11/28講演会「闇に挑む『原発とは何か?』-福島第一と島根-」-3

***6. 事故の原因

 今度の福島原発事故の原因については、いろんな人がいろんなことを言っていますけれども、まとめてみるとこういうことになります。



 まず、東京電力、政府も同じようなことを今まで言ってきていますが、想定外の津波によるもので、それにより、全部の電源が無くなって、冷却できなくなったから、こういう事故が起こった。原因は想定外の津波という天災であると東電は主張しています。政府もそれに乗っかっている形です。政府というより、経済産業省の役人達が一緒になって、こういうことを言っています。天災だと言っている。

 ところが、これについては外部からかなり異論が出ています。科学技術的なことに関しては、経営コンサルタントの大前研一という人が天災ではなく人災であると言っています。この大前という人、単なる経営コンサルタントではない。原子力工学を学び、実際に原子炉の設計に携わったことのある、その道の専門家です。彼は原発担当大臣の細野剛志に申し入れた。自分はボランティアで原因究明をしたい。ついては、政府が持っている情報に自由にアクセスさせてほしい、ある限りの情報を出して欲しいと申し入れをした。すると、細野大臣がわかりましたということで応じて、東京電力に協力させる、経産省の役人に協力させる、日立や東芝、三菱などの原発メーカーにも協力させるということで、原因究明にあたった。3か月かけて、一つの結論が出ています(「福島第一原子力発電所事故から何を学ぶか」平成23年10月28日)。ネットで公表されている。科学的、技術的な観点から原発事故の原因を分析したものです。非常にわかりやすい、時間を追って克明に、しかも生の情報をもとに分析しています。おそらく現在のところでは、科学・技術的な分析では一番妥当なものだと、私は思っています。大前氏は結論として、天災ではなくて、人災だと言っています。どういう人災かと言うと、元々の原発を設計する考え方、設計思想そのものが誤っていたという結論でした。私もそれについては当たっているだろうと思っています。これまでのところ、大前氏の結論をサポートする情報は数多くあるのに対して、それを否定する情報が見当たらないからです。

 しかし、その他にも、人災説はいくつかあります。そもそも緊急時のマニュアルがなかった。あっても、全電源を喪失した想定のマニュアルはなかった。つまり、管理体制が全く無責任だったということ。全てを電力会社任せにしていて、その電力会社は全く無責任なことをやった。そういうことから、人災だと言っています。これもその通りであると思います。

 人災説で明らかに間違っている説があります。3月11日の事故の後、菅内閣の対応がまずかったから、大事故に至ったという人災説です。あからさまには言ってはいませんが、菅内閣の責任を論(あげ)つらっているのが東京電力であり、経済産業省の役人達です。マスコミでは読売新聞が、ここぞとばかりに菅内閣を批判し、菅内閣の対応のまずさを指弾しています。

 読売新聞の政治部が作った本に「亡国の宰相」というのがあります。亡国の宰相、これは菅直人のことだそうです。読売がこの本を緊急出版した。中身は取材をした事実ではあるでしょうが、とんでもない話に作り上げています。読売新聞は原発に関してブラック・プロパガンダ(ウソの情報をタレ流しにして民意を誤導すること)を中心になって行ってきた札つきの新聞です。読売のオーナーであり主筆であった正力松太郎が、無理やり国民を騙すような形で、日本に原発を持って来た。読売新聞が中心になって、ブラック・プロパガンダ、インチキ情報をタレ流して国民の洗脳をやった。読売はその張本人です。とんでもない原発の事故が起こって、自分達が今まで60年間嘘をついていたことがばれそうになった。ある意味やけくそになって書いたものではないかと、私は思っています。盗っ人猛々しいと言いますが、読売はなんともヒドイ本を出したものです。読売新聞については、「読売新聞とブラック・プロパガンダ」のところで改めて触れるつもりです。

 私が現時点までで得た結論ですが、これは天災ではない。何故か。東京電力はそもそも津波のことなど全く考えたことがなかった。想定外とは言っていますが、そうではない。無想定―想定していなかったということが関係者の証言、その他から明らかになっています。想定外ではない。そもそも想定などしていなかったということです。

 まず天災ではない。少なくとも津波ではない。原因が天災でないとすると、人災だろう。役人、東電の経営者も役人と同じですから、官僚のモラル・ハザードー職業倫理が欠如した状態で、原発というものすごく危険なものが、無責任な形で運営されていた。これが一番の原因であると私は思っています。もっと具体的に言うと、どんな事故があっても、誰も責任を取る必要がないという法律があった。一応の歯止め(原賠法の“穴”)があったのですが、この歯止めは気が付かないような形でできていた。それをいいことにして、原発を運営する責任者の気が緩んだ。どんなにいいかげんな経営をやっていても、責任はかかってこない。その上に報酬はとり放題。王侯貴族のような生活を享受した。こうなれば、職業倫理などどこかにふっ飛んでしまう。法律(原賠法と電気事業法)そのものの欠陥と原発を運営する人達の堕落による人災、つまり、社会制度の欠陥と東京電力の経営者と役人のモラル・ハザードにもとづく人災だというのが、今のところの私の結論です。

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