『大義名分なき公共事業』-大手前道路、大橋川改修、八ッ場ダム-1

 弊社主任コンサルタント山根治が講演した「大義名分なき公共事業 -大手前通り、大橋川改修、八ッ場ダム」についての講演内容を、数回に渡って「山根治blog」にて公開いたします。
***【講演会】「大義名分なき公共事業 -大手前通り、大橋川改修、八ッ場ダム」
-日時: 平成22年1月23日(土)13時35分~
-場所: 島根県民会館307号室 (島根県松江市殿町158番地)
-講師: 公認会計士 山根治



***【自己紹介・話の視点と趣旨】

 ただ今、ご紹介にあずかりました山根でございます。これから、座って話しをさせていただきます。今日は、お手元にお配りいたしましたレジュメに主に沿って、お話しすることにいたします。

 それに先立ちまして、まず私の立ち位置と申しますか、どういう立場でこういう問題に取り組んでいるか、このことをかいつまんで申し上げたいと思います。

 私は昭和17年に松江の寺町に生まれまして、高校を卒業してから15年ほど、東京とか名古屋とか京都で勉強したり修行したりして34歳の時に松江に帰ってまいりました。現在67歳ですので、おおむねこの松江には50年以上住み着いているものでございます。
 私はこの松江が非常に好きでございますので、終生の住処とする、2人の息子、4人の孫も松江に住んでいる、そういう立場でございます。ここで取り上げる大手前の道路については二・三年前に相談を受けて、こういう問題があるんだということをはじめて知った訳でございますが、大橋川の改修に関しては、それ以前から強い関心を持っていました。きっとどの方よりも強い関心を持っている一人でございます。

 その経緯を申し上げますと、先ほどの松江が好きだったことと、それから50年以上住み着いていること、それと現在の自宅は魚町にあるんですけれども、この魚町に決める前に、松江大橋の南詰めに、小さなビルがございまして、保険会社のビルだったと思うのですが、それが売りに出た。それを実は私買おうと思いまして契約寸前までいって、お金まで用意したんですけれども買えなかった。現在、もと家という料理店が入っていらっしゃる3階建てのビルです。
 私はこれを買って自分の自宅にしようと思っていたんですね。ところが買えなかった。20年ほど前のことです。

 私は、特に、大橋川のほとり、中でも松江大橋のたもと、あそこ辺りには小さい頃から現在に至るまで、特別な感情を持っておりまして、単なる場所と言うのではなくて、なんと言いますか、松江における私の心の拠り所の中心になっているような場所だ、ということで、松江大橋のたもとに自宅を置こうと思ったことがございました。しかし、どうしてもそれはできませんでした。
 私は現在あらためて数えてみましたら、魚町の自宅を中心にして、大橋川のまわり、特に白潟地区が一番多いんですが、所有している不動産の数が、10ほどになっていました。そのほとんどが、昭和47年の大水害の被害にあっています。
 こういうところからですね、皆様方は地域住民でいらっしゃるのですが、私の場合は地域住民であると同時に、治水問題に関しては直接の利害関係者というのでしょうか、こと大橋川改修に関しては、バリバリの利害関係者の一人である、こういった立ち位置でございます。
 小さい頃からなれ親しんできた松江大橋を壊したり、大橋川の両岸の風景を全く変えてしまうようなことをしたり、中洲のほとんどを削り取ってしまうというのですから、それこそ私の生活のテリトリーにズカズカと土足で踏み込んできたということで、個人的には怒り心頭といったところです。

 そういう立場が一つと、それともう一つ私の仕事が会計士でございまして、実務家でございます。会計士の仕事は40年ほどやってきているのですが、私の専門とするところが二つございます。一つは会社の分析をすることと、もう一つは数字のごまかしをチェックすること、この2つが私の専門でございます。自分で言うのもどうかと思いますが、この2つの分野に関しては、どの会計士にも負けないような仕事ができるという自負を持ってやってきております。
 特に数字のごまかしに関しては、私は税理士でもありますので、税務署とよくドンパチをやっていますが、この税務署という役所は、皆さんがお考えになっている以上に、インチキの限りをやってくれますので(笑)、私は税務署のゴマカシをチェックする。まあ、そういうことを生業にしている会計士であり税理士なんですね。
 会社の分析とか、それと数字のごまかしのチェック、そういうものは会計士という立場、もっと具体的に申し上げますと、会計工学、テクノロジーですね、そういう観点から取り組んでおります。

