012 不服審判所の裁決

***6.不服審判所の裁決

一、 平成15年3月11日、組合が行っていた審査請求について、国税不服審判所(所長 成田喜達)は、マルサの指示によって原処分庁(益田税務署)が行った更正処分(税金の追徴のこと)の全てを取り消す裁決を行った。

 64ページに及ぶ裁決書は、原処分庁の弁明を詳細に取り上げたうえで、全て事実無根として退けた。

 

二、 第二審の確定判決を踏襲しており、当然の裁決ではあるが、国税当局自らが、誤りを率直に認めた意義は、計り知れないものがある。

 しかも、一点の疑いもない真実の取引であることを明確な言葉で認定したことは、仮装であり、脱税であるとして証拠を歪曲捏造してまで主張しつづけ、不当な税金の追徴をしようとしていた国税当局の非を自らが完全な形で認めたことを意味する。



三、 私が裁決書を一読したとき、十分には理解できないことがあった。課税処分が一部ではなく、全部取り消されていたからである。

 私は、第二審の確定判決を受けて、仮装売買に関する部分の課税処分が取り消されるのは当然であると考えていたものの、単純な申告ミスの部分(本税、地方税、過少申告加算税、延滞税、合わせて2億円位)も含まれていたので、その部分については、課税処分が残るものと考えていたのである。

  

四、 2、3日の間、弁護人と共に検討したところ、意味が判ってきた。



五、 原処分庁は、マルサの指示のもとに、平成8年3月6日に、組合の青色申告承認取り消しの処分をした上で、同年3月25日に、更正処分(税金の追徴)をしている。

 即ち、この更正処分は、すでに青色申告が取り消されているため、白色申告に対するものとなり、青色申告の場合に要求される「更正の理由」を必ずしも付記しなくてもよいものだ。

 実際に3月25日付でなされた組合の4年分の更正処分の通知書は、それぞれ一枚だけの簡単なものであり、追徴金額のみ記されており、「更正の理由」が付記されていなかった。

 当時、私は松江刑務所拘置監に拘束されており、弁護人から差し入れられたこれらの通知書を見て、ずいぶん乱暴なやり方をするものだと驚いたことを鮮明に想い出す。



六、 国税不服審判所は、原処分庁が行った青色申告承認の取消が違法であり、間違っていたと裁決したわけであり、結果的に、組合の青色申告は過去に遡って復活することとなった。

 すると、青色申告の場合には必ず、「更正の理由」をつけなければならず、仮に「更正の理由」が付記されていない場合には、その更正処分は違法なものとなり、取消の対象となり、必然的に無効となる。



七、 以上のような理由によって、組合に対してなされた更正処分の中には、マルサが仮装売買と決めつけたもの(重加算税対象)の他に、単なる申告ミス(過少申告加算税対象)も含まれていたが、全て取り消されることになったのである。



八、 この10年間、私は組合には一部支払うべき税金が残っていることを知っていた。組合の人達との当初の約束通り、それらは全て私が負担する腹づもりでいたものである。

 不服審判所の裁決がなされるまでの私の計算では、前述のとおり概ね2億円であった。



九、 2億円といえば、私にとっては大金である。それが突然、払わなくてもよくなった。

 私が一瞬茫然とし、裁決書の意味がよく判らなかったのは、このような背景があったからである。



十、 張りつめていた気持ちが緩んだからであろうか、私はその後、4ヶ月程体調を崩し、仕事らしい仕事ができない状態に陥った。

 この2億円は、10年間マルサと検察が私に塗炭の苦しみを与えたことに対する、形を変えたいわば国家賠償金であると考えることにした。



十一、 これは、明らかに国税当局のミスである。組合は税金を払う意思をもっていたものの、マルサの勇み足で払うことができなくなったからである。



十二、 思うに、マルサは常にこのような、乱暴なやり方をしてきたのであろう。

 100%近くの有罪率を豪語するマルサは常に、不正行為を理由として青色申告を取り消し、問答無用とばかりに、理由もつけないで税金を追徴してきたのであろう。

 もっとも、組合の場合には、多額の繰越欠損金があり、青色申告のままでは、脱漏所得があっても、繰越欠損金を控除しなければならず、“脱税額”が少なくなることから、マルサとしては、青色申告を取り消さざるを得ない事情があった。



十三、 では、国税当局はどうすればよかったのか。簡単なことである。

 青色申告の承認を取り消して、繰越欠損金を無効にするまではいいとして、その後、更正処分をする際に、問答無用とばかりに、追徴金額だけを記すのではなく、十分な「更正理由」を付記しさえすればよかったのである。



十四、 マルサは、何故それをしなかったのか。一言で言えば、マルサの傲岸不遜な奢りである、-

 自分達は、どのようなことをしても許される。白いものであっても、ひとたびマルサが黒であると決めつければ、黒になる。検察官や裁判官なんてチョロいものだ。偉そうな顔をしているが、税金のことなど何も知っていない。適当におだてあげて、繰っておけばよい。自分達に刃向う不届き者は、叩き潰してしまうまでだ。



十五、 マルサは、私がここまで徹底的に立ち向かうことなど想像していなかったに違いない。

 普通の会計事務所なら、マルサのガサ入れがあった時点でおかしくなる。告発され、しかも会計事務所の唯一人の資格者である私が逮捕された時点で、事務所が崩壊しても不思議ではなかった。

 更に、291日も刑務所の中に閉じ込められていたわけで、事務所が残ったことに対して、感謝したい気持ちで一杯である。

 その上、この度は、3年間の公認会計士のいわば資格停止である。

 しかし、今後共、私の会計事務所は、したたかに生き続けていくであろう。

 この世で私にすべきことが残っている限り、私は何者によっても潰されることはない。還暦を過ぎた私の、確信に近い現在の心情である。

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