ゲームとしての犯罪 -17

私はかつて、ライブドアの上場に際してインチキ・ドラマが繰り広げられたことを明らかにし、バクチになぞらえて、『ホリエモン賭場』と形容したことがあります(『ホリエモンの錬金術-9』)。まさにライブドア事件とは、コドモのようないかさま師が、ゲーム感覚で取り仕切った丁半バクチであったと言えるでしょう。

***《ホリエモン賭場の面々》
^^t
^1.胴元
^堀江貴文
^^
^2.親分衆
^(株)光通信
グッドウィルグループ(株)
大和証券SBCM(株)
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^3.三下(さんした)
^宮内亮治
和井内修司
小飼弾
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^4.ショバ貸し
^東証マザーズ
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^5.ショバ目付
^港陽監査法人
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^6.客引(ポン引き)
^大和証券SMBC(株)
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^7.客人(カモ)
^一般投資家
^^/
これは上場時におけるものですので、あれから6年が経過した基準日時点において改めて見直してみますと、次のようになるでしょう。

まず、1.の胴元が堀江貴文氏であることは変わりません。堀江氏は、上場会社としては最後の定時株主総会となった昨年の総会で、一部の株主から突然、役員退任の要求が出されたのに対して、動揺を隠し切れず、「これまで株主の皆さんのことだけを一所懸命に考えてやってきたんですが」と涙声になって釈明していました。この人は、涙を流すくらいですから、そのように心底思い込んでいたのでしょう。
しかし、「株主の皆さん」というのは明らかに事実に反しています。正しくは「筆頭株主の私」とすべきところです。
たしかに、この6年間、ライブドアがどのようなことをしようとも全て、大株主である堀江氏のプラスになるように仕組まれていました。堀江氏以外の株主など、どうでもよかったのでしょう。既存の一般株主の利益を大きく損うシロモノであった、怪しげなMSCBの発行でさえ、堀江氏にとってはプラスになるものだったのです。
その胴元である堀江氏は、既に266億円(推定)のキャッシュを確保した上に、いまだ、ライブドアの筆頭株主として、1億8千万株の株式を所有しています。

2.の親分衆には、(株)光通信とかグッドウィルグループ(株)などが儲けをフトコロにして早々と姿を消し、大親分として(株)フジテレビジョンが出てきたり、自由民主党とか日本経団連まで出てきました。昨年『ホリエモンの錬金術』を連載している時点では、このインチキ鉄火場に、政権政党である自民党が身内として出てくることなど考えてもいませんでした。全くの”想定外”だったのです。これには私も、ブログ界のカリスマ的存在である「きっこ」さんの慣用句を拝借すれば、ビックル一気のみ、といったところでした
忘れてならないのは、800億円ものお金を提供して、インチキ・ドラマのスケールを拡大したリーマン・ブラザーズ証券会社です。さしずめ、世界をマタにかけた流れ渡世人といったところでしょうか。さすがにこの渡世人、Mrマリック顔負けのワザを見せてくれましたね。

3.の三下(さんした)はどうでしょうか。熊谷史人氏など、このたび摘発された人達が加わるでしょうし、当然、ライブドアに買収された会社の株主も加えなければなりません。現在ライブドアの社長をしている平松庚三氏が、(株)弥生の株式を手放していくらの利益を手にしたのか明らかにされてはいませんが、平松氏など真っ先に加えてしかるべきでしょう。

6.の客引(ポン引き)には、平成15年10月1日の80,000株、同16年4月23日の6,000,000株の公募増資の際の幹事証券会社も加えるべきでしょう。

7.の客人(カモ)について言いますと、ライブドア株をいじった全ての投資家(投機家、あるいはギャンブラーと呼ぶべきでしょうか)が損をした訳ではありません。すでに述べたように、1,400億円弱の利益を手にしている人達もいるのです。

30年余り前に、天下一家の会なるものを作り、多くの人達から2,000億円ものお金を集めた人がいました。ネズミ講の内村健一という人物です。
数理的かつ物理的には明らかに不可能であることを、もっともらしく言いつくろってお金を集めたわけですから、一般的な感覚では詐欺なのですが、刑法の詐欺罪の構成要件には該当しないということで、詐欺罪での立件が見送られ、結局は脱税(所得税法違反)で摘発され、破産するに至った事件です。
ライブドアは、会社の実態がほとんどないにもかかわらず、株価が無限に上昇するという幻想を演出したのですから、この点、ネズミ算が有限の人口のもとで無限に続くという幻想をふりまいた、ネズミ講の天下一家の会と驚くほどよく似ています。一攫千金を狙った人達が集まった点でも似ているかもしれません。ネズミ講でも多くの被害者が出た反面、胴元であった故内村氏だけでなく、少なからぬ人達が莫大な利益を手にしたことも事実なのです。

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ここで一句。

“パーマかけ ついたあだ名が バッハです” -長浜、月ヶ瀬和子

(毎日新聞、平成18年8月1日号より)

(若い時から能とか小唄にハマっている知り合いの女性。髪型はいつも、横山大観の「無我」の児そっくり。そのユニークなヘアースタイルについて、おそるおそる尋ねてみたところ、胸を張って『能の菊慈童(きくじどう)のカット!!』と一言。よくぞ尋ねてくれたと言わんばかりの対応に二度ビックリ。人さまざま、世の中にはいろんな方がいらっしゃいます。)

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