ゲームとしての犯罪 -1

パソコン・ゲームの影響もあるのでしょうか、近年、少年によるゲーム感覚の犯罪が多発しています。ごく普通の子供が、さしたる理由もないのに残虐な殺人をしたり、これまたごく普通の女の子が、オヤジ狩りと称して計画的に痴漢事件をデッチ上げたりしています。ともに、犯罪意識が全く欠けているようです。

ゲームならばリセットできるでしょうが、殺された人は生きかえることはありませんし、痴漢の冤罪事件に巻き込まれた人は、それこそ取り返しがつかないほど人生がメチャクチャになってしまいます。

一方、犯罪を犯した子供の方は、少年法という手厚い保護があるため、氏名とか顔写真が公表されることはありません。面白半分に痴漢事件をデッチ上げた女の子たちも、“被害者”ということで、それ以上の追及がなされることはありません。処罰に関しても、罪一等を減ずるどころか、更生を主な目的としている少年法によって、よほどのことがない限り、刑務所に送られることはありません。
つまり、犯罪を犯したとしても、彼ら及び彼女たちは安全圏内にいるのです。しかも、安全であることを誰よりもよく知っているのが彼ら及び彼女たちなのです。ゲームの相手を破滅にまで追い込んだとしても、自分達はほとんど傷つくことはありません。ゲームをリセットし、新たなゲームに興ずることが可能です。
このような考えは、少年犯罪の被害者側に顕著なものですが、第三者の立場から見ても決して否定することのできない現実です。

ライブドア事件を振り返ってみますと、このような少年犯罪と驚くほどよく似ていることが判ります。

まず、当事者がコドモであることです。これについては、一年前に友野雪子さんが女性ならではの鋭い直観力によってズバリ見抜いています。(「ホリエモンの錬金術-号外」で言及しました)。現時点で友野さんのお書きになった記事(“Will”2005年5月号所収)を読み返してみますと、その的確な指摘に改めて感心いたします。

次に言えることは、コドモが株式市場をゲーム感覚で弄(もてあそ)んだことです。バーチャルなパソコンゲームをいじっていたところ、いつの間にか現実の世界に結びついてしまったということでしょう。
IT企業としての実態がほとんどないにも拘らず、いくつかのゴマカシを組み合わせて、将来性をフーセンのように膨らませて遊んでいたら、実態と全くかけ離れた株価で上場ができてしまったのです。しかし、現実の株式市場は決してバーチャルな世界ではありません。真実の事業収益が冷徹に見据えられる、厳しい現実の世界なのです。

もともと実態を伴わない架空の事業計画しかなかったのですから、上場後はいきあたりバッタリの連続で、高い株価の背景とされたキャッシュフローなど実現できるはずがありません。上場後の一時期、ライブドアの時価総額(株価×発行済株式数)が50億円ほどになったことがありますが、このときの株価こそ、当時の株式市場が妥当であると判定した水準だったのでしょう。
ところが、時価総額が上場時の10分の1にまで下がったのですから、最も利害関係があるチャイルド・オーナーとしての堀江貴文氏にとっては、なんともガマンできないことだったのかもしれません。
ここで再び、株価をつり上げるためのバーチャルなゲームが机上で考えられ、現実の世界で実行に移されました。それが破天荒な一万分割という株式分割であり、決算のゴマカシ(粉飾決算)でした。まともな経営者であれば、頭の中で思いつくことはあってもとても実行に移すことなどできないトンデモないことです。ゲーム感覚のコドモのアソビだからこそ、できたことでしょう。
この結果、時価総額は5000億円へと、100倍にもつり上げられました。その後は、怪しげな外資であるリーマンブラザーズが、コドモの火遊びに800億円というお金を提供して、ドサクサまぎれに荒稼ぎをしたかと思えば、フジテレビは、コドモの脅しに屈して、ニッポン放送株を高値で買い取らせられたり、440億円もの増資に応じて、インチキ虚業集団の仲間入りをし、自民党にいたっては、小泉改革のシンボル、小泉チルドレンの代表格として堀江氏を選挙にかつぎ上げ、その虚像を更に拡大する役割を果しました。その結果、昨年の12月には、時価総額が8000億円までに膨らんでしまったのです。

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ここで一句。

“悪知恵も東大卒で質高く” -福島、式野美子。

 

(毎日新聞:平成18年4月18日号より)

(Mファンド-総会屋とか、乗っ取り屋として名を馳せた横井英樹氏とどこが違うでしょうか。いずれも、まっとうな商売ではありません。東大卒といってもピンからキリまで。数多くいる、質の高いピン・クラスはあまり目立ちませんが、キリ・クラスがとかく話題になるようですね。なんだかチルドレンの中にも、少しばかりトウの立った目障りなオバサンが一人がいたりして。)

 

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