冤罪を創る人々

4/12ページ

083 ドイツの判例・粗製ガソリン脱税事件・手形パクリ事件

*五、 「ドイツの判例」 「一つ、ドイツの判例を教えてあげよう。トルコからの移民の男が妻を殺した。妻が他の男と浮気をしたんだね。トルコでは夫が妻の浮気の現場をおさえて制裁のために妻を殺したとしても、何ら罪に問われることはない。こんな女、殺して当然だと思って本当に殺してしまった。ところが、ドイツの裁判所はその男のことを有罪としたんだ。 いくら自分では罪がないと思っていても罰せられることがある訳だ。山 […]

082 鬼検事・越山会会長・ウンコ男

****5) 問わず語り 一、 中島行博は、話好きの男であった。とりわけ検事として自ら体験したことを語り出すと、生々と精気が漲り、誇らしそうであった。 私は、会計士という職業柄、多くの人から、さまざまな問題について相談を受け、それぞれしかるべき回答を求められる。私の仕事の第一歩は、まず相談者の話をじっくり聞くことから始まる。必要な情報を得られるように誘導しながら、徹底的に話を聞くのである。従って私 […]

081 謝辞

*(キ) 「謝辞」 1. 中島は、40日の取調べの中で、私に三回、自らの机に両手をついて私に頭を下げた。頭を下げ、謝辞を表明したのである。 2. 一回目は、平成8年2月1日のことであった。同年1月31日の午後の取調べの折、中島は例によってピント外れの難クセをつけ、私をいじめ始めた。 中島:「山根は、取引の両方から利益を得ているんじゃないか。」山根:「そうですよ。何か問題でもあるんですか。」中島:「 […]

080 前門の虎、後門の狼

*(カ) 「前門の虎、後門の狼」 1. 平成8年2月24日、逮捕30日目のことであった。 中島は、一つの熟語を持ち出し、どうだ参ったか、と言わんばかりに私に向き直った。私を攻めあぐんでいただけに、自分に活を入れようと思ってひねり出したもののようであった。 中島:「今の山根は、いってみれば“前門の虎、後門の狼”ってところだな。ま、いずれにしても逃げ道がないってことだ。」山根:「それはまた、どういうこ […]

079 素人考え

*(オ) 「素人考え」 1. 平成8年2月27日、逮捕33日目のことであった。 組合長岡島信太郎氏の取調べにあたっている藤田義清検事が、岡島氏を脅して虚偽の自白を引き出した、 ― 中村弁護人から信じられない話を聞いた私は、中島に対して検察の取調べの非をなじり、厳重に抗議した。二人の間には険悪な空気が漂った。 山根:「検察の片われであるあんたの顔なんて見たくないし、話もしたくないね。」中島:「オレだ […]

078 レバレッジド・リース

*(エ) 「レバレッジド・リース」 1. 平成8年2月5日のことであった。中島は突然おかしなことを言い始めた。 中島:「一つ一つを見ていくと問題はないようだが、全体として見た場合、どうもおかしいんだよな。」山根:「何がどうおかしいというんですか。」中島:「経済的合理性というか、社会的規範というか、そういうもので見ると全体がゆがんでいるんだ。どんなに山根が、自分は間違ったことはやっていないと思ってい […]

077 タマリ

*(ウ)「タマリ」 1. 平成8年2月2日、私は中島に対して議論をしかけてみた。 山根:「あなた方は、脱税だといって大騒ぎしているが、仮に脱税とした場合、タマリは一体どこにあるんですか。」― 「タマリ」とは、脱税によって貯えられた資産のことで、主に隠匿された預貯金、株式、債券あるいは貴金属をいう。 中島:「たしかに、それはそうだ。隠匿しているものはないんだからな。」山根:「タマリのない脱税なんてあ […]

076 自決の慫慂

*(イ)「自決の慫慂」 1. 中島は、私を逮捕した直後から、 「山根の人生はもう駄目だ。早く身辺の整理をすることだ。悪あがきするだけ無駄というものだ。」 といった趣旨の発言を取調べのたびに繰り返し、私の気力を阻喪させることに意を注いだ。とどめを刺すつもりであったろうか、中島は私に自殺を暗に慫慂(しょうよう)する内容の話を仕向けてきたのである。 2. 取調べも半ばにさしかかったある日、中島はさりげな […]

075 問答

****4) 問答 一、 供述調書として残された尋問と応答は、中島と私との間のいわば建前の問答であった。お互い激しくぶつかり合いながらも、質問する中島も答える私もどこかとりすましたやりとりに終始している。 その最大の理由は、検面調書の作り方そのものにあることは、すでに述べたとおりである。つまり、中島が私の答えを自分なりに理解してとりまとめ、私の答えと称して自ら口述して、書記官に録取させているからだ […]

074 尋問

****3) 尋問 一、 検察官中島行博による本格的な取調べが始められたのは、平成8年1月28日、午後1時からであった。松江刑務所管理棟の一室である。 看守に連行されて部屋に入ると、正面に中島が窓を背に座っており、左横に渡壁将玄書記官がノート・パソコンを前にして控えていた。私は、中島に向き合った机に席を与えられた。部屋には暖房が全くなく寒くて仕方ない。中島に対して暖房を要求したところ、中島の指示に […]

1 4 12