「佐川君こそ官僚の鑑?」-⑵

 佐川宣寿・国税庁長官については、去年のブログ記事(「認知会計のつぶやき」)で触れている。記事の一部を引用する。


争点隠しの総選挙
 日本における2つのガン
+徴税権力(国税庁)
+日米合同委員会(秘密会)
の2つの存在が、このたびの総選挙では隠されている。自・公はもちろん、共産党を含む全ての野党も一切触れていない。とりわけ、徴税権力については共謀罪にからんで露骨なゴマカシがなされた事実が隠蔽されている。先の通常国会で共謀罪が成立する前にほとんど審議することなく、国税犯則取締法が廃止され、これまでの国税庁のゴマカシを帳消しにするかのように、国税通則法に組み込まれている(平成29年2月)。このときの国税庁側の答弁者の一人が佐川宣寿理財局長(現・国税庁長官)である。事実に反する答弁を臆面もなく国会で喋っているのは、森友学園で見え透いたシラを切った佐川宣寿その人であった。」

この記事の要(かなめ)は、
+直前の通常国会で強制採決された共謀罪(注1)の中に、これまでの国税庁のゴマカシ(注2)を帳消しにするようなインチキがなされていたこと、
+それにもかかわらず、総選挙の争点から外され、隠されていたこと、
+国税庁のゴマカシを押し通すために、通常国会の場で当時の佐川宣寿理財局長が事実に反する答弁を麻生太郎財務大臣と共に臆面もなく喋っていること、
であった。
 上記1.の「国税庁のゴマカシを帳消しにするようなインチキ」とは何か。共謀罪とは直接関係がないかのように説明されて、通常の税法改正案の中にコッソリとしのび込ませて、成立させられた法案とは何か。
 それは、国税犯則取締法(以下、国犯法という)が廃止され、装(よそお)いを新たにして国税通則法の中に組み込まれたことである。平成30年3月31日付で国犯法が廃止され、平成30年4月1日付でアチコチと「姑息(こそく)な修正」を加えた上ほとんどそのままの形で国税通則法の中に組み込まれることになっている。

 「姑息な修正」の中で最悪のものは、国犯法の中で多く用いられている「収税官吏」が「当該職員」に変えられていることだ。平成30年4月1日の改正国税通則法施行日以後においては、従来の通則法における「当該職員」と法文上は同一のものとなる。従って、今後は再びカビの生えた間違った最高裁判例を持ち出してきて、内容的にも同一のものであると国税庁は言い張るつもりであろう。木っ端役人どもが悪知恵をしぼりだして、訳の分らない「法文解釈通達」が出されるであろう。
 しかし、このような小細工は徒労である。どのように法文をいじくりまわしても、「冤罪を証明する定理(山根定理)」は厳然としたものであり、脱税裁判のカラクリ(「暴かれたカラクリ①~③」)が白日のもとに晒(さら)された以上、いかなる小細工も無駄な骨折りだ。

 国犯法の廃止と国税通則法への組み入れの根本的な誤りは、行政法(国税通則法)の中に刑事手続法(国犯法)を組み入れたことだ。いわば、水と油を一緒にしたようなもので、溶け合うはずがない。これについては、補足1で詳しく述べる。

 問題はこれだけではない。国犯法をいじって国税通則法の中にネジリ込むという、前代未聞の荒技をコッソリと押し通すための便法として用いられたのが、これまた問題山積の「共謀罪」法案であった。「共謀罪」法案の別表第三(第六条の二関係)の中に、さりげなく組み込まれている脱税罪が全く新しい犯罪類型だったのである。これについても、補足2で詳しく述べる。
 ブログ記事を書いた去年の時点、つまり、平成29年10月10日の時点では、所得税と法人税の罰則規定の書き方が本法とは異なっていることには気づいていたが、このカラクリの意味合いに気づいたのは、本稿を書いている平成30年2月25日のことだ。文字通り飛びあがるほどの驚きであった。この点については補足2で触れる。

 上記の国犯法の廃止・国税通則法への組み入れと、共謀罪の中で新しい脱税の犯罪類型が加えられたことは、国税庁が50年以上にわたって、国民を騙して、国家ぐるみで税金を収奪し、冤罪を捏造してきたことを帳消しにしようとする小細工である。

 第百九十三回国会の衆議院・財務金融委員会(平成29年2月22日)と参議院・財政金融委員会(平成29年3月22日)において、麻生太郎財務大臣と共に、政府参考人として出席したのが以下の4名であった。
+星野次彦(財務省主税局長)
+佐川宣寿(財務省理財局長、現・国税庁長官)
+武内良樹(財務省国際局長)
+飯塚厚(国税庁次長、現・財務省関税局長)

 麻生太郎・マンガ大臣を除いて、いずれも東大法学部卒のキャリア官僚だ。
 マンガ大臣が役人に作ってもらったデタラメの文章をあのダミ声で読み上げるのはご愛嬌である。マフィア・ルックスで得意がり、日本語さえまともに読むことのできない人物だ。さもありなん、といったところだ。
 しかし、あとの4人はいただけない。公僕でありながら、長い間国民を騙して税金を脅し取り、冤罪を捏造するように指令を発していた張本人達である。
 さらには、インチキ指令を発していたことを隠蔽するかのような小細工を国会の場で行った連中だ。
 前回、佐川宣寿・国税庁長官を“木っ端役人”と形容したが言い足りない。この人物こそ、国税庁という名の広域組織暴力団の現在のボスだからだ。“木っ端役人”の仮面をかぶった犯罪者である。

(この項おわり)

-(注1)共謀罪(「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律の一部改正」)
-(注2)国税庁のゴマカシ(「査察調査と課税調査とを同一視し、査察官が職務権限を有しない課税調査をも行っていたこと」)

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