冤罪を創る人々vol.69

2005年07月05日 第69号 発行部数:387部

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「冤罪を創る人々」-国家暴力の現場から-

日本一の脱税事件で逮捕起訴された公認会計士の闘いの実録。
マルサと検察が行なった捏造の実態を明らかにする。
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山根治(やまね・おさむ)  昭和17年(1942年)7月 生まれ
株式会社フォレスト・コンサルタンツ 主任コンサルタント
http://consul.mz-style.com/

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●(第六章)10年間の財政の推移

一.財政白書

財政という言葉は、主に国又は地方公共団体の経済活動の意味で
用いられることが多いが、時に個人の経済活動もしくは経済状態を
現わす言葉としても用いられる。いずれの場合においても、財政は
全ての活動の基盤であり、全ての活動の結果は財政に反映される。
私にとって激動とも言える10年間、私の活動を物理的に支えた
のは、間違いなく私の財政であった。同時に、私の活動の結果は、
何らかの形で私の財政に反映されている。
この10年間を回顧するにあたって、自らの財政にメスを入れ、
分析してみることにした。客観的に自らを見つめ直すためには、不
可欠であると考えたからである。
私は自らの財政分析を通して、私の10年の活動の一端を浮き彫
りにする。いわば、山根治の財政白書である。

二.緊急時の対応

(1) 銀行取引

1、 平成5年9月28日にマルサの捜索を受けるまでは、銀行との
取引は極めて良好であった。
短期の運転資金だけでなく、長期の投資資金についても、私が希
望すれば容易に融資を受けることができた。
しかし、マルサの家宅捜索を受け、私が犯則嫌疑者の烙印を押さ
れてからは様相が一変した。既存の融資については、早期の弁済を
求められることまではなかったものの、新規融資の道は閉ざされた。
従って、資金繰りは全て私の範囲内で行なうことを余儀なくされ
たのである。もっとも、私の場合、銀行からの融資は専ら先行投資
資金に限られており、運転資金については例外的なものであったた
め、事務所の資金繰りに直ちに影響することはなかった。

2、 取引銀行以外の銀行についていえば、従来、少なからぬ人数の
人達が親しそうに私の周りに集まって来ていた。それが、一部の例
外を除いて、一夜にして、他人になった。ことに、平成8年1月26
日に私が逮捕されてから後は、銀行マンの変身ぶりは見事という他
はなかった。

(2) 収支の見直し

1、 私の収入は、大別すると2つに分けることができる。
一つは、経常収入であり、事務所の日常的な活動にもとづく収入
である。これは、私の指揮監督のもとに10名程のベテラン職員が
稼ぎ出すものであり、主に事務所の運営経費に充当されていた。
今一つは、臨時収入であり、私の戦略的な活動にもとづく収入で
ある。これはほとんど、私一人で稼ぎ出していたものであり、大半
が蓄財に充当されることなく、将来の戦略的な活動にそなえて投資
もしくは費消されていた。

2、 収入に関して、私は、自らの信用の低下等によって大幅に減少
することを予測した。減少の見込みに応じて、いくつかのシミュレー
ションを実施し、経費についてもゼロベースで考え直してみた。
幸いにも経常収入については特段の落ち込みはなかったので、そ
れに対応する経費については一切手をつけなかった。
経費の大幅見直しを実施したのは、私が戦略的に取り組んでいた
研究と情報収集に関連する分野である。それらに充当していた臨時
収入が大幅に低下すると考えたからだ。
マルサのガサ入れの後、順次見直しを進め、その後私が逮捕され
てからは、資金繰りの建直しが急務であったので、当面の間、当該
部門を閉鎖することにした。
この措置によって、私の収支勘定は月に250万円改善された。

3、 その他の経費についてはこの10年の間、私の交際費関連の支
出は限りなくゼロになった。
その他の収入については、所有する不動産物件の活用によって、
不動産収入が増加し、長い間マイナスであった私の不動産所得が、
プラスに転じた。
この2つの要因によって、私の収支勘定は、月に100万円改善
された。

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●山根治blog (※山根治が日々考えること)
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「ホリエモンの錬金術 -16」より続く
http://consul.mz-style.com/item/324

