100年に1度のチャンス -29

 好むと好まざるとに拘らず、私達は、情報のカオス(混沌とした状態)の中に投げ込まれています。五里霧中(深い霧が五里四方にたちこめて、全く方角が分からないような状態に陥ること、-新明解国語辞典)の状況と言ってもいいかも知れません。

 このような状況にあって私達はどのようにしたらいいのでしょうか。膨大な量の情報という深い霧の中をあてどもなくさ迷い、いきあたりばったりに情報を利用し、情報に翻弄(ほんろう)されるしか方途がないのでしょうか。情報の洪水は世界的な規模のものであるために、個人がどのようにもがこうとも蟷螂(とうろう)の斧、致し方(いたしかた)のないものなのでしょうか。

 私はそうは思いません。洪水のように押し寄せる情報には様々なものがありますが、勿論その全てがニセモノである訳ではありません。当然のことながら、ホンモノの情報が存在しているのです。
 ただ情報がホンモノであるからといって、直ちにそれを活用することはできません。十分に咀嚼(そしゃく)しないと消化不良を起してしまうからです。ここで大切なことは、情報を活用するために、ホンモノの情報を選び分けた上で咀嚼することです。これは、私達が通常、「情報のリテラシー(理解)」と呼んでいるものです。ちなみに、咀嚼の意味を辞書で確かめてみますと、次のように説明されています。

「食べ物をかみ砕き、やがて自分の血とし肉とすること。」〔人の言ったことや他人の書いた文章の意味をよく考えて、自分なりに理解する意にも用いられる〕-新明解国語辞典。

 私達の身の回りに飛び交う、玉石混淆の無数の情報。これだけでは単なるゴミの山でしかありません。この中から石をとり除き玉(ぎょく)だけを集め、更にこの玉に磨きをかければ、全く異なった情報へと生まれかわります。情報のリテラシーであり、咀嚼であり、あるいは止揚(アウフヘーベン)ということです。
 これまで、このようなことができるのはごく一握りの限られた人達の特権のようなものでした。重要な情報を独占して決して公開しようとしなかった人達です。独占による巨大な利益を確保するために、外部には決して公(おおやけ)にしなかったのです。
 しかし現在は状況が一変しています。多くの重要な情報が公開され、誰でも活用することができるようになっています。国とか地方公共団体の情報をはじめ、会社の情報もかなりのものが公開されているのです。しかも、このような重要な情報が誰でも居ながらにして手に入るようになりました。これは日本だけでなく、全世界レベルのことで、まさにインターネットの驚異的な発展のたまものです。

 知的財産(知財)の代表格とされる特許とか意匠権も例外ではなくなりつつあるようです。急速な経済発展によってこのところ一段と存在感が加わった中国とかインドのように、もともと知財に対する法規制がないか、あるいは法規制があったとしても、それを守ろうとする国民の規範意識が稀薄な国の存在は注目すべきです。インドでは新薬のコピー商品が規制されていないようですし、中国にいたっては何でもありの状況です。
 このような知財についての考え方とか扱い方が間違っているとか、ケシカランとか果して言い切れるのでしょうか。考えてみますと、インドも中国も文明発祥の地ですから、この国の人達にはあるいは、現在の世界がこうむっている文明の恩恵は一体誰のおかげか、発明にせよデザインにせよ、役に立つもの、良いものを自由に取り入れて何が悪いか、といった意識があるのかもしれません。つまり、発明は人類が生み出した共有財産であると考えれば、たとえ10年とか20年にせよ、発明者に独占的利益を与えることの方がかえっておかしいのではないかとも言えるでしょう。近年日本でも認められるようになった「ビジネスモデル特許」に限って言えば、特許が認められていたとしても、特許権者が独占的に使用することが事実上できにくくなるでしょう。たとえば、コンピュータ・ソフトについては、ネット上で無料もしくは極めて安い料金で利用できるようになり、事実上、利益の独占は難しくなるはずです。

 知的財産を独り占めすることが難しくなってきたことは、それが全世界の人達の共有の財産になろうとしていることを意味します。これはもとより知的財産だけのことではありません。環境資源を含む天然資源、世界の60億人の人的資源も同様です。一部の国、一部の人達がそれらを支配し、独占的な利益を享受する時代が終ろうとしているということです。宇宙船地球号として、世界全体が運命共同体であることの認識は、人類が存在し続ける上で不可欠のものとなりつつあります。収奪の時代が終り、新しいパラダイム(時代を支配する考え方)に切り替わったのです。

(この項つづく)

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 ここで一句。

“本職は テレビと政治 どっちなの” -群馬、路傍土。

(毎日新聞、平成21年4月22日付、仲畑流万能川柳より)

(どっちでもない、タレントもどき、政治家もどきだったりして。)

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