冤罪捏造の犯人は国税庁長官だった!!-⑦

***4.冤罪捏造の第四ステージ(その4)

 査察調査は、一般の税務調査とは全く異なる、いわば水と油のような存在であるにもかかわらず、査察調査の現場では一般の税務調査の手続きが堂々と加味されて実施されていた。これこそ、デタラメな査察調査が横行した最大の理由である。前回述べた通りである。



 ごく最近判明したことがある。

 私達公認会計士には会計士登録後も毎年、実務研修(CPE研修)を受けることが義務付けられている。倫理、監査、会計、税務、経営の各分野から、合計40単位の履修をしなければならない。実務家にとって正直、かなりうっとうしいものだ。エコノミストとして活躍している勝間和代さんのように、このCPE研修がいやで、会計士登録を抹消した人もいるほどである。

 かく言う私も、このような実務研修を受けなければ会計士業務ができないようであれば、会計士登録の抹消を真剣に考えたほどだ。

 会計士は会計の職人(プロ)である。どの分野の職人も同じように、職人である以上自らの能力を高めるために、誰に言われることなく研鑽(けんさん)するものだ。他人から強制されて研修しなければならないというのは、職人のプライドをいたく傷つける。屈辱以外の何ものでもない。職人の矜持にかかる問題であり、余計なお世話である。

 平成28年度のCPE研修(税務)の履修教材(2単位)に、次のような標題のものがあった。

「国税通則法の実務上の問題-税務調査と更正・決定の法理及び実務上の問題点」

 これは一体何だ!!

 これまで、税務調査については、税務当局の偽りの説明がまかり通っており、法律的に真正面から取り上げたのは、故北野弘久先生による労作(「質問検査権の法理」)だけといってもいいくらいであった。ただ北野先生の所論も、真摯(しんし。他事を顧みず、一生懸命やる様子。まじめ。-新明解国語辞典)な労作ではあったが、残念ながら、不正監査の実務家の視点に欠けていたきらいがある。
 北野弘久先生は、税務職員によるデタラメな不正監査(税務調査)の実態をご存じなかったのではないか。デタラメな不正監査が例外的になされていたのではなく、国税庁長官の号令のもとで全国一律にデタラメな税務調査がなされていた現実をご存じなかったのではないか。

 税務調査というのは国家権力による納税者に対する不正監査であり、その不正監査は厳正な基準と手続に基づいて行われなければならない。当然のことである。しかし、実際の税務調査においては、厳正な基準や手続きなどどこ吹く風とばかりに、勝手気まま、かつ恣意(その時々の思いつき。-新明解国語辞典)的な調査がまかり通っていた。
 単に恣意的な税務調査がまかり通っていただけではない。公務としての税務調査が数々の犯罪行為を伴うものであったことはこれまで当ブログでしばしば述べてきた通りだ。
 このデタラメな税務調査の実態を象徴的に現しているのが、料調(国税局資料調査課による税務調査)である。料調方式は、ミニ・マルサとも称されており、一般調査と査察調査とを同一の税務職員が行うものだ。違法であるばかりではない。それ自体犯罪行為(公務員職権濫用行為)であり、国家公務員としてしてはならない行為だ。それが当然のこととして堂々となされてきたのが日本における税務行政の偽らざる実態だ。
 この料調方式を手本として、一般の税務調査は査察調査を加味して行なわれ、査察調査は一般の税務調査を加味して行われてきた。いずれも、れっきとした犯罪行為だ。現に今も、国家公務員たる税務職員によるこの種の犯罪行為が繰り広げられている。

 ここでCPE研修(税務)の履修教材に立ちかえる。この教材は、「更正と決定の法理」に関連付けて真っ正面から税務調査を論じているものであったので、私は一縷(いちる。一本の細糸の意。わずかにつながっているもの、かすかに伝わってくるもの、を極微(ごくび)と形容する語。-新明解国語辞典)の望みを抱いて、履修してみた。
 しかし、私のかすかな期待は見事に裏切られた。この教材は、これまで税務当局が一般の税務調査と査察調査とをゴチャマゼにしてきた犯罪的実態をもっともらしく合理化し容認しているものであった。いたるところにインチキ話法である「東大話法」が駆使されているデタラメな教材であった。

 一体誰がこんなデタラメを喋っているのか。監査と会計のプロである会計士に対して、研修と称してデタラメを教え込もうとしているのは誰か。

筑波大学名誉教授 品川芳宜

がその人物である。この人物の経歴は次の通り。ノン・キャリアの出世組であり、国税庁お抱えの似而非(えせ。外形は本物と似ているが、実質はずっと劣る。-新明解国語辞典)学者、かつ似而非(えせ)弁護士だ。

****品川芳宜(しながわよしのぶ)
【経歴】
-1941年 9月16日生まれ
-1961年 4月 東京国税局(普通研修生)採用
-1968年 4月 慶応義塾大学経済学部卒
-1973年 7月 税務大学校租税理論研究室助教授
-1974年 7月 三次税務署長
-1978年 7月 (出向)法務省訟務局租税訟務課長補佐
-1984年 7月 東京地方裁判所調査官
-1986年 7月 税務大学校教育第二部長
-1988年 7月 国税庁直税部資産評価企画官
-1991年 7月 国税庁徴収部徴収課長
-1992年 7月 国税庁徴収部管理課長
-1994年 7月 高松国税局長
-1995年 7月 筑波大学社会科学系教授
【現職】
-早稲田大学大学院客員教授(専任)
-筑波大学名誉教授
-日本税理士会連合会部外理事、弁護士
-(株)野村資産承継研究所(NIEP)理事長

 それにしても、日本公認会計士協会はよくも、このような国税庁の回し者によるデタラメな言い分を会員である会計士の必修教材として選んだものである。
 会計士は、日本における監査の唯一の専門家だ。税務調査が不正監査の一類型である以上、会計士の専門分野である。会計士協会は、監査の何たるかを知らない似而非(えせ)学者の戯言(たわごと)を真(ま)に受けて、あろうことか全会員に教材として提供したのである。会計士協会は、事実関係を精査した上で、直ちにしかるべき対応をすべきではないか。

(この項つづく)

 ―― ―― ―― ―― ――
 ここで一句。

 

”ゴーン氏はMr.ビーンときかぬ父” -久喜、赤毛のアン

 

(毎日新聞、平成29年2月17日付、仲畑流万能川柳より)

(顔はソックリ、中身はスッポン、月ではない。片や似而非(えせ)経営者、片や真のコメディアン。)

 更に一句、“アッキード事件”にからめて。

“籠池(かごいけ)や 主(ぬし)は悪(わる)よと鴻池(こうのいけ)”-東京都、鈴木英人

 

(朝日新聞、平成29年3月4日付、朝日川柳より)

(選者の評に曰く、「代官独演の図」
 筆者の評に曰く、「いや、鴻池サマほどでは。」)

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