ホリエモンの錬金術 -1

ホリエモンこと、ライブドアの堀江貴文さんは、このところフジ・サンケイグループの買収を仕掛けたことからマスコミの注目を浴び、連日連夜、各メディアから引っ張りだこの状態で、何とも賑やかなことになってきました。

堀江さんは、ベンチャー企業の雄であり、若くして巨万の富を手に入れた立派な成功者とされているようです。しかも昨年の球団買収騒ぎのときと同様に、今回も巨大な旧体制に敢然と立ち向かっていく新しい時代のヒーローとして一部でもてはやされています。
果して本当なのでしょうか。
実は昨年、堀江さんが近鉄バッファローズの買収に名乗りをあげたときに、堀江さんがオーナー的な存在として支配しているライブドアという会社は一体何者だろうと興味をいだき、少し調べてみたことがあります。
買収について競合していた楽天と比較してみたのですが、途中でバカらしくなって、調査を中断した経緯があります。
これといった会社の実態が見えてこないのです。プロ野球の球団を買収しようというほどの会社なら、会社の本体がしっかりしていてそれなりの収益がなければいけないのですが、ライブドアの決算書をのぞいてみたところ、余りのオソマツさに呆(あき)れてしまい、会社の分析を途中でやめてしまいました。
そのライブドアが、今度はあろうことか800億円もの資金を用意してフジ・サンケイグループという巨大なメディアを支配下に入れようというのですから、これは又、一体どういうことだろうと気を取り直し、中断していたライブドアの分析を気合いを入れてやってみることにしました。
早速、ライブドアが証取法に従って、平成16年12月27日関東財務局長に提出した、第9期有価証券報告書(表示を含めて133枚。以下、有報といいます)をライブドアのホームページから引っ張り出して印刷し、分析開始。
同時に、一期前の第8期の有報も印刷して手許に。
その結果判ったことは、公表されている決算書ではもっともらしく利益が出たように繕ってはありますが、実際の業績は極めて悪く、いわば自転車操業に陥っているのではないか、ということでした。
私はライブドアの帳簿とか証憑などをチェックしたわけでなく、また堀江さん本人に直接問い質したわけでもありませんので、現時点では粉飾決算とまでは断定することはできません。
しかし、会社が公表している第8期と第9期の有報を私なりの方法で分析した限りでは、粉飾の疑いが極めて濃厚であると言えるようです。
これについては、その分析のプロセスと結果とを後ほど改めて公表いたします。(「ホリエモンの錬金術 -4」参照)
その前に、堀江さんが何故巨万の富を手にすることができたのか、ホリエモンとは何者なのか、彼が信奉するお金に焦点をあてて吟味してみることにします。
億万長者ホリエモンの資金のルーツ、辿ってみると驚くべきことが判ってきたのです。こんなことがなされていたのかと我ながらビックリしてしまいました。
株式市場の盲点を巧みにくぐり抜けていく手法は、今回問題となっているニッポン放送株の時間外取引と同工異曲のもので、奇策、あるいはトリックともマジックともいうべき奇怪なものでした。詐術といってもいいかもしれません。
以下、ホリエモンのいわば錬金術師としての実像を明らかにし、マネーゲームの実態を浮き彫りにしてみようと思います。
それにしても現在進行中の仁義なき戦いは、フジ・サンケイグループを昼寝をしているライオンとすれば、ホリエモンはさしずめ、あまり可愛げのないネコといったところでしょうか。なにせライオンに立ち向かっているこのネコ、どこかからチョロまかしてきたバズーカ砲を脇に抱えているんですから。 (つづく)

―― ―― ―― ―― ――

ここで一句。

“ポッケからカネばかり出すホリエモン” -宝塚、其のママ。

 

(毎日新聞:平成17年3月7日号より)

(お金のマジシャン、ホリエモン。先日、毎日新聞のコラム記者が、ホリエモンについて、50年余り前に起きた“光クラブ事件”を連想すると書いていました。角帽・制服をまとい、誠実さを装った現役の東大生が、大衆から大金を集めて金貸しをやり、資金繰りに行き詰った挙句、青酸カリを飲んで自殺した事件です。毎日のコラムニストは、直感的にホリエモンのウサン臭さを感じ取ったようです。さすがですね。)

 

Loading