大塚家具の親子ゲンカ-⑩

 大塚家具の社外取締役に阿久津聡(あくつさとし)という人物がいる。大塚久美子社長と同じ一橋大学出身だ。昭和41年7月生まれであるから、大塚社長(昭和43年2月生まれ)とは大学のキャンパス以来の同窓生であろう。

 大塚久美子氏が大塚家具の代表取締役に就任したのが平成21年3月。その一年後の平成22年3月に阿久津氏は大塚家具の社外取締役に迎えられ、現在もその地位にとどまっている。



 阿久津聡。48歳、一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授。一橋大学商学部を出て、同大学の大学院に進学。大学院商学研究科では竹内弘高ゼミに所属、同時にサブゼミとして野中郁次郎ゼミにも参加している。

 大学院の指導教官であった竹内氏も野中氏も共に、カリフォルニア大学バークレー校ハース経営大学院博士課程で学んでいた縁で、阿久津氏も同校に留学している。

 野中郁次郎氏によれば、カリフォルニア大学バークレー校の長い歴史の中で、マーケッティング専攻の日本人は、野中、竹内、阿久津の三人しかいないそうである(阿久津聡他著『ソーシャル・エコノミー、和をしかける経済』翔泳社刊、P.260)。

 阿久津氏はバークレー校で経営学博士の学位(Ph.D.)を取得、大塚家具の有価証券報告書では、「ブランド・マネジメント研究の専門家」として紹介されている。

 カリフォルニア大学バークレー校(University of California,Berkeley)といえば、第二次世界大戦中、極秘裡に進められた原水爆開発計画(マンハッタン計画)を担った大学として有名だ。同校のオッペンハイマーをはじめ多くの物理学者が核兵器の開発に携わった。昭和20年、広島と長崎が完成したばかりの殺人兵器の実験場所とされ、人類史上未曾有の無差別・大量殺戮がなされたことは衆知である。大量殺戮兵器であり人類を滅亡させかねない原水爆を生み出した中核的な学校だ。死の商人ならぬ死の学校ということだ。
 バークレー校はまたシリコンバレーにも近いことから、IT系など多くの企業から研究資金をもらい受けて大学の運営を行っている。いわゆる産学協同体、つまり企業のヒモ付き大学だ。
 つまりバークレー校は、アメリカ合衆国の世界戦略、分り易く言えば日本をはじめ世界各国をアメリカの植民地にする軍事的・経済的な謀略の一翼を担っている大学であると言っても過言ではない。あるいは産軍コングロマリットの司令塔の役割を果していると言ってもよい。

 阿久津聡氏は、一橋大学の大学院では竹内弘高、野中郁次郎という二人の指導教官からアメリカの世界戦略の基本を教わり、更にバークレー校において、アメリカの世界植民地政策の実務をしっかりと叩き込まれている。経済学、あるいはその亜流である経営学についていえば、この二人が叩き込まれたのは新自由主義経済学であり、新自由主義経営学だ。これら経済学、あるいは経営学が基本理念として揚げる新自由主義は、アメリカの世界植民地政策における錦の御旗、即ち、世界を軍事的かつ経済的に征服するために用意された屁理屈だ。

 アメリカの経済には、軍需産業が中核的な存在としてしっかりと組み込まれ(ビルト・イン)ている。
第二次世界大戦後、世界のどこかで絶えることなく戦争が起っているが、決して偶然の産物ではない。振りかえってみると必ず仕掛人がいることが判る。その大半がアメリカであるが、中には同盟国であるイギリスであったりフランスであったりする。
 つまりアメリカは四六時中、世界のどこかで戦争をしていなければ、その経済が成り立っていかない戦争国家であるということだ。
 同じことは「資本」についても言えることだ。世界が平和で、国家間の戦争がなければ軍需産業が成り立っていかないと同様に、経済が平穏で、世界の人々が自給自足の満ち足りた生活をしていたのでは、「資本」の入り込む余地がない。儲からないのである。人々がお金をめぐって競争し、争わなければ「資本」としては困るわけだ。
 インフレ、デフレ、株や為替の暴騰、暴落、会社の上場、倒産、内紛、乗っ取り、これらのことがなければ「資本」としては「うま味」がない。ことに、貧富の格差について言えば、格差が大きくなればなるほど「資本」としてはより大きな利益を手にすることができるし、逆に格差が小さくなればなるほど「資本」の収益は小さくなり、貧富の格差がゼロになった段階で「資本」の収益は消え失せて、「資本」は窒息し、仮死状態となる。
 「資本」(ファンド)を時に、死肉をついばむハゲタカに準(なぞら)えるのは、「資本」が以上のような醜悪な側面を持っているからだ。
 日本では“有徳人”(大金持、成金)を心の底では蔑(さげす)んできた長い歴史があるが、それも故なしとはしないのである。
 新自由主義経済学・経営学は、いわば現代の“有徳人”のための屁理屈だ。この屁理屈を身につけた阿久津聡という新自由主義のエピゴーネン(信奉者)が大塚久美子社長にペッタリとくっつき、この女性社長をロボットのように操っている、-これこそ大塚家具の親子ゲンカの裏にひそむ真相ではないか。

(この項おわり)

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 ここで一句。

”ハゲチャビン何で茶瓶か考える” -神戸、吹子兵衛

(毎日新聞、平成27年5月3日付、仲畑流万能川柳より)

(花瓶でもないし尿瓶でもない。どう見てもヤッパシ茶瓶でしょう。)

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