ホリエモンと小泉純一郎 -2

共通する第3の点は、二人とも目的のためならば手段を選ばないところです。反社会的な行為であろうと犯罪となる違法な行為であろうとおかまいなしです。

ホリエモンについては具体的には私のブログで詳述した通りです。

小泉さんについては、他にもあるでしょうが、ごく最近の驚くべきケースについて触れることにします。

共同通信の配信記事でしょうか、「首相の執念で転進決意」との見出しのもとに、新潟県旧山古志村長の長島忠美さん(54)が、自民党の比例代表北信越ブロックから出馬するに至った経緯が生々しく報道されました(平成17年8月23日付、山陰中央新報)。
私はこの記事のウラを取ってはいませんので、その信憑性については分かりません。ここでは、この記事が真実であると仮定して話を進めます。尚、同じ趣旨の記事は、平成17年8月24日付の毎日新聞にも掲載されています。記事の分量は上記の記事よりも倍近くにも増えており、その経緯がより具体的に記されています。

“首相側は、長島氏に元外相田中真紀子氏(61)の地元新潟5区からの出馬を打診したが、長島氏は「仮設住宅で暮らす住民の近くにいたい」と固持していた。首相の要請で15日には飯島勲秘書官と会談。「比例単独でいい。特例で名簿も一位にする。」 破格の優遇措置にも長島氏は首を縦に振らなかった。
被災地への思いに加え、真紀子氏の父田中角栄元首相の支持者だった星野伊佐夫県連幹事長らが、比例とはいえ真紀子氏と同じ地盤での出馬には反対していたからだ。“(平成17年8月23日付、山陰中央新報)

粘着質の小泉さんは、これであきらめるどころか、一国の総理大臣としてはにわかには信じ難い行動にでることになります。

“しかし、翌16日夜、首相周辺から別の県連幹部に連絡が入る。「長島さんの出馬は首相自身の強い要望だ。…(首相の要請を断るならば)災害支援もこれまでのようにはできなくなる」と言われたという。驚いた県連側は対応を協議。説明を受けた長島氏は、16日深夜、出馬を決断した。”(同上、記事)

このスクープ記事には我が目を疑いましたね。総選挙の直前に、一国の首相によるこのように露骨な小細工が公表されるのは前代未聞のことだからです。
長島忠美さんといえば、壊滅的な打撃を与えた昨年10月の中越地震の被災地の村長として、地域住民の先頭に立って粉骨砕身、まさに献身的な活躍をしたヒーローです。地元住民の目線に立った働きぶりは、連日のようにテレビを通じて全国に放映され、その後の被災地復興のシンボル的な存在として全国的にもすっかり有名になった方でした。もちろん新潟5区での知名度は抜群です。

著名人好きの小泉さんがこの長島さんに白羽の矢を立てたのは必ずしも非難されることではありません。
問題なのはそれから後の行為です。自民党の比例単独の候補で、名簿登載順位一位といえば、投票前から当選は確実です。破格の扱いといえるものです。
小泉首相サイドからこのような別格の優遇措置をもちかけられた長島さんは、それでも首相からの立候補要請を断り続けたといいます。
毎日新聞の記事は、この間の事情を更に詳しく伝えています。小泉首相のかたわらにいる飯島勲秘書官が、いつでも小泉さんと電話をかわることができる状態で出馬の要請をしたと報じ、更には首相周辺の人物として飯島秘書官のほかに、武部勤幹事長の名前が登場し、新潟県の泉田裕彦知事にも圧力をかけたことまで報じているのです。

更に毎日新聞は、

“長島氏は「電話では失礼だから」と官邸に出向き、飯島秘書官と面会、不出馬を改めて伝えた。”

と、長島氏の固辞の意思が堅かったことを伝えています。
中越地震の復興も道半ばであり、いまだに仮設住宅に暮し、程なく厳しい雪国の冬を迎えようとしている多くの被災者のことを思いやると、とても国政選挙になぞ出る気がしなかったのでしょう。
そのような微妙な立場の長島さんに対して、小泉さんは、あろうことか、自分の言うことを聞かないと災害援助の予算を打ち切ると通告したというのです。

なんということでしょうか。一国の首相が、大地震によって家屋敷をはじめ土地まで失った社会的弱者に対して、自分の言うことを聞かなければ、国の財政支援を打ち切るというのですから。仮にそのような事態になれば、中には飢え死にしたり、凍え死にする人も出るでしょう。いや、それ以前に、国家社会から見捨てられたことを気に病んで、自ら命を断つ人も出てくるかもしれません。
小泉さんは、かけがえのない子供とか孫を人質にとって、金品を脅しとろうとする身代金誘拐犯と同類です。

内閣総理大臣といえば、言うまでもなく行政府の長です。各省の大臣の任免権を持つことによって、事実上国の予算の策定と執行の権限を持っています。
三権分立が建前の日本にあって 予算の権限を持っている行政府の長たる者が、立法府の構成員である国会議員を選ぶ国政選挙において、その権限をちらつかせて、政治的に利用したのです。しかも、新潟県内の市町村に対して絶大な権限をもっている新潟県知事に直接電話して圧力をかけたというのですから念が入っていますね。
典型的な利益誘導(この場合はあるいは逆利益誘導といったほうがいいかもしれません)であり、政治家の行為としてはもちろん、法の建前からいっても決して許されることではありません。

この小泉さんの行為が犯罪を構成するかどうかは分かりません。
ただ、国とか県の予算の執行権をちらつかせて、つまり自分の言うことをきかなければ国とか県のお金(小泉さんのお金ではなく、国民の税金です)を旧山古志村には回さないと申し向けて、危機に瀕している社会的弱者を脅して自分の意に従わせようとするのは、単なる利権政治家よりも更に悪質です。
お金とか利権には縁遠い政治家と一般には誤解されている小泉純一郎という人物の真の姿を具体的に浮き彫りにするエピソードですね。クリーンどころか、もちまえの非情さを如実に示す利権政治屋の生々しい姿が露呈されているのです。

かくて、渡辺淳一さんのネーミングによれば、ネオヤクザの小泉純一郎さんは、国のお金を自分のもののように勝手気ままに操って、郵政民営化というゴマカシの公約を掲げて、多分に私怨にもとづく宿敵を叩き潰すために、ホリエモンを目玉とする舎弟や、小池百合子さんをはじめとする小泉さん好みの姐御を刺客として各地に放ち、縄張りの全国制覇を狙っているのです。
事実は小説よりも奇なり、この諺を地でいくドタバタの悲喜劇が、各地で劇画のように繰り広げられており、ネオヤクザ小泉純一郎率いる自民党が仕掛けた仁義なき戦いはどのような結末を見るでしょうか。
小泉さんは、なりふりかまわず三文役者を次から次へと繰り出しています。サプライズ戦法という名の目くらましです。今回の選挙を称して、“猫だまし選挙”と言っている人もいるほどです。日々刻々と状況が猫の目のように変わっていくのは、私の大好きな韓国ドラマ“チャングムの誓い”をしのぐものがあり、目が離せませんね。

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ここで一句。

“タケナカにタケベが生えてヤブの中” -河内長野、どこのだれ。

 

(毎日新聞:平成17年8月25日号より)

(しょぼくれた無党派層(私のことです)のつぶやき-“ヘンジンにココロとられて腹話術” “ペコペコとにわか仕立てのお辞儀して” “ヘンジンに、にわかマドンナ、ホラエモン” “ペコペコとニコニコいつまで続くやら”。)

 

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