二次大戦中とか戦後しばらくの間であるならばいざ知らず、奇跡的な高度経済成長を遂げ、世界の先進国の仲間入りを果した平成の日本にあって […]

133 自弁品アラカルト -その1

***5.自弁品アラカルト ****1)その1 自弁(じべん)とは、「差入れを受けた物、領置中の物、あるいは自己の領置金等で購入したものを施設内で使用すること」(被勾留者所内生活の心得、24ページ)であり、自弁品とは自弁に係る物品のことである。 平たく言えば、自分で持ち込んだ物とか、差入れしてもらった物とか、あるいは自分のお金で買った物のうち、拘置所の中で使うことのできる物のことを自弁品というので […]

132 安部譲二氏との出会い -その後2

****2)その2 今回の標題についてはなんとも悩ましい思いをした。作家の名前の後に、「氏」とか「さん」をつけるべきか否か悩んだのである。 前回は、「安部譲二との出会い」として、敢えて敬称を付けなかった。勿論、作家を軽んずるが故に敬称を省略した訳ではない。この点、「冤罪を創る人々」において、マルサとか検事の全てを呼び捨てにしたのとは訳が違う。この連中にはどうしても敬称をつける訳にはいかなかったので […]

131 安部譲二氏との出会い -その後1

***4.安部譲二氏との出会い -その後 ****1)その1 その日は島根大学での古文書学の授業の日であった。六十の手習いとばかりに、一年程前から若い学生諸君と一緒に古文書の学習をしていたのである。私より二歳若い先生(相良英輔教授)から、それこそ手取り足取り教えていただいたおかげで、それまでは全く意味不明のナメクジのような筆文字が、スラスラとはいかないまでもなんとか読めるようになっていた。 大学か […]

130 断髪 -その2

****2)その2 散髪は、拘置監の廊下にビニールを敷きその上に椅子を置いて行なわれた。理容師の免許を持っていると思われる受刑者がバリカンとクシだけを用いて散髪をするのである。ハサミとかカミソリなどの刃物を一切用いないのは、刃傷沙汰が起るのを未然に防ぐためであろう。 見張りの看守が一人いて、坊主頭の受刑者が黙々と髪を切ってくれる。被収容者は互いに話をしてはならない決まりになっているからだ。交談(こ […]

129 断髪 -その1

***3.断髪 ****1)その1 勾留中、希望者には散髪が施された。一ヶ月に一度位であったろうか、担当看守が散髪の希望を確認した上で時間配分をして、心得のある受刑者に一人宛髪を切らせるのである。 私は逮捕された当時風邪をひいており、久しく床屋に行っていなかった。そのため髪の毛は相当以上に繁茂しており、かなり見苦しい状態であった。逮捕の2日位前から、NHKが私の自宅に向けてひそかにTVカメラを向け […]

128 うっぷん晴らしとしての反則行為 -その3

****3)その3 看守に対して抗弁等をすることは、「職員の正当な職務行為を妨げる行為」(被収容者遵守事項の8)として禁じられている。 “法令、所内生活の心得又は日課実施上の必要に基づく職員の職務上の指示に対し、揶揄(やゆ)、暴言、抗弁、無視その他の方法で反抗的な態度をなし、又は口出しするなどして職務の執行を妨害してはならない。” 看守をからかったりバカヤローなどと暴言を吐いたりしてはいけないし、 […]

127 うっぷん晴らしとしての反則行為 -その2

****2)その2 江戸時代に犬公方(いぬくぼう)と呼ばれた将軍がいた。第五代将軍徳川綱吉である。天下の悪法として名高い「生類憐みの令」を発した人物だ。 「生類憐みの令」は、貞享2年(1685年)7月14日に出された触(ふれ)が、文献上で残っている最初のものとされている。 この御触は、 “先日申し渡し候通り、御成遊ばせられ候御通り筋へ犬猫出し申し候ても苦しからず候間、何方(いづかた)の御成の節も犬 […]

126 うっぷん晴らしとしての反則行為 -その1

***2.うっぷん晴らしとしての反則行為 ****1)その1 房内には「被勾置者所内生活の心得」と「被収容者遵守事項」の2つの冊子が備えつけられており、囚われの身となった以上これに従わなければならない。 あれもいけない、これも駄目という具合にそれこそ一挙手一投足に至るまで細かく規制されており、初めのうちはなんとも鬱陶しい思いがしたものだ。 ところが馴れてくると、苦痛に感ずることもなくほとんど気にな […]

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