民主党政権の置き土産-偽りの査察調査-①

 民主党は、昨年末の衆院選敗北に続いて、先ほどの参院選でも惨敗を喫した。大方の見るところは、負けるべくして負けたといったところだ。これについては勿論異論はない。その通りである。

 ただ何故負けたのか、その原因については、あるいは次のようなことではなかったのか。

 つまり、4年前の衆院選で民主党が大勝し政権の座につくことができたのは、小沢一郎氏をはじめ、鳩山由紀夫氏、菅直人氏がいたからであったが、いったん政権の座につくや、この3人を、邪魔者だといわんばかりに次から次へと民主党から追い出したり、窓際においやってしまったことだ。



 残ったのは、万年野党をかこっていた頃のショボクレたメンバーだけになってしまった。

 松下政経塾という、いわば隠れ自民党員養成機関の出身者と、労組べったりの旧社会党系の化石のような人達だ。これでは55年体制の悪い部分だけが残ったことになり、デタラメな自民党以上にデタラメな政党に堕したことになる。民主党がマニュフェストに掲げたことのほとんどが実行できなかった所以(ゆえん)である。

 そのために国民から愛想を尽かされたのである。選挙に負けて当然だ。

 では、3年半に及ぶ民主党政権には評価すべきものが全くないのか、といえばさにあらず。自民党政権が続いている限り、まず起らなかったことが起ったのである。民主党政権の、いわば置き土産である。それは一体何か?

 1955年の保守合同によって自由民主党が誕生。それ以来、自民党はキャリア官僚の手先になって、立法・司法・行政の全てにわたって、自分達の私利私欲のために日本国と日本国民とを思うままに支配し、食いものにしてきた。自民党と一握りのキャリア官僚による日本国の統治である。
 憲法で保障されている三権分立など単なる建前にすぎないものであった。司法について言えば、裁判官にせよ検察官にせよ、一部のキャリア官僚の手の平で転がされているだけであった。人事による操り人形である。
 立法については、特定の利権をバックにして当選した国会議員がのさばり、ごく一部の利益を優先する法律がゴリ押しされた。行政にいたっては、キャリア官僚の巣窟であり、言わずもがなである。
 これが官僚統治の実態であり、明治維新以来、延々と続いてきた日本政治の現実だ。
 その典型が、税にかかる立法であり、司法であり、行政だ。

 インナー。自民党の税制調査会を牛耳っていた一握りの黒幕のことだ。非公式幹部会議と称されているものである。そのインナーを陰で操っていたのは、言わずと知れた大蔵(財務)官僚だ。
 山中貞則(1921-2004)。「ミスター税制」、「ヤマサダ」のニックネームを持ち、戦後日本の税制を、文字通り好き勝手に操ってきた強面(こわもて)の人物だ。その後に加わった相沢英之(元大蔵事務次官、元衆議院議員)と並んで、インナーを象徴する税務マフィアである。
 税務マフィアが税制をもてあそんだ結果、税制が恣意的に一人歩きし、立法当事者にしか分からないような複雑怪奇なものとなった。専門家である税理士でさえ容易に理解ができない、摩訶不思議な法文・通達のオンパレードになったのである。
 当然のことながら、徴税の現場では税務当局と納税者との間で多くの食い違いが発生し、トラブルが頻発した。
 ところが、これまでは納税者の義務を中心に税制が組み立てられており、納税者の権利については蔑(ないがしろ)にされてきた。つまり、国民から税を取り立てることに重点がおかれ、納税者の権利についての法律はないに等しい状況であった。税務当局とのトラブルの大半は、問答無用とばかりに、納税者が一方的にねじ伏せられてきた。これが徴税現場の実態であった。

(この項つづく)

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 ここで一句。

“「今でしょう」だけでモテはやされる人” -坂戸、グランパ

(毎日新聞、平成25年7月27日付、仲畑流万能川柳より)

(モテはやされるのも、今「だけ」でしょう。)

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