パクス・トクガワーナ

今、江戸時代が見直されています。この背景には、明治維新以来、私達は十分な検討を加えることなく、江戸時代を封建時代の名のもとに切り捨ててきたことに対する反省があるようです。

第二次世界大戦後は特にひどい状況でした。戦争放棄を謳う新憲法が施行され、かつての軍事力を背景にした近代化政策が、軍国主義の名のもとに切り捨てられ、一時代前の江戸時代は、その軍国主義の時代よりも更に悪い暗黒時代であったかのようなイメージが植えつけられてきました。

日本が明治以来、理想的な国家としてきたのは、ドイツ、イギリス、フランスなどのヨーロッパの国々でした。
第二次大戦後はそれらにアメリカが加わり、日本はそれらの国々を追いかけ、ひたすら真似をしてきました。
確かにそれらの国が、学ぶべき多くのものを持っていたのは事実です。日本が世界でもトップクラスの経済力を持つまでに成長した背景には、これらの先進諸国の存在を否定することはできません。
しかし、平均的に衣食住が足りてきた現在、果して私達はこれでいいだろうかという疑問の声が各分野から湧き起ってきています。

パクス・トクガワーナ。徳川将軍家のもとで太平の世を謳歌した260年間の江戸時代を指して言われた言葉です。
かつてのローマ帝国について、アウグストウス時代から五賢帝時代までの約200年間をパクス・ローマーナ(ローマの平和)と言うことがありますが、それに擬(なぞら)えて、パクス・トクガワーナ(徳川の平和)と言ったものです。共に、動乱や戦争が収まり、文化の発展が目覚しい時代だったからです。

衣食足りて礼節を知ると言います。ところが現在の日本はどうでしょうか。衣食足りて、礼節をはじめ何か大きなものを見失っているように思えてなりません。
このような時に、政治、経済、文化等各分野において、当時の世界のトップレベルにあったとされるトクガワの時代を改めて振り返ってみることは、必ずしも無益なものではないようです。

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ここで一句。

“鎖国なら平和かなあと思う時” -埼玉、大山ネネ。

 

(毎日新聞:平成17年1月29日号より)

(今言われているグローバル・スタンダードはアメリカ流のもの。日本の、日本による、日本のためのグローバル・スタンダードとは何でしょうか。)

 

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