ホリエモンの錬金術 -号外

一息入れましょう。これは号外ですから気軽に読み飛ばしてください。



私の50歳台は、マルサと検察に振り回された10年間でした。刑事裁判が終結した段階で、できるだけ客観的に自らを振り返ってみようと考え、一年前からメールマガジンを発行し、ホームページを開き、“冤罪を創る人々”と題して書き続けてきました。

そのついでに、気の向くままに勝手なお喋りをしてきたのが「山根治blog」でした。

共に、私のまわりにいて変わることなく私を支えて下さっている親しい人達に読んでいただくことが、私の主な目的でした。クライアントをはじめとして800名程の、私にとってかけがえのない方々に、私に振りかかってきたことをできるだけ分かり易く説明し、日々私が考えていることの一端を何とかお伝えしようと思って始めたものでした。いわば内輪の井戸端会議といったところです。
ところが、このたびの「ホリエモンの錬金術」を書き始めたところ、予想外の反響があり、実のところ驚いてしまいました。
このため、第4回分から私のスタンスを若干変更し、煩雑な記述を敢えて避けることなく、具体的な事実に即して、より詳細に書き進めることにいたしました。
尚、第4回のライブドアの粉飾疑惑については取り急ぎかいつまんで述べただけですので、後日稿を改めて詳述する予定です。

現在、TV、新聞、週刊誌等からの取材申込みが来ています。しかし私は、現時点では取材に応ずるつもりはありません。
9年前私が逮捕された時、NHKをはじめとする多くのマスメディアは検察とマルサがリークする偽りの情報を、自ら検証することもなくタレ流し、私を稀代の悪徳会計士に仕立て上げました。経済とか税金のことをほとんど知らない記者が、検察が意図的に流す矛盾だらけの情報をさも真実であるかのように報道し、私の人格権を傷つけたのです。(「冤罪を創る人々」008 脱税日本一048 マスコミ報道の実態
私が、現在分析の対象としていることは、4つの専門分野(会計実務、監査実務、企業分析、株式市場)にまたがるもので、それらの実務的な知識が必ずしも十分にあるとは思えない取材記者の方にお話ししても私の意図が正確には伝わらないおそれがあります。それ以上に、一部だけを曲げて取り上げられると、それこそ不当に堀江さんを傷つけることにもなりかねません。
このため、私は一言一句、自ら責任の持てることのみを文章化し、原則として一週間に一度このblogで公表していくつもりです。

ライブドアについては、様々な風聞とか憶測が乱れ飛んでいます。私はそれら風説憶測の類いは一切無視し、ライブドアが、主に証取法の規定に従って開示している有報、届出書、報告書、あるいは会社自らが行なったプレス・リリースとか、ホリエモンが自ら著書の中で虚実とりまぜて語っていることなどをベースにして分析をし、記述を進めていく予定です。
同時に、ホリエモンのいかがわしいトリックに深く関わった会社とか人物の法定資料も分析の対象に加えました。
これらの資料は、現在私の机のまわりにありますが、A4版で3,000ページは優に超えるボリュームです。私はこれらの全てに目を通し、ほぼ分析を終えたところです。

トリックを用いて世間を欺き通すことは至難の業です。しかも、ホリエモンは、この5年の間に極めて多くの法定資料という名の足跡を残しています。
ホリエモンは会社の決算をいじくりまわしているだけではなく、証取法が提出と開示とを義務付けている届出書とか報告書の中でもいくつか虚偽の記載をしている(らしい)ことも判明しました。自己矛盾が透けて見えるのです。自らの小賢しいトリックを隠蔽するための小細工なのでしょうか。コドモが、ワルサをしたのを隠すために見え透いた嘘をつくのに似ています。
これについては友野雪子さんが、「ホリエモンはコドモだ」とズバリ指摘されています(“Will”、2005年5月号所収、“だから女はホリエモンを許さない”)。
ホリエモンに関する記事は、このところ巷に溢れていますが、友野さんの記事には感心してしまいました。女性の直感はスゴイですね。
私がこれから第6回以降において展開する記述は、友野さんが感覚的にとらえたホリエモン像を論理的に証明するものとなるでしょう。

ただ、ホリエモンがいくらコドモだからといっても、現時点ではいまだ日本中を煙にまいています。多くの人が、胡散臭い、怪しいとは感じていても、いまだその騙(だま)しのトリックを具体的に解明した人がいないのです。
ホリエモンに対して多くの批判的論述がなされている中で、関岡英之さんの「志を喪失した時代の象徴として」と、大濱裕さんの「ホリエモン流無頼なドアの叩き方」(共に、「正論」2005年5月号所収)の2つは、出色のものです。
前者は、日本の国益に反するアングロサクソン流のグローバリゼーションに警鐘を鳴らしたものであり、後者は、ホリエモン類似の虚業家の実態を的確な視座から描き出したものです。
私がこれから書き進めていくのは、この若い二人の優れた論述を、会計屋の視点から認知会計(Cognitive Accounting)の手法を用いて更に掘り下げ、ホリエモンのトリックを白日のもとに晒し、ホリエモンとライブドアの違法性に具体的に迫っていくものとなるでしょう。

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ここで一句。

“ホリエモンほんとの仕事何ですか” -四日市、花サカバア。

 

(毎日新聞:平成17年3月31日号より)

(ありません。)

 

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