民主党政権の置き土産-偽りの査察調査-⑥

 次に、税務署長の「調査」、即ち、「当該調査」について。

 これについては、税務の実務慣行としては、「実地調査」、略して「実調」であることが当然のこととされてきた。「民主党政権の置き土産-③」で述べたところである。

 ところが、「調査」とは何かが税務実務の現場から離れ、法廷で争われた場合には、「実地調査」だけでなく、書類調査、内部調査なども含む幅広い意味をもったものにスリ替えられてきた現実がある。国税当局のダブル・スタンダード、つまり二枚舌である。詐欺師顔負けの所行だ。

 判例も、この二枚舌に騙されて、誤った判断を示してきた。 『国税通則法第24条《更正》の調査とは、課税標準等又は税額等を認定するに至る一連の判断過程の一切を意味し、課税庁の証拠資料の収集、証拠の評価あるいは経験則を通じての要件事実の認定、租税法その他の法令の解釈を経て更正処分に至るまでの思考、判断を含む極めて包括的な概念であり、この調査の方法、時期などその具体的な手続については、何ら規定されておらず、その点では、課税庁に広範な裁量権が認められており、課税庁が内部において収集した資料を検討して正当な課税標準を認定することも、その裁量権の範囲内であり、国税通則法第24条に規定する調査に含まれる』(広島地裁平成4年10月29日判決)

上記の判決、何やらグダグダと御託(ごたく)を並べてもっともらしいことを述べているが誤りである。
 「調査」が「更正」の要件とされている立法趣旨が無視され蔑(ないがしろ)にされているだけではない。何よりも、国税当局の二枚舌に気付いていない。税務の現場と税法を知らない、裁判官という法律屋が駄文を弄(もてあそ)んでいるだけのことだ。
 これは裁判官だけの問題ではない。弁護士、検察官を含む法曹一般の問題だ。この人達は、税法と税の実務を知らないのである。国税当局がどのようなインチキをしようとも、是非を判断する能力がない。これが法治国とされている、日本の偽らざる現実だ。

 国税査察官は、国税調査官とは異なり、課税処分に必要とされる調査の権限が与えられていない。このことについては、すでに40年余り前に、国税不服審判所の裁決によって確認されていた。
 しかも、国税査察官の「調査」は、国税通則法第27条にいう「当該職員の調査」には該当しない、とまで踏み込んで確認されていたのである。
 にも拘らず何故、査察官が課税処分の権限があるかのように振る舞い、法廷でも容認されてきたのか。一言でいえば、前回述べたように国税当局の二枚舌によるものであるが、この二枚舌の内容について、具体的に明らかにする。

 国税当局が長年の間国民を騙し、使い分けてきた“二枚舌”、いわば「騙しのテクニック」は次のようなものであった。

 「調査」について裁決で確認されているのは、国税通則法の第27条についてである。更正(同法第24条)とか決定(同法第25条)に必要とされている「調査」とは必ずしも同一ではない。
 しかも、いずれの「調査」も、単に「調査」というだけで、具体的には何も規定されていない。

 これが国税の二枚舌の出発点だ。このような言い分の全ては詭弁である。たしかに、法律では明確に規定されてはいない。しかし、税務の実務では長年の間、「実地調査」(実地に臨場して行う調査のこと)であることが定着していた。これまでは法律の上で明確化されていないのをいいことにして、「実地調査」であることを隠し、ウソをついていたのである。

(この項つづく)

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 ここで一句。

“リモコンを太陽向けてみる猛暑” -柏原、柏原のミミ

 

(毎日新聞、平成25年8月6日付、仲畑流万能川柳より)

(古典俳諧、古典落語の世界にタイム・スリップ。(「民主党政権の置き土産-③」参照)

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