400年に一度のチャンス -19

***19.公務員人件費の削減⑥-マクロ経済に与える影響③

 前回述べたのは、国民所得(GNP)に与える影響、即ち国民経済の量的側面であった。

 その結論は、

+1,000万人の金食い虫集団の不当所得分60兆円/年を削減し、

+まず第一にワーキング・プア層を解消するために34兆円/年を振り向け、

+残余の26兆円/年に関しては、その10倍規模の260兆円の国債を発行し、このたびの大震災・大津波の復興費、原発事故の後始末、更には、脱原発に向けての費用に振り向けることによって、

国民所得(GNP)に対してはプラスの効果が期待できることであった。

 マクロ経済に与える影響に関して、次に考えるべきことは、経済構造がどのように変化するかということだ。
 これまでの日本では、製造業(第二次産業)とサービス業(第三次産業)に力点がおかれ、農業、林業、水産業といった第一次産業は、等閑(なおざり)にされてきた。このために食料自給率は40%と、不足分を海外からの調達に頼らざるを得なくなっているし、木材についても、国内にある豊富な木材資源を放置して輸入し、魚介類についても同様に相当量を海外に頼っている。値段の安いものを求めて突っ走った結果である。モノづくりで得た金で、海外の安い資源を買い漁ってきたということだ。
 しかし、このようなことは、日本が独立国として自立する上で望ましくないのは明らかだ。とりわけ食糧については安全保障の上からも常に日本国内で賄えるようにしておく必要がある。世界でも類をみないほど、気候と水に恵まれている日本で、穀類、野菜は完全自給できるはずであるし、魚介類についても、世界でも有数の漁場に囲まれている日本で自給できないはずがない。

 従来の製造業とサービス業重視の政策は、農山村、漁村から都市への人口移動を促した。その典型が東京であり、東京都を中心とする首都圏に4,000万人という、日本の総人口の3分の1が集中する結果となっている。異常というほかはない。中央集権体制をやみくもに推し進めた結果、政治だけでなく経済の中心も東京一極となり、地方は衰退の一途を辿ってきた。
 このたびの大震災と福島原発の大事故は、すでに少なからぬ影響を東京圏に与えている。東京一極集中の弊害と矛盾が、このように悲惨な災害によってはからずも露呈することになったのは皮肉である。
 東京都の石原慎太郎知事は、日本を襲った大災害を前にして、

「まず東京が元気にならないといけない」

と発言したが、時代錯誤である。東京が再び元気になってはいけないのである。
 もっとも、放射能汚染が東京を越えた神奈川県の茶畑にも及んでいる現状と、福島原発の炉心溶融(メルトダウン)が確認され、更に放射能汚染が深刻になろうとしている現状を考えると、好むと好まざるに拘らず、東京の首都機能が早晩事実上喪失し、東京一極集中の弊害が解消に向かうのではないか。

 1,700万人の人口がワーキング・プア層から脱却するのに34兆円/年を投入するといっても、単に一人当り200万円/年を無条件で配分する訳ではない。1,700万人の人々は、労働意欲を持ちながらも仕事がない、もしくは仕事があっても食っていけるだけの収入が保障されない人々であるから、しかるべき仕事を用意すればいい。生活保護者への給付とは全く異なるものだ。
 一人200万円の助成を国費で行なうという前提で考えれば、日本全国でいくらでも仕事はある。中小企業だけではない。農業、林業、漁業など大幅な人手不足であるが、採算が合わない為に雇用の場が生じないだけだからだ。
 農山漁村から都会へと流れていた人口は、雇用の場が確保されるとともに、逆に都会から第一次産業の生産現場へと移動することになるだろう。この結果、過疎の地域が再び生産活動の地域として甦り、34兆円の富の移動は、投入額をはるかにしのぐ国富(GNP)の増加となって顕現することになろう。

***<追記>
 政府は、公務員給与の5~10%削減を固めたと報道されている。
 しかし、削減幅が小さすぎるし、震災復興費のための時限措置というのもゴマカシだ。このたびの大災害の被災者を全面的に支援するのは国として当然の責務ではあるが、これら被災者と比較しても悲惨の点では決して劣らない、1,700万人ものワーキング・プア層が放置されていいはずがない。更に大幅な公務員給与の削減に踏み切るべきである。

(この項つづく)

 ―― ―― ―― ―― ――

 ここで一句。

“税金で食べてる人に頭さげ” -立川、福の髪

(毎日新聞、平成23年5月14日付、仲畑流万能川柳より)

(官尊民卑という差別の構図。日本社会に巣食う最大のガン。)

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