原発とは何か?-⑧

 東京電力の平成23年3月期の決算書だけでなく、それに付されている監査報告書も怪しげなものであった、-前回(「原発とは何か?-⑦」参照)述べたところである。



 平成23年6月28日付の監査報告書は、日本で最大手とされている新日本有限責任監査法人によるものだ。公認会計士だけでも2,685人(平成23年6月末現在)を擁する巨大な組織である。

 監査報告書は、“独立監査人の監査報告書”と銘打ってあるように、会社から独立した立場、つまり利害関係のない立場から作成されるものだ。中核をなす監査意見は職業会計人のプライドと職業倫理に基づいて表明されるべきもので、会社だけでなく他のいかなるところからの干渉も受けないものとされている。

 これが、公認会計士法に定められた監査人の基本的な立場である。

 ところが、このたびの監査報告書は監査人に課せられている基本的な立場、つまり独立性に疑義を抱かせかねない怪しげなものであった。

 何故か。私がこの監査報告書に疑念を抱いたのは何故か。

 監査報告書において表明すべき意見は次のように区分けされている。
+適正意見
++無限定適正意見
++限定付適正意見
+不適正意見
+意見不表明(意見差し控え)
 このうち最も多いのが1.の1.の無限定適正意見である。通常、適正意見といわれるもので、会社の決算書、つまり財政状態(B/S)と経営成績(P/L)が、ともに適正であるとするものだ。
 これ以外は全て、会社の決算書に何らかのキズがあることを対外的に表明するものである。
 まず、1.の2.の限定付適正意見は、一部分を除いては適正であるとするもの、2.の不適正意見は文字通り会社の決算書が適正なものではないとする最も厳しいものだ。3.の意見不表明(意見差し控え)は極めて特殊なもので、何らかの特殊な事情によって、十分な監査ができないような時に、監査人として責任ある意見表明ができない時になされる。
 いずれにせよ、1.の1.の無限定適正意見以外の意見が表明された場合には会社としては少なからぬダメージを受けることになる。
 ことに東京電力のような上場会社の場合には上場資格に関わってくる。不適正意見とか意見不表明のケースであれば、上場廃止に直結するおそれがあるからだ。

 私は東京電力の平成23年3月期の監査報告書は、無限定適正意見が出されることはまずないであろうと考えていた。その一ト月ほど前の5月20日に開示された決算短信では、期間損益が1兆2,000億円の当期損失とされてはいるものの、いまだ1兆6,000億円もの純資産があることになっており、私が想定していた大幅な債務超過にはなっていなかったからだ。
 上場資格を揺るがしかねない不適正意見とか意見不表明にまで監査人が踏み込むことはしないまでも、1.の2.の限定的適正意見に落ち着くものと想定していた。原発事故による損害賠償金が未計上であることを除き、適正であるといった意見である。
 ところがフタを開けてみると、意外なことにピカピカの適正意見であった。しかも、監査報告書をよく見ると、「追記情報」と称して何やらグダグダ述べられている。監査意見の4倍もの字数の「追記情報」なるものが盛り込まれていたのである。

(この項つづく)

 ―― ―― ―― ―― ――

 ここで一句。

“結局は責任とるの国民ね” -藤沢、アルプス。

(毎日新聞、平成23年8月31日付、仲畑流万能川柳より)

(政治家、役人、東京電力、このうちの誰も責任をとらなくても構わないと定めたのが、昭和36年に制定された「原子力損害の賠償に関する法律」と「原子力損害賠償補償契約に関する法律」。原発は、導入先のイギリス、アメリカから免責条項をつけられた、いわくつきの危険な施設である。このため、日本に原発が導入されると同時に、原発事故があった場合には、原発を運営している当事者に責任をとらせることなく、国民にツケを回すように巧妙に創り上げられた法律である。この法律を抜本的に改正しない限り、安全基準をいくらいじくってみても原発の安全対策は空回りするばかりではないか。)

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