 そこで、会計工学をベースにしてこの大手前道路の問題、あるいは大橋川拡幅の問題を考えたときに、実はとんでもないごまかしがなされていることが分ってきました。それぞれ公共事業ですから、クリアしなければならない大きなハードルがあるんですが、そのハードルをクリアするために、元々の数字を役人達がごまかしている、そういうことが明らかになってきました。
 今日は、先ほど司会の野津庸二さんからお話しがありましたように、B/C(ビー・バイ・シー)(粉飾された2兆円 -1)、つまり費用対効果という一つのクリアしなければならない大きな関門がある、それをきちんとクリアするために元々の数字を役人達がどのようにごまかしているか、そういうことが今日の話の中心テーマになろうかと思います。

 これは、地元じゃないんですが、関東地方にある八ッ場ダム、このケースもインチキという点では全く同じです。私は、大橋川改修(粉飾された2兆円)も、それから八ッ場ダム(『疑惑のダム事業4,600億円』-八ッ場ダムの費用対効果(B/C)について)も、両方とも膨大な元のデータを分析しまして、その結果を私のホームページで既に公表しております。詳しいことはそちらを御覧下さい。

(司会) レジュメはお配りした資料の真中あたりに入っております。合せて11ページ、資料を含めて付けておりますので、それをご参照ください。

 申し訳ございません。私の、レジュメはですね、大義なき公共事業と題したもの(1/23講演会「大義名分なき公共事業 -大手前通り、大橋川改修、八ッ場ダム」(講師:山根治)の要旨について)で、3ページほどつけています。あと、添付資料を何枚かつけております。
 今日の話はそのレジュメに沿ってさせていただくということでございます。

 今日の話の結論的なことを申し上げますと、先ほど申し上げたように、結果をもっともらしくするために、計算の元になる数字をごまかしている、これが結論です。結果というのは何かといいますと、費用対効果の値、B/Cです。これを1以上にする。今、斐伊川水域では、3.4(2003年の数字。ちなみに2008年は大橋川改修を除いた上で2.4に減少)の値が出ていますし、大手前では1.2(二工区の数字)が出ていますが、要するにその数字をプラスにして、かつ、1以上にする。このような結果を得るために、何がなされたか。それは計算の根拠である、元々のデータを改竄して、改竄というか、完全にデッチ上げだと思うのですが、元々のデータに滅茶苦茶なものを持ってきて小細工をしています
 大手前道路は何をいじったか、交通量です。将来の見込みの交通量を、いじっている。膨大なものにしている。
 それから、大橋川改修に関しては何をいじったか。水害の見込額です。150年に1度の水害が起こった場合に、どれだけの水害が出るか、どれだけの水害被害が出るかという見積りをやっているんですが、それについて驚くほどの水増しをしている。この水増しは実は、大手前道路の比ではありません。斐伊川水系全体で計算してみたところナント65倍もの水増しをしている。これは時間があったら詳しく申し上げます。

 ということで、私は、大手前道路、大橋川改修についてはそれぞれ論点がいろいろあるんですが、今日は公共事業をする上でクリアしなければならないものを、行政側がインチキをしてゴマカシている、このことを中心にしてお話し申し上げます。つまり、国交省も島根県も松江市も、国民・地域住民をゴマカシて、しなくてもいいムダな公共事業をゴリ押ししようとしていることを明らかにいたします。

(この項つづく)

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 ここで一句。

“若い時 美人でしょうと 言う失礼” -仙台、浜やらわ。

 

(毎日新聞、平成22年1月26日付、仲畑流万能川柳より)

(今はどうだと言いたいの、フン。)

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