悪徳会計屋の経済事件ノートvol.10

2005年02月03日 第10号 発行部数:379部

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悪徳会計屋の経済事件ノート

なぜ上場会社社長は国税局ロビーで壮絶なる自殺を選んだのか。
国税局OB税理士が納税者を食いものにする手口とは。
税務署とマスコミから悪徳会計士の烙印を押された
会計のプロが税金法律金融事件の深層に迫る。

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山根治(やまね・おさむ)  昭和17年(1942年)7月 生まれ
株式会社フォレスト・コンサルタンツ 主任コンサルタント
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●ハニックス工業事件の真相

「ハニックス工業 事件の真相 10」より続く
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(3) 裏金(うらがね)による取得のケース

次に、裏金によって取得された自己株式について。

個人経営者もしくは、オーナー経営者の中には、あるいは、裏金
づくりに精を出している人がいるかもしれない。

しかし、そのような人達でも、ひとたび会社の株式を公開しよう
と考え始めると大幅に変わっていくものである。

公開基準を達成するために財務体質の強化と収益性の向上が会社
に求められる。会社がそれに応えれば応えるほど、公開時及び公開
後の株式の評価が高まることになるために、それまでに裏金が存在
するならば、会社としてはできるだけ表に出すように努めるように
なるし、裏金づくりをやめてむしろ利益を多く出すようになってい
くものだ。

公開時に期待できる莫大な創業者利得を考えるならば、税金をご
まかすことがいかにソロバン勘定に合わないか直ちに分かるからで
ある。

ハニックス工業の場合、店頭公開が平成2年7月であるから、遅
くとも3年前の昭和62年7月には、具体的な株式公開のスケジュー
ルができていたと考えてよい。当然ながら、公認会計士による予備
調査が始まっていたはずである。

前述のとおり、第一回目の新株発行は、その一年後である昭和63
年7月2日になされており、平成2年7月27日の店頭公開までに、
その後7回にわたって新株が発行されている。

この時期は文字通り、社長以下、全社一丸となって店頭公開に向
けて邁進していたはずである。

オーナー社長にとってこのような時期に裏金をつくることは、前
記のとおりマイナスにこそなれ、決してプラスにならないことであ
る。

この時期の裏金づくりは株式公開後の創業者利得を大きく傷つけ
るほかに、役員従業員のモラール(志気)を著しく低下させるであ
ろう。

裏金づくりはオーナー社長が一人でできるものではなく、複数の
部下が関与するのが通常であり、結果、社内の綱紀が緩み、脱税の
メリットとは比較にならないデメリットがモラールの低下となって
はねかえってくる。

裸一貫で会社を創り上げ、建機業界で数々の新機軸を打ち出して
店頭公開を実現させ、全国に264社で構成するハニックス会を組
成した程の経営者が、このような時期における裏金づくりのデメリッ
トを知らなかったはずがない。

従って、ハニックス工業の場合、株式公開前3年間は裏金は存在
しなかったし、従って裏金による自己株式の取得もなかったと考え
るのが順当である。

しかし、百歩譲って、ハニックス工業に会社の裏金が存在し、そ
の裏金で自己株式が取得された場合について考えてみることとする。

この場合、会社所有の自己株式ではあっても裏金による取得であ
るから、会社の帳簿には所有有価証券として資産計上されていない
ことになる。即ち、簿外資産として秘匿されているわけだ。

会社としては、この時期一定額以上の増資をしていることから、
証券取引法にもとづいて有価証券届出書の提出が義務づけられてい
る。

つまり、会社簿外資産として自己株式を取得していることは、税
法と商法に違反しているにとどまらず、証券取引法にも違反してい
ることになる。会社経営者には、それぞれ懲役刑が用意されている
重大な犯罪行為である。

会社が、三つもの犯罪行為をしてまで秘匿している資産であると
すれば、いざそれを資金化して会社の正規の帳簿に計上しようとす
るとき、大きな困難が待ちかまえている。株式を公開し、公認会計
士の監査を受けている会社にあっては、まずできない相談である。

売却益にかかる税金が、法人の場合個人に比較して多いとか少な
いとかいうレベルの話ではない。もともと正規の帳簿に計上しよう
のないものであり、会社の資金として活用できないのである。

(次号へ続く)

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