大塚家具の親子ゲンカ-①

 夕刊タブロイド紙、週刊誌、テレビと、連日のように取り上げられているのが、ジャスダック市場に上場されている大塚家具の身内騒動である。会社の経営権をめぐる争い、いってみれば財産の分捕り合戦だ。



 店舗展開をめぐる経営方針の違いが親娘ゲンカの原因であるかのようにマスコミは報じているが、果してそれだけなのか。創業者であり筆頭株主である父親の大塚勝久氏が多くの幹部社員を引きつれて記者会見し、「このまま娘に会社経営をまかせておくと、会社を支えてきた有能な人材を失うことになる。娘を社長にしたのが間違いであった。」と、意を決したように語るかと思えば、一方の社長である娘の大塚久美子氏は一人で記者会見に臨み、「会社は永遠に続くもの。いつかは創業者の庇護から離れなければならない。」と語って、それぞれが自らの経営方針に誤りがないことを主張した。

 私は、テレビで親娘2人の話を聞いていて、それぞれに違和感を覚えた。2人ともどこかヘンである。奥歯にモノがはさまったような感じだ。

 大塚勝久氏は、私と同じ世代の昭和18年生まれ、大塚久美子氏は私の息子と同じ世代の昭和43年生まれだ。
 父親は家業であった桐タンスの事業を飛躍的に発展させた経営者で、今の大塚家具の事実上の創業者だ。近年業績は低迷しているとはいえ、年商500億円を超え、従業員1700人余りを擁する大企業にまで育て上げた人物である。しかも、一貫して無借金の経営を貫いている。いわば叩き上げの苦労人だ。
 一方の娘のほうはどうか。一橋大学経済学部を出て当時の富士銀行に入行、3年で辞めて大塚家具に入社、直ちに経営企画室長に就任している。もの心つく頃から、裕福な企業経営者の長女として、会社の後継者となることが期待されて育てられ、満を持して経営の一角に加えられたものと思われる。いわばお金の苦労などしたことのない世間知らずだ。
 40歳半ばをすぎてもそれなりの美形である。大学を出て3年間だけ「外のメシ」を食べて修行し、20歳台で経営幹部になった頃は、才色兼備のまさに恐いもの知らずの状態であったに違いない。大韓航空の「ナッツ姫」を連想させるような存在だ。父親としては幼い頃から自慢の娘であったであろうが、平成16年に、入社10年にして会社を辞めていることから、この頃から、経営方針について父親と食い違いが出ていたのではないか。
 会社を辞めてから直ちに自分で会社を設立したり(株式会社クオリア・コンサルティング)、他の会社(フロンティア・マネジメント株式会社)の執行役員などをして、4年ほどの間、大塚家具から離れている。
 彼女が大塚家具に復帰するのは、平成21年3月のことだ。父親が代表権のある会長に退いたのと同時に、代表取締役社長に就任している。この社長交替劇は、平成21年3月とされているから、大塚家具の第38期(自平成20年1月1日 至平成20年12月31日)の定時株主総会で行われたものであろう。
 この社長交替に関して巷間伝えられるところによれば、大塚勝久氏によるインサイダー取引が発覚したことから責任を取る形で社長職を辞したとされている。
 上場会社のインサイダー取引、しかもオーナー的存在である大株主のインサイダー取引でまず考えられるのは、自社株の操作だ。そこで、大塚家具の第38期(自平成20年1月1日 至平成20年12月31日)の有価証券報告書をネットから引っぱり出して調べたところ、発行済株式総数が、平成20年11月21日に、21,600,000株から、2,200,000株減少し、19,400,000株となっていることが判明。この2,200,000株の減少は、自己株式の償却による減少であることが有報で説明されている。これは平成20年11月21日以前に大塚家具が自社株を2,200,000株(買い取り価額79億円余り)買い取ったことを意味する。この時社長であったのが大塚勝久氏だ。
 この自己株式の買い取りについてインサイダー疑惑がかけられ、何らかの行政処分がなされたのではないか。この行政処分の責任を取らされて、不承不承ながら、社長を辞任せざるを得なかったというのが真相ではないか。このようなことを考えていたら、週刊新潮(平成27年3月12日号)が、平成19年5月、大塚家具が自社株のインサイダー取引に問われ、課徴金の納付命令を受けたと報じていた。
 つまり、父親としては娘を後継者含みで会社に入れてみたものの、意見が対立して10年ほどで会社を辞めさせ、4年間のブランクの後、再びいきなり社長として迎えざるを得なかったのは、身内では長女の他に適任者がいなかったからではないか。
 案の定、社長に就任して経営権を握るや、オーナー的立場の父親の意向を無視して、この和製「ナッツ姫」が暴走を始めたといったところが真相ではないか。

(この項つづく)

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 ここで一句。

”子らの声騒音という世は悲し” -越谷、小藤正明

(毎日新聞、平成27年3月7日付、仲畑流万能川柳より)

(“遊びをせんとや生(う)まれけむ
  戯(たわぶ)れせんとや生(む)まれけん
  遊ぶ子どもの声聞けば
わが身さへこそ揺(ゆ)るがるれ” ―梁塵秘抄)

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