075 問答

****4) 問答

一、 供述調書として残された尋問と応答は、中島と私との間のいわば建前の問答であった。お互い激しくぶつかり合いながらも、質問する中島も答える私もどこかとりすましたやりとりに終始している。

その最大の理由は、検面調書の作り方そのものにあることは、すでに述べたとおりである。つまり、中島が私の答えを自分なりに理解してとりまとめ、私の答えと称して自ら口述して、書記官に録取させているからだ。本音が出てくるはずがない。

中島と私との間に交された問答は、以上の建前としての尋問の十倍をはるかに超える時間を費やしてなされた。いわば本音のぶつかり合いと言ってよい。

以下、私の獄中ノートをもとに、二人の本音の問答を再現する。

*****(ア) 「リーク」

1. 平成8年1月31日、午後3時。取調べの冒頭、私は中島に向って厳重な抗議を申し入れた。

山根:「検察はマスコミに対して、あることないことリークしている。何てことをするんだ。デタラメを言うことはやめてくれ。」
中島:「オレはリークなんかしていない。それにデタラメとは何だ。本当のことじゃないか。」
山根:「あなたは、検察の代表として職務上私に接しているわけであるから、あなたを通じて検察に文句を言っているんだ。いいかげんなことをマスコミに流さないようにして欲しい。
逮捕された上に、あることないこと書きたてられていたら、オレの信用がますます落ちて、地元で仕事をすることができなくなってしまう。」
中島:「信用が落ちる?地元で仕事をしていく?山根はそんな寝ぼけたことを考えているのか。
大体、検察が乗り出して逮捕までした場合、まずほとんど立件する。立件したら日本の場合、有罪率は99.87%だ。
あるいは、有罪であろうと無罪であろうと、逮捕されたらそれだけでまずその連中の社会的生命は抹殺される。ことにあんたのような会計士の場合、信用で成り立っているわけだから、再起したケースはないんじゃないか。
山根も夢のようなことなど考えていないで、いいかげんに観念したらどうか。」

2. マルサの大木洋と同じような心理作戦を、今度は組織ぐるみでやっている。逮捕という現実があるだけに、私の心は大きく動揺していた。
たしかに、この時点では、私の事務所は崩壊し、私の会計士人生は終わるであろうとは考えていたものの、自ら投げ出してしまうつもりはなく、やれるところまでやって、その時々で考えていけばよい位の気持ちであった。

 

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