脱税摘発の現場から-7

***7.脱税・冤罪事件の3つの原因(承前)

 日本国憲法は、納税の義務を定めている(憲法30条)と同時に、法の定めによらなければ税の徴収ができないこと(憲法84条)、及び、法定手続によらなければ刑罰を科することができないこと(憲法31条)を定めて、納税者の権利を保障している。

 ところが、現在の日本の税制では税理士法を含めて、納税者の義務に偏重しており、納税者の権利がなおざりにされている。今年になって遅ればせながら「納税者権利保護法(仮称)の制定に関する立法提言」が日本弁護士連合会から出されている始末である。

 私の考えるところ、弁護士会の試案はそれはそれで結構なことではあるが、一言でいえば絵に描いた餅であり、実効性に欠けている。税理士法が全く考慮に入れられていないからだ。税理士制度をキチッとしたものにしない限り、いくら「納税者保護法」を制定したとしても、法律が空回りするだけのことだ。つまり、わずか7万人の税理士のための税理士法ではなく、広く国民全体のための税理士法にしなければ意味がないということだ。逆に税理士法さえキチッとしたものにすれば、弁護士会の試案のうち、「第四租税救済」から「第六その他」まではともかくとして「第三租税手続」は不要である。

 税理士法に巣くっているガンは次の2つである。
 一つは、税理士会への強制入会制だ。ゲー・ペー・ウー(秘密警察-注を参照のこと)の役割を果している税理士会と日本税理士会連合会が国税庁の手先となって税理士締め付けのよりどころとしているものである。税理士が職業会計人として「独立した公正な立場」(税理士法第一条)から誰に気兼ねすることなく自由に発言し、自由に行動できるようにするには、まずこの強制入会制を廃止することだ。この強制入会制の弊害については、政府の規制改革委員会がしばしば取り上げているところであり、すでに平成12年12月12日の時点で、同委員会は、「強制入会制は本来廃止すべきである」とする見解を打ち出している。
 二つは、税理士業務の無償独占性(続・いじめの構図 -9参照)である。このシバリがあるために、税理士ではない一般の人が税金の世界に一歩も立ち入ることができないようになっている。例えば、一般の人が税金の相談を無料で行なったり、あるいは、税金の事例を調べようとして納税者に接しただけで、税理士法違反に問われ、逮捕されるおそれがある。
 実は、この無償独占性は税理士法の明文で定められたものではなく、国税庁の勝手な解釈によるものだ。法律ではない一行政機関の法解釈によって、懲役刑が用意されている税理士法違反に問おうとするもので、罪刑法定主義(憲法31条)に明らかに反している。直ちにやめるべきである。

 一般の人を税務行政に一切立ち入ることを許さないで、徴税側の都合と、半分ほどは税務署OBで占められている7万人の税理士の利権を守ることのみに主眼を置き、納税者を踏みつけにしているのが、現在の税理士制度であり、その最大の問題点は、この強制入会制と無償独占性である。
 税務行政の間違いを闇から闇へと葬(ほうむ)るのに、この2つのしくみほど都合のいいものはないのである。強制入会制と無償独占性こそ国税当局の下請け機関に堕している税理士会と日本税理士会連合会が、国税当局と一緒になって必死に守ろうとしているもの(「日税連を考える」[267] 断固として無償独占を死守すべき。がんばれ!)であり、国民一般の目線からすれば、税理士制度に潜むガン以外の何ものでもない。

(この項つづく)


 ―― ―― ―― ―― ――

 ここで一句。

“墓までの秘密はワシも二つ三つ” -大分、春野小川。

 

(毎日新聞、平成22年7月10日付、仲畑流万能川柳より)

(それほどのモノではなかったりして。)

***(注)ゲーペーウー(GPU、もしくはГПУ)
《Gosudarstvennoe politicheskoe upravlenie 》
《осударственное политическое управление 》
ソ連の国家政治保安部の略称。反革命運動の取り締まりを任務とした秘密警察。1922年に設置され、34年に内務人民委員部に吸収された。(Yahoo!辞書「大辞泉」(JapanKnowledge提供) ゲー‐ペー‐ウー【GPU】より引用)
「ゲーペーウー」は、キリル文字のロシア語読みのカナ表記。

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