マルサ(査察)は、今-⑪-東京国税局査察部、証拠捏造と恐喝・詐欺の現場から

***10.修正申告の慫慂-(3)

 嫌疑者との事前の話し合いの結果、査察がふっかけている納税額1億3,000万円は6,000万円強にまで半減する見通しがついた。前回述べた通りである。

 加えて、査察が提示している5年間の不正所得1億2,000万円自体も極めていい加減なシロモノで、キッチリとつめていけば、3分の1の4,000万円にまで切り下げることができるのではないかと見通した。嫌疑者の預金の増加は、査察が言っているように5年間で1億6,000万円、3年間で1億2,000万円ではなく、この3年間でせいぜい4,000万円程度であるし、しかも、ウラ金でもなければ簿外預金でもなかったのである。査察は簿外預金の意味を取り違えているようだ。無知あるいは勘違いによるものか、あるいは意図的に簿外預金であると強弁しているのか、いずれにせよ、よくあることである。

 3年間の預金増に見合う金額4,000万円の全てが不正所得であるとした場合の税額計算は次の通りである。

法人税の税額試算(PDF)

つまり、この場合には、不正所得が4,000万円と、告発基準とされている1億円を大幅に下回り、告発のおそれがなくなるだけではない。追徴税額も、1億3,000万円から、2,000万円弱へと1億円以上も少なくなる。
 この計算結果も、嫌疑者と契約を締結する際に、説明の上で手渡している。嫌疑者の場合、実際の脱漏所得は概ねこの程度ではないかと判断し、私はこの目標に向けて最善を尽くす旨、申し述べている。

 査察とかそれに準ずる料調の立会い交渉は極めて特殊な仕事である。通常の税務調査の立会い、交渉とは全く異なった対応が要求されるからだ。依頼者は、何よりも刑事告発を恐れていることから、税務代理人としての最大の任務は刑事告発の回避にある。
 ただ、刑事告発の回避といっても、私は闇のブローカーではない。ヤメ検の一部、あるいは国税OB税理士の一部が陰でコソコソやるような汚れ仕事をするような立場にはない。汚れ仕事、いわゆる脱税のモミ消しなどは私の任ではない。私を「悪徳税理士」として指弾した齋藤義典税理士、この人物が邪推するような怪しげな仕事などできるはずがない。

 嫌疑者と契約した私は、取り敢えず査察の担当者に直接会って事実関係の詳細を把握することにした。査察の言っていることの概略は嫌疑者からの聴取によって把握できたが、より具体的なことになると不審な点が多く、よく分からないからだ。嫌疑者が記録した査察官の言行録が本当だとすれば、この法治国家の日本でトンデモない犯罪行為が国家公務員によって堂々と行なわれていることになる。なんとしても事実関係を確かめなくてはならない。
 査察官の言い分を聴いた上で、それが十二分に理にかなうものであれば、そのまま指示通りの修正申告に応ずるし、仮に不審な点があれば、持ち帰った上で嫌疑者と改めて話し合いをするという方針を立てて、査察調査の立会に臨むことにした。
 私が新たに査察調査の立会・交渉に携わることについては、嫌疑者から予め査察官に書面で通告してもらうことにした。

「島根県?松江市?そんな田舎の税理士が何故?」

といった反応が査察官から嫌疑者に向けられたという。

 税務代理権限証書を嫌疑者から査察官に手渡してもらった翌日、私は初めて査察官に架電した。この時の査察官の声は上ずっていた。横柄をウリにしているマルサがやたら丁重になっている。
 代理人の届け出を受けてから私の素性を調べたに相違ない。ネットで“山根治”を検索すれば国税当局に対する悪口のオンパレードだし、何よりも私は、過去3度にわたる国税当局からの致命的な迫害(「冤罪を創る人々」「続・いじめの構図 -2」「続・いじめの構図 -8」)を受け、それらを乗り越えてきた、いわば“手負いの猪(しし)”だ。
 手負いの猪といえば、翼のある虎に擬せられた皇子のエピソードを想い出す(「続・いじめの構図 -22」参照)。
 兄の天智天皇に皇位を打診された弟の大海人皇子(おほしあまのみこ。後の天武天皇)は、辞退した上で出家し、吉野に隠棲した。これを知った人々は、

「虎に翼(つばさ)を着(つ)けて放(はな)てり」

と噂したとされるエピソードだ(日本書紀、巻第二十八、天武天皇上、即位前紀)。
 ネットだけではない。国税内部の税理士経歴簿を検索すれば一目瞭然である。つまり、全国7万人の税理士の中でも、トップクラスの“危険税理士”、あるいは“要注意税理士”として、ファイリングされているはずだ。査察官の声が上ずったとしても不思議ではない。

 私は、松井洋、野間田芳徳の二人の査察官に会う前に、二度にわたって嫌疑者を松江の事務所に呼び、状況の把握につとめた。すでに述べたところである。
 その結果、査察が脱税の見込み(「東京国税局査察部、証拠捏造と恐喝・詐欺の現場から-④」参照)をつけて捜査に着手したものの、見込みが外れ、早期に撤収を図ろうとしていることが判明した。
 査察としては、「間違っていました」ということは口が裂けても言えない。そこで法外な金額をふっかけて、なんとか税金を納めさせて幕引きにしようとしている。つまり、査察のメンツを保とうとして納税者を脅したりすかしたりして修正申告でケリをつけようとしている、査察に限らず国税が行なう、いつもながらの悪弊が、透けて見えたのである。このような脅しと騙しの構図は、先に公表した大阪国税局資料調査課による犯罪行為と同工異曲だ。
 この2つのケースは共に、税理士を巧妙に利用している。長年関与税理士として税務申告に携わってきた税理士を脅し上げ、税理士の責任を不問に付すことを条件として、税理士を国税当局の手先として使っている。暴力集団としてのマルサが、“舎弟”として税理士を利用しているのである。悪質である。

(この項つづく)

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 ここで一句。

“間違っているのに弁が立つ怖さ” -久喜、宮本佳則

(毎日新聞、平成24年8月13日付、仲畑流万能川柳より)

(経済学者と経済評論家。現代のデマゴギー。)

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