冤罪を創る人々vol.48

2005年02月08日 第48号 発行部数:328部

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「冤罪を創る人々」-国家暴力の現場から-

日本一の脱税事件で逮捕起訴された公認会計士の闘いの実録。
マルサと検察が行なった捏造の実態を明らかにする。
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山根治(やまね・おさむ)  昭和17年(1942年)7月 生まれ
株式会社フォレスト・コンサルタンツ 主任コンサルタント
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●(第六章)権力としての検察 ― 暴力装置の実態

「(エ) レバレッジド・リース」より続く
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(オ) 「素人考え」

1. 平成8年2月27日、逮捕33日目のことであった。
組合長岡島信太郎氏の取調べにあたっている藤田義清検事が、岡
島氏を脅して虚偽の自白を引き出した、 ―
中村弁護人から信じられない話を聞いた私は、中島に対して検察
の取調べの非をなじり、厳重に抗議した。二人の間には険悪な空気
が漂った。

山根:「検察の片われであるあんたの顔なんて見たくないし、話もし
たくないね。」
中島:「オレだってそうだ。山根は今まで出会った中で最低の男だ。」
山根:「君だって検事として最低の奴だ。」
中島:「何だって。山根は今まで検事に会ったことはないだろう。」
山根:「検事くずれの弁護士、ヤメ検にはかなり会ってるんだ。皆、
ロクな奴はいなかったね。」
中島:「・・・。」
山根:「あとお互い9日のしんぼうだ。一生君とは会わないだろうし、
会いたくもないね。顔を見るのもいやだ。
犯罪製造集団じゃないか、君達は。何が正義の味方だ。」
― 売り言葉に買い言葉であった。

中島は、私が一向に音をあげないし、頑としてシナリオ通りに嘘
の自白をしようとしないばかりか、生意気にも時々噛みついてくる
ので、このところかなり苛ついていた。
イライラ検事、略してイラ検、しかも中島は熊を思わせる大男で
ある。私は中島に対して、密かに“イラ検の熊五郎”なる愛称を奉
ることにした。
この日はイライラがピークに達したらしく、時折椅子から立ち上
がっては、私の前を虚ろな目付きをしてウロチョロと徘徊し、眉を
寄せて頻りに何か考えるふりをした。
イラ検の熊五郎が痴呆症にでもなったのかと他人事ながら心配し
たほどであった。

2. 擬似徘徊性痴呆症が一時的に寛解した中島行博が、気を取り直
したように大きく息を吸い込み、ドッカと椅子に腰を下ろすや、私
に向って猛然と喚き出した。
咆哮が始まったのである。

中島:「大体考えてみろ。こんな小細工が社会的に通用すると思って
いるのか。
こんなことは素人の考えだ。せいぜい会計事務所に勤めている古
手の職員が思いつくようなチャチなことだ。専門家である会計士と
しては、“そんなことやめなさい”といって中止させるのが当たり
前だ。
それをこともあろうに、自分で考えて、しかも実行に移すんだか
らな。お前みたいな奴は気狂いだ。どうかしてるよ。
お前は本当にヘンな会計士だよ。」

3. 私は一瞬防御の姿勢をとって身構えた。本当にパンチか足げり
が飛んでくると思ったのである。猫パンチならまだしも、熊パンチ
ならたまったものではない。
幸いにも肉体的暴力は私の杞憂に終り、ほっと胸をなでおろした。

4. それにしてもよく言ってくれたものである。会計事務所の古手
の職員、 ― 中島には偏った思い込みがあるのではないか。
たとえば、わが山根会計事務所の職員についていえば、十年以上
にわたって勤務しているベテラン揃いで、半数の職員のキャリアは
二十年を超える。
それぞれ事務所で長年会計の実務に携わり、責任ある仕事をテキ
パキこなしてきた優秀な人達だ。まさしくプロフェッショナルであ
り、たとえ資格がなくとも素人などと軽々しく言える存在ではない。
一人一人が、パブリック・アカウンタントであり、資格などなくと
も立派に通用するプロである。たとえ税理士という資格を持ってい
ても、まともな仕事がほとんどできない、どこかの役所の古手より
は、はるかに優れている。
そのようなプロフェッショナルを十把ひとからげにして、中島は
素人と評し、素人考えとこきおろした。更には勢い余って、私に対
して面と向って気狂いとののしり、ヘンな会計士であると言い放っ
た。
私もいくつか猫パンチを繰り出して応酬してみたが、擬似徘徊性
痴呆症が十分に寛解していないイラ検の熊さんをまともに相手にし
ていても大人気ない、と思い直し聞き流すことにしたのである。

