冤罪を創る人々vol.52

2005年03月08日 第52号 発行部数:330部

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「冤罪を創る人々」-国家暴力の現場から-

日本一の脱税事件で逮捕起訴された公認会計士の闘いの実録。
マルサと検察が行なった捏造の実態を明らかにする。
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山根治(やまね・おさむ)  昭和17年(1942年)7月 生まれ
株式会社フォレスト・コンサルタンツ 主任コンサルタント
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●(第六章)権力としての検察 ― 暴力装置の実態

「5) ドイツの判例・粗製ガソリン脱税事件・手形パクリ事件」より続く
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六.その他検察官言行録

(1) 田中良

一、 松江地方検察庁次席検事。マルサ事案の統括責任者。中央大学
法学部卒。
検察内部で一部慎重論があったにも拘らず、強引に逮捕・起訴に
持ち込み、マスコミに虚実とりまぜた情報をリークし、元来ほどほ
どのワルでしかなかった私を稀代の悪徳公認会計士に仕立て上げた
中心人物。

二、 事務所の職員古賀益美氏が回想する、 ―

「そう、あれは、平成6年6月30日、天気のいい日曜日のことで
した。私、その日は休みだったんですが、やり残した仕事がありま
したので、事務所に出ていました。お昼の弁当を買いに出たんです。
買い求めた弁当を手にビルに向っていました。午前11時30分頃
のことです。
何気なく前に目をやると、頭の毛がかなり薄くなった中年の男が、
山根ビルの様子をうかがっているんじゃありませんか。
テレビで見たあの顔です、起訴のとき、テレビの記者会見の席で、
「背景に大型脱税が・・・」なんて、上眼をつかい冷たい顔をして
しゃべっていたあの男、田中良に間違いありません。しっかり録画
もしてあるんですから。
陰気臭くて、しかも憎らしく思っていた相手です、忘れるわけが
ありません。」

三、 「下腹がふくらんだ中年体型の田中は、胸のところに水色と紺
の太い縞のあるポロシャツを着て、山根ビル隣の家電量販店の前で、
タバコをふかしながら、山根ビルをじっとうかがっていました。獲
物を狙っている蛇のようでしたね。
私、ビルの入口にさしかかったとき、急に思い直して、引き返す
ことにしました。田中が何をしているのか、近くでゆっくり観察し
ようと思ったんです。
すると、むこうも気がついたんでしょうね。慌てて家電量販店の
中に入っていってしまいました。まるで子供がワルサを見つかって
しまった時のように、オドオドとパニクっていました。きっと、う
しろめたいことをしていると思っていたんでしょうね。
私も急いで店に入ってサッと見回してみたんです。いましたねえ。
向うも陳列棚から少しばかり首を出して、こちらを見ていたんです。
二人共、亀みたいな感じで。
しばらく陳列棚を挟んで、お互い相手の様子を探り合っていたん
ですが、いつの間にか見失ってしまいました。」

四、 「それにしても、田中はびっくりしたんでしょうね。中年のお
ばさんが何やら買い物袋を小脇にかかえて、露骨に後をつけてきた
んですから。検事として、今まで人を追っかけたことはあるんでしょ
うが、人から、しかもわけの分からない中年のおばさんから追っか
けられて逃げ回ったなんてのは、初めての体験だったんでしょう。
なんせ、慌てていましたからね。
私、伊丹十三の「スーパーの女」のワンシーンを思い出しました。
スーパーの店長と、指で商品に穴を開けてまわるお婆さんの場面で
すよ。二人が、スーパーの陳列棚をはさんで、相手の出方をうかが
いながら、抜き足、差し足、忍び足といったシーンでしたね。当事
者の二人は真剣勝負ですから大真面目ですが、第三者から見ればな
んとも滑稽な場面になってしまうんですね、
私達の場合、さしづめ『晴れた日曜日の昼日中、買物帰りの中年
女性にうしろめたい行為を見とがめられて追跡され、やっとのこと
で逃げおおせた、これまた中年の下腹のでた地検ナンバーツーの検
事』といった図柄にでもなるのかしら。」