・ホリエモンの錬金術 -17

前回私は、ホリエモンの錬金術のカラクリ、つまり、ホリエモン
の莫大な資産とされている持株の価値増殖のメカニズムを明らかに
しました。
それは、単価の低いものに、単価の高いものを加えていき、ゴチャ
まぜにして単純に平均すれば、当初の単価の低いものの評価が自動
的にアップするというだけのことで、私は仮に、「平均原価法によ
る富の移転」と名づけました。
そこでこのゴマカシの富の移転の構図を念頭において、絵図師
(えずし)ホリエモンの想定している究極の絵図(えず)を“想定”
してみます。

堀江さんは、ライブドアという会社をどんどん大きくしてきまし
た。しかし、利益を伴った事業が拡大してきた訳ではありません。
やみくもに買収とか合併を繰り返して、連結決算の上からはいかに
も急成長している企業グループのように見せかけているだけです。
このような急成長企業という装いをした上で行なってきたのが、
カタギの企業人であれば思いつくことはあっても、実際には行なわ
ないような公募増資等でした。株式市場から現時点までにかき集め
たのが、1,700億円程の金です。
この1,700億円の内訳を改めて見てみますと、

1.第三者割当増資
a.平成11年9月 … 6億円
b.平成17年5月 … 440億円
2.公募増資
a.平成12年4月 … 56億円
b.平成15年10月 … 48億円
c.平成16年4月 … 358億円
3.MSCBの発行
a.平成17年2月 … 800億円

と、どれ一つとしてカタギの会社であるならば、たとえ思いついた
としても実行に移すことをためらってしまうような資金調達方法に
よるものです。
このような、いわばイカガワシイ方法で調達した資金が、ホリエ
モンの富の源泉となっているのです。

お金に色目はないと言われます。どのような手段で手に入れたお
金であっても、一応は通用するからです。
しかし、一方で、色のついたお金とか、汚れたお金(ダーティ・
マネー)という言葉もあります。盗んだり、騙したり、あるいは麻
薬の取引をしたり、売春婦のピンハネをしたりといった犯罪行為に
よって得たお金のことです。
あるいは、犯罪行為ではないまでも、人の弱みにつけ込んであく
どい金儲けに走る高利貸しのお金なども、広い意味ではダーティ・
マネーということがあります。
犯罪行為によって得たお金は、カタギの世界ではまともには通用
しませんので、お金の洗浄(マネー・ロンダリング)が行われるこ
とがあります。闇の資金を表舞台にデビューさせるのです。勿論、
マネー・ロンダリング自体、犯罪行為であることは言うまでもあり
ません。

堀江さんの主な資産はライブドアの株式220百万株です。340
円の株価で計算すると、748億円、清算価額で計算すると369
億円(「ホリエモンの錬金術-16 表3」)となり、いずれにせよ
莫大な資産です。

(表3) ホリエモンの持株の「清算価額(純資産)」の推移
http://consul.mz-style.com/item/324#c

この資産は、既に詳しく述べてきたように、堀江さんが様々な手
段を駆使し、株式市場を騙して創り上げたものです。
このように考えれば、彼の資産は、少なくとも広い意味では“汚
れた”資産であると言っていいでしょう。ダーティ・マネーならぬ
ダーティ・シェア(汚れた株式)といったところです。
堀江さんの数々のいかがわしい行為が犯罪行為として訴追され立
件されるかどうか判りません。又、ライブドアという会社が今後ど
のようになっていくのか私には判りません。私にはどうでもいいこ
とです。
いずれにせよ、堀江さんの持株がダーティであり、汚れているの
が気になるならば、洗浄してクリーンにすることを考えるかもしれ
ません。
その際、株式市場で普通に売り抜けてクリーンにすることは難し
いでしょう。
ではどうするか。
方法は二つあります。

一つは、TOBなどによってライブドアが誰かに買収されること
です。この春のフジテレビとの空騒ぎの最中に、堀江さんが冗談半
分に、「誰か会社を買収してくれないかなあ」と言っていたようで
すが、冗談ではなく本心かもしれませんね。
買収された場合には、現在の株価に対応する700億円前後の資
金、もしくはそれに相当するカタギの会社の株式が堀江さんの手許
に残ります。
二つは、上場廃止など何らかの理由によって会社が解散に追い込
まれることです。
この場合には、清算価額に対応する300億円前後の資金が彼の
手許に残ります。

絵図師ホリエモンの描いている絵図の行きつくところは、案外こ
んなところではないでしょうか。

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ここで一句。

“流行語今年はキマリ想定内” -四街道、大日去来。
(毎日新聞:平成17年5月1日号より)

(想定内。コドモが負け惜しみに口にするセリフ、「そんなこと、ボ
ク、知ってたもん!!」)

 

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