(カ) 「前門の虎、後門の狼」

1. 平成8年2月24日、逮捕30日目のことであった。
中島は、一つの熟語を持ち出し、どうだ参ったか、と言わんばか
りに私に向き直った。私を攻めあぐんでいただけに、自分に活を入
れようと思ってひねり出したもののようであった。

中島:「今の山根は、いってみれば“前門の虎、後門の狼”ってとこ
ろだな。ま、いずれにしても逃げ道がないってことだ。」
山根:「それはまた、どういうことですか。」
中島:「前門には仮装売買という虎がおり、後門には公正証書原本不
実記載という狼がいるってことだ。虎から逃げることができたとし
ても、ちゃんと狼が控えてるって寸法だ。」
山根:「つまり本件は無罪となっても、別件で有罪になれば、資格に
傷がつき会計士として仕事ができなくなることでは同じだというん
ですか。」
中島:「ま、そういうことだ。」

2. およそ漢籍の素養など想定できない中島の口から、いまどきめっ
たに耳にしない熟語がでてきたのには、驚いた。
この日以後も、何回か中島の口からこの言葉が繰り出された。常
日頃余り縁のない言葉を、自らの仕事の現場でうまい具合に使うこ
との出来たことで得意になっていたのだろう。

(続きはWebサイトにて)
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●山根治blog (※山根治が日々考えること)
http://consul.mz-style.com/catid/21

・役人亡国論

国とか地方公共団体に勤める者を役人と言い、日本国憲法は役人
のことを公務員と称し、全体の奉仕者であると規定しています。

パブリック・サーバント。本来は主権者である国民に奉仕する者
のことを公務員と言うようですが、果たして現実はどうでしょうか。

このところ、毎日のように公務員の不祥事がマスコミを賑わして
います。警察とか検察庁が組織的に裏金を操作して個人的な遊興費
などに費消していたり、近いところでは大阪市のように市職員のほ
とんど全てが訳の分からないお金(全て税金です)をフトコロに入
れていたりと、呆れてモノが言えません。

このような例は、犯罪そのものですので言語道断なのですが、こ
れ以上にタチの悪いのが、合法の蓑(みの)をかぶった税金のムダ
づかいです。

厚生労働省のグリーン・ピアとか国土交通省のどうにも理解に苦
しむ公共工事とか、あるいは、農林水産省の日本の農業をダメにし
ているとしか思えない事業等、挙げていけばキリがありません。

どうしてこのようになってしまったのでしょうか。日本という国
はいつからこのように情けない国になってしまったのでしょうか。

私には2つの要因があるように思われます。

一つは、公務員が自分では決して国民の奉仕者であると考えては
いないことです。30年の会計士生活の中で、私は多くの公務員に
出会いましたが、彼らにあるのはお上(かみ)意識であり、ほとん
どの公務員が、パブリック・サーバントという言葉は知ってはいて
も、自分達がそうであるとは決して思っていないのです。

建前と本音とが、これほど乖離している例はあまりないのかも知
れません。

二つは、公務員の数が多すぎることです。国、地方合わせて、
400万人とも言われていますが、多すぎるのです。

公共の仕事を現在の時点でゼロ・ベースで考えてみますと、どう
しても民間に任せておくことができないことはそれほど多くはあり
ません。

外交とか国防(国土保全・警察を含む)とか司法などは、民間に
任せる訳にはいかないのですが、郵便とか医療福祉あるいは、農林
水産、経済振興など、必ずしも公務員がしなければいけない仕事で
はありません。

このように仕事の棚卸(たなおろし)をした上で、まず“余計な
お世話”的な仕事を民間に移し、公務員をせめて民間並みに働かせ
る(本当はこれではいけないのです。サーバントなのですから)よ
うにすれば、私の見たところ、全体で100万人もいれば十分でしょ
う。つまり、4分の3の人達を別の分野に振り向けるのです。

少数精鋭のスリムな政府、つまり、チープ・ガバメントの確立を
目指し、役人達をガラス張りの監視の下に置いて、本来のパブリッ
ク・サーバントの仕事に邁進させるようにすれば、平気で税金をポ
ケットに入れたり、訳の分からない税金の使い方をするような不心
得な輩は、自然淘汰されると思うのですが、如何。

―― ―― ―― ―― ――

ここで一句。

“庶民には経済制裁やたらとし” -千葉、姫野泰之
(毎日新聞:平成17年1月16日号より)

(“政治家をうまくころがすお役人”、“小泉さんブッシュと金(キム)
のポチとなり” -アホウ松の逸笑)

 

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