五、 「田中が何のために山根ビルを偵察していたのか、本人に直接
尋ねてみないと分かりません。
おそらくは、山根会計事務所がどうなったのか確認するために見
に来ていたんでしょう。
山根所長が逮捕されたのが、1月の末でしたから、5ヶ月も経っ
ています。そろそろ事務所が潰れてもいいころだと思ったんでしょ
う、通常であれば、そうでしょうからね。
だってそうでしょう、検察としては山根所長の拠点がなくなって
しまえば万々歳だったんでしょうからね。
裁判費用も賄えなくなるし、更には、事務所がなくなってしまえ
ば、頑として否認を通している所長も気落ちの余りやけっぱちになっ
て、嘘の自白をするかもしれないじゃないですか。それこそ検察の
思うつぼですよ。
田中良としては、とっくの昔に潰れていてもおかしくない山根事
務所がどうも以前と変ることなく営業をしているらしいとわかって、
いまいましいような気持でいたところを、いきなり怪しげな女が出
てきて、あろうことか検事サマをつけまわし始めたんで、さぞかし
驚いたことでしょうね。」

六、 「その後も、田中良は、私が確認しただけでも、2回、山根ビ
ルを偵察にきていました。
田中はよほど気にしていたんですね。」

(「(2) 藤田義清」はWebサイトにて)
http://www.mz-style.com/item/251

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●山根治blog (※山根治が日々考えること)
http://consul.mz-style.com/catid/21

・パクス・トクガワーナ

今、江戸時代が見直されています。この背景には、明治維新以来、
私達は十分な検討を加えることなく、江戸時代を封建時代の名のも
とに切り捨ててきたことに対する反省があるようです。

第二次世界大戦後は特にひどい状況でした。戦争放棄を謳う新憲
法が施行され、かつての軍事力を背景にした近代化政策が、軍国主
義の名のもとに切り捨てられ、一時代前の江戸時代は、その軍国主
義の時代よりも更に悪い暗黒時代であったかのようなイメージが植
えつけられてきました。

日本が明治以来、理想的な国家としてきたのは、ドイツ、イギリ
ス、フランスなどのヨーロッパの国々でした。

第二次大戦後はそれらにアメリカが加わり、日本はそれらの国々
を追いかけ、ひたすら真似をしてきました。

確かにそれらの国が、学ぶべき多くのものを持っていたのは事実
です。日本が世界でもトップクラスの経済力を持つまでに成長した
背景には、これらの先進諸国の存在を否定することはできません。

しかし、平均的に衣食住が足りてきた現在、果して私達はこれで
いいだろうかという疑問の声が各分野から湧き起ってきています。

パクス・トクガワーナ。徳川将軍家のもとで太平の世を謳歌した
260年間の江戸時代を指して言われた言葉です。

かつてのローマ帝国について、アウグストウス時代から五賢帝時
代までの約200年間をパクス・ローマーナ(ローマの平和)と言
うことがありますが、それに擬(なぞら)えて、パクス・トクガワー
ナ(徳川の平和)と言ったものです。共に、動乱や戦争が収まり、
文化の発展が目覚しい時代だったからです。

衣食足りて礼節を知ると言います。ところが現在の日本はどうで
しょうか。衣食足りて、礼節をはじめ何か大きなものを見失ってい
るように思えてなりません。

このような時に、政治、経済、文化等各分野において、当時の世
界のトップレベルにあったとされるトクガワの時代を改めて振り返っ
てみることは、必ずしも無益なものではないようです。

―― ―― ―― ―― ――

ここで一句。

“鎖国なら平和かなあと思う時” -埼玉、大山ネネ。
(毎日新聞:平成17年1月29日号より)

(今言われているグローバル・スタンダードはアメリカ流のもの。日
本の、日本による、日本のためのグローバル・スタンダードとは何
でしょうか。)

 

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