検証!! 『ホリエモンの錬金術』-17

****(5) 堀江氏の自白-2つのバックデイト(日付の捏造)をめぐって
『会社の内紛が起った時点では、筆頭株主になっていて、自社株のちょうど50%を持っていた。』

 この堀江氏の言葉について検証してみます。



 まず結論から先に言えば、この部分については嘘いつわりは全くなく、真実が語られているということです。

 何故か?

 よくある日常的な出来事であるならばともかく、上場の準備を始めたとか、それをめぐって会社の中で争いが起った、などという、極めて特殊な出来事については、当事者が間違える訳がありませんし、しかも、この2つの出来事は、ケンカ別れをした人達とか、その他外部の人も関係していますので、内輪だけで内密にできるものではないことから、敢えてウソを言うとは考えられないからです。また、自分の持株についても、会社の経営者(オン・ザ・エッヂの代表取締役は堀江貴文氏でした)としては最も大切な自分の持株のことですから、その比率が「ちょうど50%」であったと言っているのも、そのまま素直に受け取って差し支えないからです。

 するとどうなるでしょうか。
 平成11年の夏(上場の準備を始め、内紛の起った時期)、堀江貴文氏の持株比率はちょうど50%であった、というのが実際のところであるとすれば、前回指摘したように、堀江氏の持株比率が「ちょうど50%」になった時期は、後にも先にも平成9年7月1日の時点しかありません。つまり、2年のズレがあることになります。このことは、証取法によって開示されている記載内容が誤っていることを意味します。具体的に言えば、
+平成10年4月30日に有馬晶子氏から一株5万円で、堀江貴文氏へ48株、宮内亮治氏へ2株譲渡されたことになっている記載内容は虚偽であり、実際の譲渡年月日は、平成11年8月3日の直前である。
+1.の事実は、有馬晶子氏から、平成11年8月3日増資後換算で、堀江貴文氏に192株、宮内亮治氏に8株、合わせて200株が一株5万円で譲渡されたことを意味する。
+有馬純一郎氏分の80株と有馬晶子氏分の残余の120株の合計である200株が、平成11年9月4日(株式会社光通信の第三者割当増資完了日)前後の日に堀江貴文氏もしくは第三者に譲渡された。
+譲渡金額は、2.の200株については、1,000万円(5万円×200株)、3.の200株については4~5億円。
+平成11年9月4日前後までの期日に、有馬晶子氏と有馬純一郎氏の持分合計である400株(全体の50%)が、
++堀江貴文氏に192株が一株5万円で、
++宮内亮治氏に8株が一株5万円で、
++堀江貴文氏と氏名不詳の第三者に200株(内、堀江氏分は120株)が一株200~250万円で譲渡された。
++代金の決済は、上場の2年後。
+従って、平成11年11月5日に有馬晶子氏の株式120株が堀江貴文氏に、一株300万円で譲渡されたことになっている記載内容は虚偽である、
ということです。
 後からつじつま合わせのために、日付を遡らせ(バックデイト)、もっともらしい細工を施しているのではないかということです。尚、上記1.から6.までについての確認は、実際のお金の流れを辿っていくだけで十分です。堀江氏をはじめとする関係者の証言は不要ということです。お金が事実関係を雄弁に物語るのです。

 バックデイトに関しては今一つ、このたび初めて堀江氏がズバリ真相を語っていることがあります。それは和井内修司氏と小飼弾氏が取得した株式についての経緯です。
 堀江氏が自ら明らかにしたその真相は、次の通りです。
+堀江氏は、和井内修司氏に8株、小飼弾氏に4株、“インセンティブの付与”という理由で、一株5万円で譲渡した。
+新株発行届出目論見書の中の、「株式公開情報-特別利害関係者等の株式等の移動状況」において、それぞれの譲渡年月日を平成10年8月3日としていたのは“記載ミス”で、実際は一年後の平成11年8月3日であった。
 堀江氏が“記載ミス”であったと弁解していることについては、号外11号外12において詳述いたします。

 バックデイトに関しては、上場準備のキーマンであった宮内亮治氏が、その著書『虚構-堀江と私とライブドア』の中で、なんともアッケラカンとして次のように語っています。

『粉飾の危うさについて十分に自覚していた私は、2004年9月期決算(山根注:平成16年第9期の決算のことで、私が粉飾の疑いを指摘した最終期です)以降、……本気でコンプライアンスを確立しなければならないと思い、その作業に入っていた。これは作業半ばで中断したが、5億円、10億円単位で決算見込みの数字が簡単に動き、バックデイトで契約書が交わされるような管理体制は改め、……ガチガチに固めようと思っていた。』(同書、P.148)

 宮内氏が語っているのは、粉飾の手段としてバックデイト(実際の日付を勝手にいじくって遡らせることです)が日常的に行われていた事実ですが、登記簿などで外部に開示されることのない株主構成について日付をズラして適当にいじくることなど、バレさえしなければいいと考えていたのか、あるいは良くないことをしているとは全く考えていなかったのかもしれません。

 以上の検証の結果、次の事実が明らかになりました。
 私はこれまで、

『株式公開情報の中の「特別利害関係者の株式移動状況」は、単に虚偽の記載が部分的に存在するのにとどまらず、全体が全くの捏造ではないかということが判明してきたのです。
 つまり、上場の準備段階で、堀江さんの所有株式数が遡って捏造されたものである可能性が高まってきました。』(『ホリエモンの錬金術-6』)

と述べてきましたが、堀江氏自身の

「平成11年夏の時点での持株比率は、ちょうど50%であった」

という発言と、和井内、小飼両氏に対する株式譲渡についての堀江氏の発言と、更には、上場作業を取り仕切った中心人物である宮内氏の「バックデイト」発言とによって、捏造の疑惑は更に深まり、捏造がほとんど確定的になりました。具体的に言えば、「上場までの会社の発行済株式数・株主構成の推移2a」と「上場までの会社の発行済株式数・株主構成の推移2b」(『ホリエモンの錬金術-6(※資料)』)のほとんどが、上場準備に着手した平成11年の夏の時点において、つじつま合わせのために捏造されたものである、ということです。

(この項つづく)

 ―― ―― ―― ―― ――

 ここで一句。

“似てるので 「お子さんですか」 飼い主に” -大阪、桜吹雪2号。

 

(毎日新聞、平成21年6月2日付、仲畑流万能川柳より)

(まさか。)

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