ホリエモンの弁解術 -6

粉飾の事実そのものを頑(かた)くなに認めようとしない堀江さんは、加えて、部下が勝手にやったことで自分はよく分らないとか、記憶にないとか申し立てて、シラを切り、とぼけています。果してこんなコドモじみた言い訳が通るものでしょうか。裁判官席から活発な発言をすることで知られている小坂敏幸裁判長も、このような対応に終止する堀江さんに対して、相当以上にイラついていたようです。

“それでは、あなたの言っていることをどこまで信用していいのか”

と被告人に投げつけた言葉が、裁判長の心情を端的に表しています。

見え透いた偽りの言い繕(つくろ)いは、部下であった宮内亮治さんの証言を待つまでもなく、以下の2つの事実によって破綻しています。それらは全て、ライブドア監査人であった田中会計士が著書の中で明らかにしているものです。まさに、当事者しか知りえない“秘密の暴露”であり、前後の事情が関与会計士の立場から事細かに語られているところから、その信用性は高いものと思われます。

第一の事実は、堀江さんが貸し株を行なっていたことです。田中会計士の著書から引用いたします。

“株式100分割で株価を高騰させることに成功したメリットを最大限に生かすため、M&Aチャレンジャーファンドは、ライブドア株を手にすることができる株式交換期日まで待たずに、堀江氏からライブドア株を借り受け、VLMA1号およびVLMA2号ファンドへ移したうえで、株価が高騰したタイミングを狙って株を売却していたのである。そして、株式交換期日にクラサワ社の株主の手に渡ったライブドアの株をM&Aチャレンジャーファンドが買い取った後に堀江氏に返却している”(前掲書、P.103~P.105)

私はかつて、堀江さんが貸し株を行なって荒稼ぎをしていたという、いくつかの情報をたよりに、当時のライブドア株の売買状況を克明に辿ってみたことがあります(“ゲームとしての犯罪-号外4”、“ゲームとしての犯罪-号外5”)。
この時点では、田中慎一会計士の“ライブドア監査人の告白”に目を通していなかったのですが、当時のライブドアの発行済株式数を前提として、当時の日々の取引株数を考えてみると、
+貸し株がなされていなければ、日々の取引株数の説明がつかないこと、
+貸し株ができる人間は、当時のライブドアの株主構成からすれば、堀江貴文氏以外にはありえないこと、
この2つの分析結果から、堀江さんが貸し株を行なっていたことは、事実その通りであろうと考えていました。
しかし、3つものファンドを介在させて小細工をしていることまでは思い付きませんでした。宮内さんが仲間うちのメールで

「99.9%バレることはない」

と自信を持っていた韜晦(とうかい)工作です。しかも、3つのファンドには、あたかもライブドアとは全く関係がないかのような形式が整えられていたというのです。つまり仮装です。
このファンドに対して堀江さんが貸し株をしていたというのですから、何をか言わんやです。堀江さんが知らないどころの騒ぎではありません。まさに、この仮装隠蔽工作の中心人物なのです。このインチキ工作自体、貸し株がなければ成立しない訳で、しかも、当時のライブドア株式の所有状況からすれば、このような貸し株ができるのは堀江貴文さんしかいないのです。この人物の存在がなければ、そもそもインチキ工作などできなかったということです。株式の100分割に便乗して、貸し株をつかい3つのファンドを隠れミノにして、多額の怪しげな売却益をたたき出したのです。その後のニッポン放送株の買い取り騒動の際にも堀江さんは、リーマン・ブラザーズに対して貸し株をしていますので、堀江さんは貸し株とは何なのか、その意味合いを熟知していたはずです。堀江さんにとっては、虎の子の財産ともいうべきライブドア株ですから、貸し株がどのような意味を持っているのか、あるいは、一連のスキーム(仕組み)の中でどのような役割をし、どのようにして再び手許に戻ってくるのか、よく理解しないままに貸し株契約などするはずがありません。
この貸し株がなされていたという事実だけでも、堀江さんが、粉飾とされたゴマカシの利益計上に、承知の上で深くかかわっていたことを示すものです。

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 ここで一句。

“ご近所に肩で風切る猫がいる” -神戸、吹子兵衛。

(毎日新聞、平成19年4月4日号より)

(平和ですね。猫がゆったりと生活できる社会と、そのような猫をいつくしむ人々の存在。)

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