検察官と裁判官を犯罪人として告発する!!-③

 これまで私は、逋脱犯の構成要件の一つである「偽りその他不正の行為」が法律によって定義されていないのを不思議に思ってきた。逋脱犯は殺人や強盗のような自然犯ではなく、法定犯である(注1)が、「不正行為」の定義は不正競争防止法のように法律ではなく、専ら判例に委ねられていたのである。

 不正行為」をめぐる全ての判例が先例価値のない間違ったものであることが判明した(『査察Gメンを犯罪人として告発する!!』①~⑳、号外①~③)以上、どこかに本来の「定義」があるに違いないと追い続けてきた。それがついに見つかったのである。隠れていたのを無理矢理引っ張り出したと言ったほうがいいかもしれない。

 隠れていたのは「不正行為」の定義ではなく、「不正所得」、即ち「不正事実」の定義であった。しかも、法律の中ではなく、国税庁長官による3つの「事務運営指針」(注2)の中に潜り込んでいたのである。

 一読しただけではなんのことかよく分らない。私自身、これまで何度となくその3つの「事務運営指針」には目を通しているのであるが、刑事罰の構成要件に関連する定義が潜んでいることに全く気がつかなかった。

 たしかに国税庁としては正面切って表に出すことが出来ないものであったに違いない。分かり易く表に出したが最後、昭和37年4月の国税通則法の制定以来、50年以上にもわたって納税者を騙し続けてきた大嘘がバレてしまうからだ。

 詳細は(注3)に譲るとして、結論を述べると、

不正所得(不正事実、犯則所得、犯罪事実)は、所轄税務署長による更正処分が大前提となる。つまり、「不正所得」とは、更正後の所得金額(これを更正所得金額という)から当初の申告金額を控除した金額のうち、隠蔽又は仮装認定された所得金額(これを不正所得金額という)に相当する金額である、

と定義されているのである。

 簡単に図式化すれば、

更正所得金額(重加算税認定)-申告所得金額=不正所得

ということだ。

 刑事罰の構成要件である「不正行為」と「不正所得(不正事実)」との関係について言えば、「不正所得」、つまり「不正事実」が存在しなければ「不正行為」はありえないということだ。納税義務者としての嫌疑者に「不正所得」が存在しなければ、実行行為者としての嫌疑者が何をしようとも「不正行為」とはなり得ない。当然のことである。
 本件については、「不正所得」の大前提である、所轄の税務署長による更正処分が、いまだ(平成28年10月17日現在)なされていない。所轄税務署長が更正処分を行っていないことは争う余地のない厳然たる明白な事実である。即ち、上記の「更正後の所得金額」が存在しないことになり、「不正所得」(=不正事実)も存在しない。当然のことながら、「不正所得」の存在が前提となる「犯則事実」(犯罪事実)も存在しない。従って「不正行為」もあり得ない。

 以上により、仮に桑田裕将検事が起訴状で述べている公訴事実が真実であったとしても(もちろん真実ではないが)、

「何ら罪となるべき事実を包含しないとき」

に該当し、裁判所は決定で公訴を棄却しなければならない(刑訴法第339条第1項第2号)。
 同時に、逮捕・監禁されている2人の身柄は直ちに保釈されるべきである。

注1)自然犯と法定犯

「一般刑法の犯罪と特別刑法(狭義)の犯罪とを合わせて刑事犯と呼び、これと行政犯とを対比することがある。前者がおおむね「それ自体としての悪(mala in se)」を犯罪としたもの(自然犯という)であるのに対し、後者は「禁じられた悪(mala prohibita)」を犯罪としたもの(法定犯)である。殺人や強盗は自然犯であり、古今東西で犯罪とされてきたのに対し、車で道路の右側を走行することは法定犯であり(動交17④・119①二の二違反)、それ自体として良い行為でも悪い行為でもないが犯罪とされている。」(新基本法コンメンタール・刑法-日本評論社。P.002より引用)

注2)3つの事務運営指針
+法人税の重加算税の取扱いについて(事務運営指針)国税庁長官、平成12年7月3日、課法2-8ほか3課共同。
+法人の青色申告の承認の取消しについて(事務運営指針)国税庁長官、平成12年7月3日課法2-10ほか3課共同。
+査察事件に係る課税処理及び異議申立て等に関する当面の事務実施要領について(事務運営指針)国税庁長官、平成24年12月13日課総2-49ほか7課共同。

注3)この「不正所得」の定義は、(注2)の2.の「事務運営指針」で示されているものであり、(注2)の3.の「事務運営指針」の中では「増差額」と表現されている。「不正所得」と「増差額」とがリンクするのは、(注2)の3.の「事務運営指針」に添付されている(様式4)、(様式9)によってである。
(様式4)、(様式9)は共に、査察Gメンが作成するように指示されているものだ。(様式4)は「増差額の内訳書」であり、各調査科目の増差額のほか、不正手段及びその確定方法を記載するものとされている。
(様式9)は、「青色申告の取消要否部内判定書」であり、この一覧表の中に、(注2)2.の「法人の青色申告の承認の取消しについて」の中で示されている「不正所得」が「更正所得金額」と「申告所得金額」との差異額、即ち「増差額」であることが明記されている。
 査察Gメンがこの「青色申告の取消要否部内判定書」を作成するのは、所轄税務署長による更正処分がなされる前である。つまり、更正処分がなされていないのに「更正所得金額」、即ち、「更正後の所得金額」を記入することを意味する。つまり、事実に反する虚偽の事実を記入することが国税庁長官によって指示されているのである。虚偽有印公文書(内容虚偽の更正通知書)の作成が国税庁のトップから指示されているということだ。
 この偽装工作の指示だけでも、(注2)の2.と3.の「事務運営指針」は、国税庁長官が査察Gメンに対して、虚偽の事実を記載した公文書を作成するように「指示」した偽装工作指令書であることが明らかである。
 偽装工作の中に、刑事罰の構成要件である「不正行為」につながる「不正所得」の定義が潜んでいたのである。
 つまり、金額が確定した「不正所得」のうち、刑事罰を付与すべき「犯則所得」を調査の上で認定するのが査察官の職務であることを隠蔽してきた国税当局の大嘘が、白日のもとに晒されたことになる。法人税法における罰則(法人税法第159条)が両罰規定(納税義務者と実行行為者との両者を罰する規定)であるが故のカラクリであった。

(この項、つづく)

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 ここで一句。

 

”勝ち負けが幸不幸ではない人生” -久喜、宮本佳則

 

(毎日新聞、平成28年9月19日付、仲畑流万能川柳より)

(“青い鳥さがし求めて胸のうち”)

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