国税マフィアの闇-⑤

 平成27年6月3日。私は福岡国税局庁舎2Fの監察官室にいた。査察官の犯罪行為についての捜査要請書(以下、要請書という)を、首席監察官に直接手交するためである。

 福澤宏文首席監察官は席空きで、応接したのは二人の主任監察官であった。



  国税庁長官官房 福岡派遣主任国税庁監察官   遠藤徹男

  国税庁長官官房 福岡派遣主任国税庁監察官   中野数博



の二人である。

 要請の趣旨を口頭で説明し、要請書を手渡そうとするが、二人はなかなか受け取ろうとしない。とりわけ私が正式な収受印を要求したところ、二人ともあからさまな拒否反応を示した。
 遠藤徹男主任監察官は、そもそも収受印などないと弁解した。中野数博主任監察官は、席をはずして執務室へ戻り、収受印をガサゴソと捜すふりをした。
私が収受印がなければ、受け取った旨を明示した上でサインをするように求めたところ、二人とも受領のサインにも難色を示した。
私の要請書をタレ込みとか、単なる情報提供として握りつぶそうとしているのではないかと勘繰りたくもなる。

 私は国税犯則取締法にもとづく査察調査について、すでに福岡国税局長宛に「税務代理権限証書」を出している。
 つまり私には税理士法第二条にもとづく税理士としての職務があると同時に、この査察調査に関して税務代理権限を持っている。
 前回述べたように、この税務代理権限は実定法である税理士法にもとづくものではあるが、憲法由来の権限であるとされているものだ。
 この権限は税理士に独占的に与えられているもので、しかもその権限を行使するためには、税務官公署に対して「税務代理権限証書」の提出(税理士法第50条)が絶対的な要件とされている。私はすでにその証書を福岡国税局長宛に提出している。
 つまり、この査察調査に関して私は、税務代理という職務を有し、かつ、税務代理権限という権限を有している税理士であるということだ。
 そのような存在である税理士が、職務権限を行使して査察官と対峙した結果判明した査察官の犯罪行為である。単なるタレ込み扱いされていいものではない。
 一方、監察官は財務省設置法第26条及び27条において税務職員の犯罪について捜査する職務権限を有している。
 公務員(監察官)・非公務員(税理士)の違いがあるだけで、共に法律にもとづく職務権限を有している。つまり、私(税理士)には要請書を作成する職務があり、かつ、要請書を作成する権限がある。要請書に、敢えて「私」の替りに「当職」を用いている所以(ゆえん)である。私は多くの業務用文書を作成するのであるが、税理士業務以外で「当職」を用いることはほとんどない。
 税務職員の犯罪捜査を職務とし、それ以外の職務はしてはならない(財務省設置法26条 3項)とされている国税庁監察官には、私が職務権限を行使して作成し提出した要請書を受領する義務がある、換言すれば監察官には要請書の受領を拒絶する権限はない。当然のことながら、正式な収受印を押捺する義務がある。

 30分ほど押し問答をしてもラチがあかない。私は二人に対して次のように申し向けて要請書を二部、二人に手渡して監察官室を後にした。

『二部置いておきますので首席監察官が席にお戻りになったら相談してみて下さい。正式に受領するということになれば、収受印なりサインをして一部を返送して下さい。仮に収受印の押捺、あるいはサインをすることができないというのであれば、その理由を文書にして私の事務所に送って下さい。』

 翌、平成27年6月4日、午後1時10分、遠藤徹男主任監察官から次のような電話があった。

 1)要請書については正式な収受印を押して郵送することにした。日付は平成27年6月3日付とする。
 2)山根税理士としては、5人の税務職員の処罰を求めるのか。
 3)証拠資料を提出して欲しい。その際、遠藤徹男宛の親展として郵送して欲しい。

1) については、ないはずの収受印が、どこかから忽然と出てきたものとみえる。監察官は手練(てだれ)のマジシャンだったりして。
2)については、「当然、処罰を求める」と返答。
3)については、資料の量が多いので整理した上で直接持参すると返答。

(この項つづく)

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 ここで一句。

”今読めば差別語だらけ古童話” -奈良、上山秋恵

 

(毎日新聞、平成27年6月11日付、仲畑流万能川柳より)

(差別語排斥の弊害は、真実の歴史と文化が闇の中に消えていくこと。差別語排斥はデマゴーグの常套手段。)

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