100年に1度のチャンス -7

 日本の国全体の純資産は、2年ほど前の平成18年末で、

-2,716兆円。

現時点で考えてもそれほどの変化はないでしょうから、概ね2,700兆円と見ていいでしょう。

 この純資産2,716兆円の内訳を見てみますと、興味深いことが明らかになります。



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^cx” colspan=”2^(純資産2,716兆円の内訳)

^^

^1.一般企業

^rr^332兆円

^^

^2.金融機関

^rr^65兆円

^^

^3.政府

^rr^53兆円

^^

^4.家計(個人企業を含む)

^rr^2,191兆円

^^

^5.NPO法人

^rr^75兆円

^^

^cx^合計

^cx^2,716兆円

^^/

上の表で分かるように、4.の家計部門が純資産全体の80.6%(2,191兆円÷2,716兆円×100=80.6%)を占めています。つまり、日本の国富(National Wealth)の8割を家計部門が所有しているということです。企業会計的な言い方をしますと、日本国のオーナーは家計、即ち国民ということになります。
 日本国憲法では国民主権が高らかに謳われ、主人公は国民であるとされているにも拘らず、このところ国民が蔑(ないがしろ)にされているのではないかと思われることが多いようです。私達日本国民は改めて、名実共に日本国の主人公であることをしっかりと認識して、遠慮することなく言うべきことはキッチリと言って、政治や経済の流れが私達国民一般に向かうようにすべきでしょうね。
 それにしても、この10年以上もの長い間、事実上のゼロ金利政策によって、金利のほとんどが金融機関と企業部門に収奪されてきたにも拘らず、依然として国富の80%を家計(個人)が所有している事実は驚くべきことです。しかも、ブルネイとかアラブの一部の国々のように国富の大半をごく一部の王族などが占めているのではなく、広範囲な国民がそれぞれ自らの富を所有しているのです。

 日本における富裕層について調べたアメリカの証券会社の報告書があります(「アジア太平洋地域ウェルス・レポート2008(Asia-Pacific Wealth Report 2008)」。以下、ウェルス・レポートといいます)。
 ウェルス・レポートでいう富裕層(HNWIs:High Net Worth Individuals)とは、
+収集品
+消費財
+住居を除く不動産
を除く、金融資産の額が100万米ドル超の人のことです。更に、金融資産の額が3,000万米ドル超の人を、超富裕層(Ultra- High Net Worth Individuals)と呼んでいます。尚、金融資産(Financial Assets)には、商業用不動産、REIT、投資用不動産も含まれていますので、広く「投資可能資産」と考えていいものです。
 そこで示されているのは、日本の富裕層の数は151万人、総金額が3兆8,000万米ドル(1ドル=100円として、380兆円)です(平成19年末)。平均してみますと、1人当り2億5千万円となります。

 「経済計算」における家計の金融資産は平成18年末で1,572兆円ですから、ウェルス・レポートの算定時点と一年のへだたりがあります。一年後の平成19年末もさほど変らないでしょうから、その額を概ね1,500兆円()といたしますと、富裕層が所有する金融資産380兆円は、全体の25%ということになります。
 つまり、人口の1%強である151万人の人達が、個人の金融資産の4分の1を所有しているということです。このことは同時に、日本の人口は127百万人(平成17年10月)ですから、残りの125百万人ほどの人達が全体の4分の3にあたる1,120兆円を所有していることを意味します。1人当りにして、900万円となります。

 つまり、1億円以上の金融資産を持っている人が151万人存在し、それ以外の人達も平均すると1人当り900万円の金融資産を持っているということになります。これを富の偏在と見るか否かについては意見の分かれるところでしょうが、私は、富が偏在しているどころか、広範囲な国民に富が行き渡っているものと判断します。このようにウェルス・レポートを単独で読むのではなく、「経済計算」と合わせて読み込むことによって、このウェルス・レポートは日本の富裕層についての報告書であると同時に、富裕層から外れた4分の3の日本国民の健全な実態をも明らかにした報告書ともなっています。富裕層とされている人達以外の多くの国民が、しっかりとした金融資産を保有している事実は刮目(かつもく)に値するものです。

注) 金融資産(Financial Assets)については、ウェルス・レポートと「経済計算」とでは中味が違っています。ウェルス・レポートの金融資産は、「経済計算」の金融資産1,572兆円から負債385兆円を差し引き、住宅以外の不動産(987兆円の一部)を加えたものですが、住宅以外の不動産と負債とが概ね見合うものと見做して、1,500兆円としました。

(この項つづく)

 ―― ―― ―― ―― ――

 ここで一句。

“アメリカの ルールで世界 グッチャグチャ” -さいたま、影無。

 

(毎日新聞、平成20年11月23日号より)

(パックス・アメリカーナ(Pax Americana. アメリカの平和)の幻想。世界のどこかで戦争を仕掛けなければやっていけないヤクザな経済と、それを支え続けたグローバル・スタンダードというマヤカシのルール。)

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