400年に一度のチャンス -5

***5.日本は破産しない-(5)財務省の戯言(たわごと)②

 「基本方針2006」の決定的ともいえる問題点は、その16ページに示されている。“2007年度~2010年代初頭における歳出改革”と題され、「2011年度に国・地方の基礎的財政収支(プライマリー・バランス)の黒字化」を目標としたものだ。これは、「基本方針2006」の財政健全化第Ⅱ期(2007年度~2010年代初頭)とされているものである。

 ちなみに、財政健全化第Ⅰ期(2001~2006年度)は小泉内閣による改革とされているのであるが、そのほとんどが改革とはほど遠い改悪であったことは衆知である。ことに医療・社会保障については下手に制度をいじくり回したためにその後に大きな禍根を残すこととなったいわくつきのシロモノだ。なかでも、「百年安心」と銘打ってなされた年金制度の改革は、百年どころか一年もたたないうちに欠陥が露呈するオソマツなものであった。

 また、バブル経済の跡始末と称して多額の公的資金を投入した結果が国債の驚異的な増加であった。現在の国債等900兆円の、実に3分の1に当たる300兆円が、わずか5年余りの小泉政権下で作り出されたことを忘れてはならない。この事実は、バブル経済の跡始末をしたのではなく、国債という負の遺産を残すことによって、問題を先送りしただけであることを示している。小泉政権とその亜流政権のもとでなされた「改革」が一体何であったのか、改めて検証すべきであろう。

 財政健全化第Ⅱ期は次の表で要約されている(P.16)。
****後5年間の歳出改革の概要
^^t
^cx” rowspan=”2^項目
^cx” rowspan=”2^2006年度
^cx” colspan=”2^2011年度
^cx” rowspan=”2^削 減 額
^cx” rowspan=”2^備  考
^^
^cx^自然体
^cx^改革後の姿
^^
^社会保障
^rr^31.1兆円
^rr^39.9兆円
^rr^38.3兆円程度
^rr^▲1.6兆円程度
^
^^
^人件費
^rr^30.1兆円
^rr^35.0兆円
^rr^32.4兆円程度
^rr^▲2.6兆円程度
^
^^
^公共投資
^rr^18.8兆円
^rr^21.7兆円
^rr^16.1~
17.8兆円
程度
^rr^▲5.6~
▲3.9兆円
程度
^・公共事業関係費▲3%~▲1%
・地方単独事業(投資的経費)▲3%~▲1%
^^
^その他分野
^rr^27.3兆円
^rr^31.6兆円
^rr^27.1~
28.3兆円
程度
^rr^▲4.5~
▲3.3兆円
程度
^・科学技術振興費+1.1%~経済成長の範囲内
・ODA▲4%~▲2%
^^
^cx^合計
^cx^107.3兆円
^cx^128.2兆円
^cx^113.9~
116.8兆円
程度
^cx^▲14.3~
▲11.4兆円
程度
^cx^
^^
^
^ll” colspan=”3^要対応額:16.5兆円程度
^
^
^^/
-(注1)上記金額は、特記なき場合国・地方合計(SNAベース)。
-(注2)備考欄は、各経費の削減額に相当する国の一般歳出の主な経費の伸び率(対前年度比名目年率)等及び地方単独事業(地財計画ベース)の名目での削減率を示す。
 この表の結論は次の通りである。
+目標を達成するために必要となる金額は16.5兆円。
+1.のうち、14.3兆円~11.4兆円については歳出削減によって対応。
+不足分は2.2兆円~5.1兆円。
+1.~3.の見込のものとで、プライマリー・バランスの均衡を図る。
 つまり、プライマリー・バランスの黒字化を図るには、16兆円ほどが必要であるが、徹底的な歳出の削減を図ったとしても2兆円から5兆円不足する。この不足分についてはどうしても歳入の増加(増税)に頼らざるを得ないと言いたいようである。

 そこでその内容に立ち入って検討を加えることとする。
 この表では、社会保障以下4つに区分けして概略が示されている。それぞれが怪しげなシロモノではあるが、とりわけ怪しいのが人件費である。

 表から読み取れるのは次のようなことだ。

『人件費は2006年度で30.1兆円、そのまま改革せずに放っておく(自然体)と、5年後の2011年度には、5兆円近くも増えて35兆円になる。そこで改革を行って2.6兆円程削減して、32.4兆円ほどに持っていく。』

 するとかなり人件費が削減されるように見えるが、なんのことはない、実際には人件費は増大しているのである。「改革後の姿」とされている2011年度が32.4兆円であるから、2006年と比較して、2.3兆円も増えているのだ。
 ここで2つの問題点が明らかになってくる。
 一つは、放っておけば増大を続ける人件費の存在だ。不況の中で民間が人員整理をしたり、正社員から臨時雇用に切り替えたりして人件費の削減に懸命になっているのに、これまでの公務員の人件費は右肩上がりに増大し続けてきたということだ。人件費こそ、プライマリー・バランスを崩してきた最大の要因であるにも拘らず、これまでは全く手をつけることなく野放し状態であった。親方日の丸である。
 二つは、表向きは公務員人件費の改革と言いながら、その実、一人当りの人件費(平均人件費)が増大するようになっていることだ。この5年間で公務員の人員を削減すると言っている(P.28の人件費・定員の推移)のに人件費の総額が2兆円余りも増大するようになっているからだ。ゴマ化しである。

 この「基本方針2006」は小泉政権の時に策定されたものだ。このように公務員だけが肥え太っていくプランが、改革の名のもとに作られていたことは国民にとっては驚きであるが、それ以上に驚くべきことは、公務員人件費の2割削減を公約に掲げている民主党政権下においても「基本方針2006」がそのまま踏襲されていることだ。この事実を示すのが「日本の財政関係資料」である。この中では、公務員人件費の改革と称してわずかに1ページ(P.54)割かれているだけで、その内容は「日本の財政を考える」で示されているものの単なる延長である。
 つまり、財務省が作成した「日本の財政を考える」とするレポートだけでなく、「日本の財政関係資料」も、この怪しげな「基本方針2006」をベースに組み立てられているのである。まさに、「公務員の、公務員による、公務員のための」、即ち、「公僕の、公僕による、公僕のための」レポートだ。一般国民の目線からすれば、「タメにするヨタ発言」以外の何ものでもない。財務省の戯言(たわごと)と称する所以である。

(この項つづく)

 ―― ―― ―― ―― ――

 ここで一句。

“気が合うね いいえ私が合わせてる” -彦根、競い姫

(毎日新聞、平成23年1月14日付、仲畑流万能川柳より)

(お互いさま。)

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