裏金アラカルト 3

 アラブの地で、武道家として特異な人生を歩んでいたO.H.氏。この人物が持ち込んだ話は次のようなものでした。

+総額450億円のプラント建設事業(ある物資の年間100万トンの生産能力を持ったプラント)。
+450億円のうち、
++375億円は日本政府負担(円借款375億円)。
++75億円は受入国政府負担。
+受注会社
++本契約 - 日本の大手商社
++プラント製造 - 日本の大手メーカー
+発注元
++受入国政府の公社
++受入国の住宅建設省
+支払方法
++日本政府負担分は、「海外経済協力基金(O.E.C.F)」より、日本の大手商社に支払う(375億円)。
++受入国政府負担分は、受入国政府より、受入国の建設会社に支払われる(75億円)。
+日本のエイジェント料受領額と時期。
++19××年12月までに、日本政府円借款357億円の1パーセント、3億7,500万円。
 O.H.氏はこのプラント事業に関して、受入国の首脳の意向を受けて、日本側とツメの交渉を行っていました。いわば秘密代理人といった役回りです。この人物の報酬は、上記6.の1%(3億7,500万円)。ダミーとなる小さな会社(O.H.氏が社長の現地法人)が受入の契約当事者となり、大手商社から支払われるというのです。
 ところが、契約の最終局面で、受入国の首脳から、少なからぬ額のリベートが要求されており、その一部をあらかじめ支払わなければ契約にまでこぎつけないということでした。その金策のために私の知人に話があり、更にはこの知人から私に話の真偽のほどを確かめて欲しい旨の依頼があったのです。

 O.H.氏との面談によって、話の大筋は分かりましたので、一つずつ確認することにしました。
 O.H.氏が私に示したのは一通の覚え書でした。プラント契約の当事者である大手商社が、日本の小さな商社(仮にX社とします)に宛てたものです。大手商社の正式な用箋を用いて、英語で書かれていました。

「××プラントの件」

 貴社(X社のことです)の推挙により、我社(大手商社のことです)は、標記のプラント・プロジェクトにつき、下記の会社と100万トンの生産能力を有する××工場建設プロジェクト(場所、××××)に関してエイジェント契約を結んだ。
 ○○貿易株式会社(O.H.氏が社長の現地法人です)
………

 このような書き出しで始まっている覚え書は、○○貿易株式会社に、エイジェント報酬として(as the remuneration for their agency activities)、契約価格の1パーセント(an amount equivalent to 1 percent(1%) of contract price)を支払う旨が明記されていました。
 この文書のサインは、この大手商社の重機部部長(General Manager, Heavy Machinery Dept.)のM.H.氏。この文書に加えて、同様の内容のより詳しい覚え書がO.H.氏から提示されました。これは、それより5日前に作成されたもので、サインは部長ではなく部長の代りに(on behalf of M.H. General Manager, Heavy Machinery Dept.)次長(Assistant General Manager)がしていました。

 私は覚え書の真偽を確認するために、実際に覚え書を作成したこの大手商社の部長もしくは次長との面会をO.H.氏に求めたのです。

 ―― ―― ―― ―― ――

 ここで一句。

“感謝から 恨みに変わる 借りた金” -久喜、宮本佳則。

(毎日新聞、平成19年12月3日号より)

(金が仇(かたき)の世の中と、知らぬ訳ではないものを、ついつい義理に絆(ほだ)されて、やっとの思いで工面した、命とたのむ虎の子を、思わぬ仇(あだ)で返されて、改めて知る浮世かな。)

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