047 捏造された勾留理由

 

****5) 捏造された勾留理由

一、 売買が仮装ではなく、真実のものであるとあらゆる面から完全に証明された現在、検察が私の保釈を認めてはいけない理由とした挙げた数々の事柄が、いかに想像を絶する捏造であったか明らかになった。

 今の時点で、7回前後行った保釈請求と保釈に反対する検察の意見書等を改めて読み返してみると、私を保釈させない為に、嘘に嘘を重ね、裁判官をなんとかして騙そうとしている検察官の姿があざやかに浮び上がり、怒りよりもむしろ憐憫の情を催すほどである。そこまで言うのか、というほどの嘘のオンパレードであった。



二、 平成8年3月8日、松江地検の検事藤田義清が保釈を阻止しようとしてなした準抗告申立の中で、私と弁護人中村寿夫弁護士の名誉を著しく傷つける言辞が弄されている。

 曰く、「山根は、自己において作成した経過説明と題する書面につき、弁護士の助言により、その内容を自己に有利な内容に改ざんしている。」

 私が弁護士と結託して文書を改ざんし、証拠隠滅を図ったというのである。検事という人種には、事実を歪曲し、直ちに判明する嘘を公式の文書に記載する特権と免罪符でも付与されているのであろうか。



三、 検事の捏造の中でも最高傑作ともいえるのは、私が暴力団山口組に関係しており、事件関係者に危害を与えるおそれがあるとするものだ。

 検察は、私を逮捕した後、虚実をとりまぜて、マスコミにリークし、私を稀代の悪徳公認会計士に仕立てようとしたのであるが、さすがに、私を暴力団の舎弟とまではリークしなかった。しかし、裁判所との保釈をめぐる裏の駆け引きの中には、こっそりともぐり込ませていたのである。またしても藤田義清検事であった。自白しなければ絶対に保釈しない、検察の執念を見る思いである。

 平成8年3月8日午前10時、中村弁護人接見。

中村:「岡島氏の保釈決定はでたが、山根の保釈は却下された。ただ、却下された理由の中に『圧力をかけて罪証を隠滅するおそれがある』というのがあるが、よく分らない。」

山根:「中島検事が私に言っていた山口組のことではないか、“佐原良夫が松江に行くのをこわがっている。山根は山口組と親しいから松江に行ったら何をされるか分からないと言っている。”」



 弁護人がなした平成8年3月9日付の準抗告申立書を引用する、 ― 『裁判官が山根に事件関係者の身体等に危害を加え又はこれらの者を畏怖させる行為をすると疑うに足る相当な理由があることを保釈却下の理由にしていることに至っては、理解に苦しむが、山根は公正証書原本不実記載・同行使罪で逮捕された直後、取調を担当した中島行博検事から「佐原を松江地検に任意で呼び出しているが、佐原が怖がって松江に来ようとしない。佐原は、山根が暴力団山口組に関係しており、松江に来ると殺されると言っている。お前は山口組と関係があるのか。」と聞かれたことがあり、まったく予想外の質問に吃驚し、一笑に付したということがあった。
 山根は、暴力団に関係したことは一切ないし、暴力団に関係があると人に言ったこともない。また、税理士、公認会計士としての関与先の中にも暴力団の関係する企業などは一社もなく、山根は、開業以来暴力団などと関係のある企業に関与しないよう人一倍神経を使っていた。
 山根が暴力団に一切関係していないことは、山根の身上、経歴等を調査している検察官は知悉している筈であるが、佐原が山根は暴力団と関係しており、自分の身が危険だと供述しているとすれば、検察官はその旨を供述調書の中に書き、山根の保釈に反対する理由に利用したのであろう。』

四、 また、私が終止、全面否認を通したことがよほど腹にすえかねることであったらしく、裁判所が重い腰をあげて、平成8年11月7日にようやく保釈決定をしたのに対して、公判検事の立石英生は、私の供述と公判の態度について、次のようにこきおろしている、 ― 『被告人(私のこと)特有の独自の論法を展開するにとどまり、その結果、同人の検察官調書の内容は、まさに禅問答ともいうべき供述に終始している。
 さらに、第一回公判期日において、被告人は、本件各犯行について全面的に否認し、弁護人共々、自己の責任を免れることのみを目的とした虚構の論理を展開している。』 これについては、ただ唖然とするばかりで、論評すべき言葉もない。よく言ってくれたものである。

 「独自の論法を展開し、禅問答」をなしたのは、私を取調べた中島行博検事であり、「虚構の論理を展開」したのは、まさに立石英生検事ではないか。

 真実をねじ曲げようとした検察側に、根本的な無理があり、私は単に過去の事実をそのまま述べただけのことである。

 ただよく考えてみると、私を保釈させるべきではないとする意見書の中で、立石は何故私の供述姿勢に言及しているのか、その理由がよく分からない。私の供述が、検察の意見と違うから、けしからん、閉じこめておけ、ということであり、私の保釈に反対する理由になっていないのである。立石検事は論理的思考が余り得意ではないようだ。

五、 更に検察は、虚構のストーリーを正当化しようとして、私を極悪非道の悪人にすべく、日本語の中でも最低の口汚ない言葉を連発して、裁判官を誤導し、私を引き続き勾留しようとしている。再び、平成8年10月11日に立石英生検事がなした抗告の申立書の中から、適宜拾い出してみる、 ―

「考え得る可能な限りの様々な不正手段を駆使して」、

「本件犯行の悪質性」、

「税金逃れの事実を隠蔽するために敢行された工作」、

「悪質極まりない犯行」、

「財務税務の知識を駆使悪用して」、

「張本人」、

「捏造」、

「罪証隠滅工作」、

「その事実を糊塗するために様々な隠蔽工作を弄した」、

「帳簿上の操作」、

「通謀を示唆する架電」、

「煽動」 ― 。

 これだけの汚い言葉を集中して投げつけられると、自分が本当に極悪人であるような錯覚に陥ってしまうほどである。

 立石検事がこの申立書を書いた時点で、彼は、自らのストーリーが荒唐無稽であり、虚構であると十二分に知っていた節がある。そのような状況下で、私の人間性をも徹底的に否定するこのような言辞を平気で発することができる立石という検事は一体何者であるか、改めて彼の人間性について考えさせられる。

六、 思うに、このような一連の言葉は、全て、私にではなく、国税当局と検察当局にこそ妥当するものではないか。犯罪ではないことを、意図的に歪曲して犯罪に仕立て上げ、無実の者を犯罪人として断罪することは、まさに冤罪の捏造であり、独裁国家ならいざ知らず、民主主義の法治国家で許されることではない。

 「悪質極まりない犯行」をなしたのは、国税であり、検察ではないか。国家権力が犯罪集団と化した典型的な事例である。

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