高松国税局-恐喝と詐欺による天下り-⑥

 犯罪の絵図(えず)ができたら、次は実行だ。犯罪の着手である。



 女の武器を使ってからめとった金庫番の副社長に、なにげなく話しかける。「おたくの会社、国税局の調査が入っているんですって? 親しくしている同級生が国税局のエライさんになっているんだけど、ポロっと漏らしていたわ。」 情婦が漏らしたさりげない言葉が、副社長氏に突き刺さった。税務調査の情報が外部に漏れていることに衝撃を受けたのである。

 たしかに国税局の調査は一週間ほど前から始まっている。ウラ金を一手に扱っているだけに、ビクビクしながら対応している毎日だ。

 しかし、社内には厳重な箝口令(かんこうれい)を敷いている。外部に漏れるはずがない。ところが情婦は調査担当者の名前まで知っている。国税局内部とつながっているのは間違いない。調査の詳しい情況について、更に探りを入れてもらうことにした。

 翌日、情婦は驚くべき情報をもたらした。多額のウラ金が見つかった、現在はその裏付けの調査を進めているというのである。国税局のエライさんからは固く口止めされているが、今の状況では査察に回されるのではないかという。任意調査から強制調査への切り替えである。
 もともと、常日頃から会社のウラ金の操作をしており、スネに傷を持っている。バレたら大変なことになる。
 脱税で摘発されれば、社長だけでなく、自分までも逮捕されるおそれがでてきた。その上、役人とか政治家とのウラのつながりが明らかになり、贈収賄事件にまで発展しかねない。そうなれば、許認可事業である産廃事業ができなくなるし、公共事業も指名停止だ。企業グループとしては致命的なダメージを受けることになる。このような事態になるのは何としても食い止めなければならない。

 困り果てた副社長氏、蛇(じゃ)の道はへびとばかり、税務署OB税理士に相談を持ちかけた。かねてから捨て扶持(ぶち)を払って懐(ふところ)に抱えていた用心棒である。
 この二人の税理士、副社長が泡を食って駆け込んでくることは承知の上だ。すでにリーダー格の国税職員に取り込まれており、計画がうまくいったら相応の謝礼がリーダーから渡されることになっている。加えて、ここで国税局の内部情報を探り、適切なアドバイスをしたことにすれば、会社からも臨時の報酬をせしめることができるかもしれない。濡れ手に粟の臨時収入だ。

 国税局の調査状況を探った(フリをした)税務署OB税理士、声をひそめて副社長氏に報告した。

「女性の言っていることは事実ですよ。ウラ金についてはすでに具体的なことを局は掴んでいます。いつか内々に相談を受けた件、県会議員と知事への選挙資金とか、仕事の見返りとして支払った謝礼金は、お金の出所(でどころ)まで押さえているようです。それに社長と副社長に流れたお金についても匂わせています。これだけの証拠があれば、すぐにでもオフダ(国犯法第2条の臨検捜索差押許可状のこと)をとることができます。査察になったらモミ消しすることができなくなりますので、手を打つならば今のうちです。
 今度の場合私達が動いてもいいんですが、それよりも、その女性が親しくしている××さん(国税職員)は調査の現場責任者で、事実上の決定権を持っていますので、そちらに働きかけたほうがいいでしょう。」

 二人の話に耳を傾けていた副社長氏、あまりのことに気が動転してしまった。ウラ献金やワイロがバレただけでも大変なことになるのに、あろうことか、社長と自分がウラ金に手をつけていたことまでバレたようだ。政治家や役人に手渡す現金の一部を、社長と二人で山分けしていたことまでどうして分かったんだろうか。いずれにしても、このまま放っておくことはできない。社長に話をした上で至急対応しなければ、会社だけでなく、自分達もエライことになる。
 社長と話し合った結果、金はいくらかかっても構わない、とにかく刑事事件にだけはならないように手配することになった。

(この項つづく)

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 ここで一句。

“東電は不正献金なかったか” -富士見、風流者

(毎日新聞、平成24年3月26日付、仲畑流万能川柳より)

(東電の献金は全て不正です。)

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