010 二審(控訴審)判決

***4.二審(控訴審)判決

一、 平成13年6月11日、広島高等裁判所(裁判長前川豪志、退官により宮本定雄裁判長代読)は、松江支部において、一審の無罪判決を支持し、検察側の控訴を退けた。

 

二、 「本件は無罪」-形の上では、一審判決と同様であったものの、無罪を認定するプロセスが一審判決と全く異なるものであった。

 二審判決は、一審判決における事実認定の誤りを正し、検察の主張していた架空売買が事実無根であることを明確な言葉で判示した。それは、検察がマルサと共に創りあげた虚構のシナリオが完全に崩壊したことを宣言するものであった。

  

三、 12人もの検事達が、許しがたい犯罪人として私を逮捕し、291日の長きにわたって私を松江刑務所拘置監に身柄拘束したうえで、マスコミを通じて次から次へと事実に反する嘘の発表をして、私を社会的に抹殺しようとしたカラクリが白日のもとにさらされ、検察が勝手に描いた虚構のシナリオがガラガラと音をたてて崩れた。

 裁判所という公の場で、検事たちの嘘が明らかにされ、彼らがマルサと共同して創作した冤罪の構図は、バベルの塔さながら、崩れ去った。



四、 控訴審において検察は、売買契約が架空であると強弁することが不可能であると覚ったためであろうか、仮に売買契約が架空ではなく、真実のものであったとしても、税法の立法趣旨から見て認めることはできないという破れかぶれの論法を、刑事法廷に正面切って持ち出すに至った。一審の際にも、控えめな形で主張していたものであったが、このような罪刑法定主義の根幹にかかわる暴論が通るはずもなく、一審同様、控訴審でことごとく斥けられたのは、けだし当然のことである。

 信じ難い暴論を法廷で堂々と開陳し、平然として証拠を捏造する複数の検事が私の公判に関与しているが、この人達は本当に法曹資格をもっているのであろうか、疑わしい限りである。

 権力をもてあそぶことに麻痺し、人間として何か大きなものが欠落しているとしか言いようがない。このような人たちが検事の全てではないにせよ、複数現実に存在し、社会正義の名のもとに国民を断罪し続けていることを思うとき、慄然たる思いにかられるのは私一人であろうか。



五、 もっとも、このような論法を検察官が思いつくとは考えられない。税法と税務の実務に無知だからである。
『仮に売買契約が架空ではなく、真実であったとしても、税法の立法趣旨から見て認めることはできない。』

 このような論法は、まさしく、税を徴収するときの論理であり、罪刑法定主義を基本とする日本の刑事法廷には全くそぐわないものだ。何らかの意図をもってマルサが入れ知恵したことは明らかである。無知の故に、マルサの繰り人形と化している検察は、哀れとしか言いようがない。

 このとき、入れ知恵をしたマルサは、本局に戻されて控訴審を担当した大木洋と藤原孝行であろう。

 かつて、数多くの珍妙な理屈を得意気に開陳した大木洋の肉声は、私の所持する録音テープにしっかりと残されており、この入れ知恵も、いかにも大木の考えそうなことだと納得できる。



六、 では何故、大木達は、刑事法廷に通用しそうもない論法を控訴審で強調しはじめたのであろうか。

 推測するに、大木達は、一審判決が一部事実認定の誤りを犯しているのを奇貨として、刑事罰を課することはできないまでも、せめて徴税の道だけは残しておこうと考えたのではないか。

 「仮装ではなく、刑事罰に問うことはできないが、税法の立法趣旨から認めることはできない。」といった判決を刑事法廷においてねらったのではなかろうか。



七、 しかし、仮に大木達の悪あがきにも似た小細工が効を奏し、控訴審が一審判決と同じように一部徴税の余地を残すかのようなものであったとしても、徴税に関しては全くの徒労に終わったであろう。



八、 原処分庁である益田税務署は、マルサの指示に従って、組合の青色申告の承認を、仮装取引を理由として取り消した上で、追徴の手続きである更正処分を行っている。

 したがって、裁判で仮装取引が否定され、真実の取引であったと認定されれば、青色申告の承認を取り消す理由がなくなり、青色申告が復活することになる。

 青色申告の場合、税務署が更正(追徴)をするためには、具体的な「更正の理由」を附記しなければならず、もし、「更正の理由」が附記されていなければ、違法となり、更正処分は無効となる。

 益田税務署は、組合の青色申告の承認を取り消したのであるから、組合の申告を白色申告扱いとし、敢えて「更正の理由」を附記していなかった。

 したがって、税法の立法趣旨から認められないと言ったところで、後の祭りであり、組合から徴税することは不可能であったのである。



九、 実は、以上の論法に私が気づいたのは、平成15年3月11日に、国税不服審判所の採決が出た後のことであった。

 控訴審当時には思いつかなかったのである。詳しくは、「6.不服審判所の裁決」において触れることとする。



十、 広島高裁が事実を正確に把握して、「本件」の無罪を言い渡したことは、経済的な側面からは、次のような意味を持つ。

 即ち、検察が国税当局と一体となって、敢えて真実を曲げ、数々の証拠を捏造してまで私を逮捕し、あわよくば裁判官を騙して、払う必要のない25億円余りのお金を、私と関係者とから強奪しようとしたことが失敗に終ったことである。



十一、 検察・国税当局が不当に徴収しようとしていた税額等の内訳は次のとおりである。尚、延滞税は、無罪確定時までのものが算出されている。



〈検察・国税当局が不当に徴収しようとしていた税額等の内訳〉 単位:千円

税目等法人税 ※地方税合計
本税627,749308,272936,022
重加算税185,99755,834241,831
過少申告加算税14,5703,14317,714
延滞税765,471417,5331,183,004
罰金 ※150,000150,000
合計1,743,788784,7842,528,572

※法人税には、法人特別税、法人臨時特別税、消費税等を含む。

※罰金は検察による求刑額。

※各税目は国税当局による追徴額。



十二、 このことによって、私をはじめ組合の人達の財産権が守られたことは、当然のこととはいえ、私にとって心の安まることであった。

 思えば、佐原良夫とのトラブルが生じた直後の平成2年8月10日に、私は、頭を丸めて、中村寿夫弁護士に同行してもらい、益田の組合にまで赴き、私の不手際を詫びると共に、「私の全財産をなげ打ってでも、関係者の皆さんに迷惑をかけない」旨の約束をしていた。

 平成5年9月28日、思いがけなくも、マルサのガサ入れがあった直後の同年10月5日にも、担当職員小島泰二を同行させ、組合に赴き、同様の趣旨の確約をしていた。

 この組合の人達に約束していたことを、現実に果たすことができたのである。更に、私の財産も全くキズつくことがなくなったのは二重の喜びであった。

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