司馬遼太郎と空海 -その1

 国民的な作家であった司馬遼太郎さんがお亡くなりになったのは、平成8年2月12日のことでした。行年73歳。

 司馬さんの訃報は、当時勾留されていた松江刑務所拘置監の房内放送によって知りました。



 私は、司馬さんとは面識もないし、著作をそれほど読んでいたわけでもありません。ただ漠然と「気にかかる人が存在する」位の思いを抱いていたのでした。

 平成8年4月2日に差し入れのあった文芸春秋3月号に、たまたま司馬遼太郎氏の追悼特集がなされていました。

 急にこの人の作品が読みたくなり、追悼号に列挙してあった作品の中からいくつかピックアップし、差し入れしてもらうことにしました。



 房内で読んだのは次の7冊です。1.俄(にわか)<浪華遊侠伝> (※3/22 4/19 4/26 5/10)
2.酔って候 (※3/22 4/1 4/5 4/16)
3.故郷忘じがたく候 (※3/22 4/8 4/16 4/25)
4.最後の将軍 (※3/22 3/22 4/29 5/5)
5.果心居士の幻術 (※4/10 5/8 5/17 5/24)
6.言い触らし団衛門 (※4/10 4/19 4/26 4/30)
7.われもまた剣法者 (※4/19 4/30 5/10 5/21) (注) タイトルの後の各日付は(※差入 仮出 入房 領置)された日です。

 拘置所の一日は、朝7時の起床から始まります。朝7時から夕方6時までの11時間、原則として横になって寝そべったり、壁にもたれかかることは許されていません。正坐、または安坐(ひざを組んで坐ること)をして、小机に向っていなければなりません。

 ただ、この間一回だけ、午睡(ごすい-昼寝のことです)が許されており、昼食後しばらくしてから一時間強、フトンを敷いて横になるのが許されています。

 私にとってこの午睡が何よりの憩いのひとときでした。本当に昼寝をしてしまいますと、夜眠れなくなりますので、ゴロリと横になって気分転換のための本を読むことにしていました。

 司馬さんの7冊は、読んで楽しく、午睡時の気分転換には最適でした。

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