乾隆帝の壺-1

 平成20年4月のことであった。私の許に一つの壺がやってきた。知人の所有になる名品で、中国清朝第六代皇帝乾隆帝(けんりゅうてい)ゆかりの品というふれこみだ。

 私は美術品愛好家でもなければ骨董マニアでもない。ただ好奇心だけは若い時から人一倍旺盛な方なので、早速拝見することにした。美術品についてはずぶの素人であり、中国の歴史についても詳しいわけではなかったが、乾隆帝の名前だけはかねてからよく知っていたのである。

 現物を眼の当りにして言葉を失った。それは輝くばかりの光を放っていた。まさに、練達の職人達が技術の粋を尽して生み出した宝石であった。

 あれから一年8ヶ月、壺は縁あっていまだ私の手許にとどまっている。折にふれて包みを解き、箱を開ける。白手袋をはめて手にとっては壺と向き合っている。壺との対話である。
 高さ37cmの紅釉瓶、ルビーともみまがう珊瑚色の紅色が基調をなしている。ちなみに赤色は私の好みの色だ。好みのネクタイはワインレッドであるし、日頃愛用しているパーカーもまた珊瑚色である。
 番(つがい)の尾長鳥に松竹梅が金料で描かれ、背面には、

珎禽栩栩
枝間舞
満園花發
艶無雙
豐姿挺秀
鮮似錦
群卉豈肯
嬌天香


の詩文が、引首一、句後二の三印を付してこれまた金料で書かれている。単なる金彩ではなく、絵柄や詩文が盛り上るように描かれており、立体感をかもしだしている。生涯に4万編に余る詩作を残したと伝えられる乾隆帝、あるいは皇帝自作の詩文に合せて絵柄が選ばれたものであろうか。瑞鳥の絵柄と詩文、共に見事な筆致である。「大清乾隆年製」の銘が、底裏に青花で記されている。

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^cx^【正面】
^cx^【背面】
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^<%image(20100105-2.jpg|205|273|乾隆帝の壷【正面】)%>
^<%image(20100105-3.jpg|205|273|乾隆帝の壷【背面】)%>
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^cx^【上部】
^cx^【底部】
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^<%image(20100105-4.jpg|205|273|乾隆帝の壷【上部】)%>
^<%image(20100105-5.jpg|205|273|乾隆帝の壷【底部】)%>
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(写真撮影は、澤田暉夫氏による。)

(この項つづく)

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 ここで一句。

“言い訳が むなしく響く 竹中氏” -川越、コーちゃん。

(毎日新聞、平成21年11月3日付、仲畑流万能川柳より)

(敗軍の小将、兵を語る。)

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