100年に1度のチャンス -号外4

 笠信太郎氏の「花見酒の経済」(朝日文庫)から引用します。(「花見酒の経済」については、“100年に1度のチャンス -号外2”参照)

『 落語に「花見酒」というのがある。
 多くの読者は、先刻ご承知のことであろうが、花見に通る人出を見かけて、熊さんと辰つぁん、オレたちも花見をやろうじゃないかということになった。が、先立つものは金。その金がない。熊は一策を案じて、一つ花見をしながら金もうけをやろうじゃないかと持ちかける。通りの酒屋の番頭に掛けあって、灘の生一本を三升借りこんで、これを花の下にかつぎ込み、コップ一杯十銭で売ろうという名案を考え出した。客が二十銭銀貨を出したときにツリがないというのも気がきかないから、十銭玉一枚だけは用意して行こうと、周到ぶりもよろしく、樽をかついで、よいしょよいしょと出かけた。
 途中、うしろをかついでいた熊さん、匂いばかりをかがされて、とうとう我慢ができなくなり、
「おい辰、商売だから、ただ飲みはわるかろうが、銭を出したら、おれが飲んでも構うまい」
「構わねえとも、だれに売ったっておんなじだ」
 というわけで、一杯おれに売ってくんねえ、ホラ、十銭だよと、たしかに支払って、熊は一杯ぐっと飲みほす。売って十銭を手にした辰も、これを見ては辛抱しかねて、
「兄貴、おれにも一杯売ってくんねえか」
「いいとも、買いねえよ」
「じゃ十銭、払うよ」
 二人はみちみちこれをつづけ、やがて向島に来たころは、もうベロベロで、客がついたときは酒はとっくに売切れ。じゃ一つ売上を勘定しようじゃないかと、熊が財布をさかさにしたら、ジャラジャラとは出てこないで、十銭玉一つころげ出た。…』

 熊さんをアメリカとヨーロッパの金欠に陥っている消費者、辰つぁんをトヨタ自動車とでも置き換えてみたらどうでしょうか。生粋の江戸っ子の2人、こんな連中と一緒にされて気分を悪くしたりして。

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 ここで一句。

“評論家 ばかりで組閣 してみたら” -御坊、のれのれ。

(毎日新聞、平成21年3月28日付、仲畑流万能川柳より)

(文春4月号の広告に、“これが日本最強内閣だ”と大見出し。ナント、総理大臣にトヨタの奥田碩氏、財務大臣に小泉純一郎氏が擬せられていました。てっきりパロディの類であろうと思って購入して目を通してみたところさにあらず。パロディどころか大真面目でした。驚きましたね。念仏のように“改革”とグローバリゼーションを唱えて、日本だけでなく世界をも今のような混乱と不安に陥れた中心人物の2人。願い下げです。これ以上日本と世界をおかしくしないで下さい。)

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