国税マフィアの闇-⑩

 前々回(“国税マフィアの闇-⑧”)、国税庁がひた隠しにしていた内部文書について触れた。秘密文書の存在が明らかになった瞬間である。

 明らかになったとはいっても、文書そのものが私に提示された訳ではない。明らかにされたのは、文書の名称、文書が発せられた年月日、それに文書番号だけであった。あとは開示請求をして自分で取りよせろという訳だ。いつものことながら、由(よ)らしむべし知らしむべからずといった、上から目線のお上(かみ)意識まるだしだ。



 「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」に基づいて、行政文書の開示請求を行ったのが平成26年8月5日。

 この請求に対して、「開示請求に係る開示・不開示の判断の審査に相当の時間を要することから、事務処理が困難となるため」といった怪しげな理由をつけて、開示決定の期限の延長の通知がなされたのが平成26年9月1日。開示を少しでも遅くしようとする言い逃れだ。

 藤田利彦東京国税局長名で出されたこの通知、訳の分らない屁理屈をつけた苦しまぎれの悪あがきである。此期(このご)に及んで往生際が悪い。

 平成26年9月24日、請求していた行政文書の開示決定通知書が届いた。開示の実施は平成26年10月2日と3日。写しの送付を希望したため、文書の写しが実際に私の手許に届いたのが平成26年10月6日であった。開示請求をしてから2ヶ月以上が経っている。
 開示された文書は、

「平成24年12月21日付東局課-総6-6他8課合同 査察事件に係る課税処理及び異議申立て等に関する事務実施要領について(事務運営指針)」

である。表書きが2枚、別添で示された本文が11枚、フローチャートが2枚、書式として様式1~12が添えられた詳細な通達であった。末尾にその全文を公開する。

 この通達、東京国税局長が、課税(第一、第二)部長、調査(第一、第二、第三、第四)部長、査察部長と東京国税局管内の各税務署長に宛てて発したものだ。
 ところが、表書きの右上を見ると何やらおかしな文言がくっついている。

「基礎通達 平24.12.13付 課総2-49ほか7課共同」

という文言だ。
 この「基礎通達」というのは一体何だ。東京国税局長が出した通達は平成24年12月21日、この「基礎通達」というのはその8日前の平成24年12月13日付となっている。
 つまり、12月13日に国税庁長官から「基礎通達」が発せられ、それを受けて、東京国税局長がこの通達を発したらしいことが明らかになった。とすれば、国税庁長官が発したこの「基礎通達」そのものを是非とも確認しなければならない。

 平成26年11月7日、東京国税局に対して再び開示請求を行った。東京国税局長から開示決定の通知があったのが平成26年11月27日、実際に国税庁長官による「基礎通達」が私の手許に届いたのが平成26年12月8日であった。
 念の為、国税庁に対しても「基礎通達」の開示請求を行なった。この通達の写しが私の手許に届いたのが平成26年12月19日であった。
 「基礎通達」とされていた国税庁長官の通達は、

「平成24年12月13日付課総2-49ほか7課共同 査察事件に係る課税処理及び異議申立て等に関する事務実施要領について(事務運営指針)」

という名称の通達であった。
 東京国税局長の通達と比較すると、本文は若干字句が異っていたが内容的には同じものであった。添付されている事務フローチャートは東京国税局長の通達がより具体的で詳しく、国税庁長官のものは簡略ではあるものの、基本的には変らないものであった。末尾に国税庁長官の通達の全文を公開する。

 初めに開示請求をしたのが平成26年8月、最終的に国税庁長官が発した秘密通達(以下、長官通達という)そのものが私の手許に届いたのが平成26年12月、実に4ヶ月もの時間がかかったことになる。
 待ちに待っていた長官通達だ。これによってこの3年ほどの間、東京国税局だけでなく大阪国税局、福岡国税局など全国の国税局の査察官が、彼らの挙動に不審感を抱いた私の追及に対して右往左往した理由が明らかになるはずであった。

(この項つづく)

****添付書類
平成24年12月21日付東局課-総6-6他8課合同 査察事件に係る課税処理及び異議申立て等に関する事務実施要領について(事務運営指針)
平成24年12月13日付課総2-49ほか7課共同 査察事件に係る課税処理及び異議申立て等に関する事務実施要領について(事務運営指針)

 ―― ―― ―― ―― ――

 ここで一句。

”こう見えて庶民派なのという自慢” -東京、イヂロー

 

(毎日新聞、平成27年7月6日付、仲畑流万能川柳より)

(“こう見えて”、“こう”とは一体何なのさ。)

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