粉飾された2兆円 -17

 地域住民に重要な情報を隠しつづけ、なんとか事業開始に持ち込もうとしているのが国交省出雲河川事務所です。私達地域住民が開示を要求している、たとえば、

+洪水発生時の流量シミュレーションの詳細、

+洪水発生時の水害被害見込額とその詳細、

+費用対効果分析の計算明細、

+現時点における大橋川改修工事の見積額とその明細、

などの情報が、いくら要請しても開示されないのです。(※3.については行政文書開示決定通知書を受け取ったので近日中に開示される予定。また、4.については700億円というマスコミ報道があったが、文書での開示はないし、明細についても不明。)

 全てをブラックボックスの中に閉じ込めて、遮二無二(しゃにむに。がむしゃらに、ということです)事業を押し進めようということなのでしょうか。

 地方自治体は、国交省の言うがままになって、この怪しげな河川改修事業のお先棒をかついでいます。
 ことに松江市当局の対応はヒドイもので、”百年に一度の街づくりのチャンス“などと血迷ったセリフを口にする始末です。水郷松江市のシンボルである大橋川と大橋を、原形をとどめない程ズタズタの状態にすることが”百年に一度の街づくりのチャンス“であると言うのですから、開いた口がふさがりません。国交省の言うことを素直に聴いて、そのついでに、周辺の道路とか公園の整備をしてもらうつもりのようですが、本末転倒もいいところです。更にはエスカレートして、松江市街地に路面電車(LRT)を走らせる計画まで国におねだりするといった情報が流れてくる始末です。水郷のシンボルである大橋と大橋川とを大きく傷つけておいて、一体何をしようというのでしょうか。

 松江市は、毎月市内の全戸に配布する広報紙を使って大橋川改修事業の後押しに余念がありません。昭和47年の大水害、あるいは一昨年の水害の写真を大きく掲載しては盛んに松江市民の不安をあおっているのです。
 しかし、私達地域住民は、市街地の浸水についてはさほどの被害意識を持ってはいないのです。松江市街地の浸水の特徴は、ゆっくりと水位が上がってくることにあり、急激なテッポウ水とか土石流が押し寄せることなどないからです。そのため、家が壊れてしまうことはありませんし、洪水によって死者が出ることもありません。宍道湖という大きな水がめがクッションになっており、大雨が降ってから浸水するまでには相当のタイムラグ(時間の遅れ)がありますので、降雨の状況を見れば、いつごろ、どこで、どの位の浸水があるのか予測ができ、それなりの対応策をとることができるのです。
 それに加えて、ほとんどの家庭とか商店ではしかるべき浸水対策を講じています。たとえば、家を新築する場合はもちろんのこと、増改築する際にも床を高くする工事を施しており、浸水があったとしても床下までにとどまるようにしているのです。水郷に生活する者としての当然の知恵といってもいいでしょう。
 私達にさほどの被害意識がないためでしょうか、浸水を楽しんでいる向きさえあります。一昨年の浸水の時のことでした。松江市街地は広域下水道が普及しているためでしょうか、汚物で水が汚れることもなく、比較的キレイな水が流れており、浸水した道路にあまさぎ(わかさぎのことです)の稚魚が群れをなして泳いでいるのを、親子三人でたも(すくい網のことです)ですくってはバケツに入れている光景に出会いました。なんとも楽しそうでしたね。父親に、魚のすくい方を教わっていた二人の子供にとっては、またとない想い出として残ることでしょう。
 私の事務所の前の道路は水が溢れてきたために3日ほど通行止めになり、そのために臨時休業としました。賃貸物件のうち2つは、一週間近く床下浸水をしていました。これらを被害といえば言えるでしょうが、損害はどれ位かと問いかけられても、ほとんどなかったと答えるしかありません。ちなみに、私の自宅は20年ほど前の新築時に1m以上の嵩上げ工事を施していましたので全く心配はありませんでした。

 松江市街地で最も多く浸水被害を受けるのは、JR松江駅を中心とした地域とそれに隣接する白潟地区です。地盤が低いところだからです。多くのオフィスとか商店・飲食店が軒を並べる商業地域です。
 この地域は松江市内では地価の一番高いところでもあるのですが、それは、交通の利便性がいいことから商業施設が立地して多くの人々が集まり、そのために土地の収益性が高いからです。つまり、この地区で土地を取得して商売を始めても、あるいは賃貸物件として土地を求めても採算が合うのです。その上に、この地区に住んでいる者の実感としては、快適な生活を送ることができることです。私は20年ほど前からこの地区の商店街の裏通りに住んでいるのですが、大好きな宍道湖と松江大橋は歩いて2~3分で行けますし、JR松江駅、県庁、市役所、日本赤十字病院、図書館(県立と市立)、美術館、博物館など市民生活を送るのに必要なほとんどの施設が歩いて10分の範囲内に入っているからです。子供の頃からの憩いの場所であった城山(じょうざん)公園(松江城をとりまく緑地帯のことです)もゆっくり歩いて10分ほどのところにあります。
 つまり、何年かに一度、あるいは何十年かに一度位水に浸(つ)かったとしても十分にソロバンが合うほどの利便性、収益性、快適性があるということです。松江市は広報紙まで駆使していたずらに水害の不安をあおり、洪水防止のための大橋川改修の必要性をさかんに力説していますが、この地域で生活している私達にしたら、余計なお世話です。長年いわば水郷の中心部に住みついてきた地域住民の生活実感を無視した、役人達の戯言(たわごと)と言ってもいいでしょう。

(この項つづく)

 ―― ―― ―― ―― ――

 ここで一句。

“天国で 待っていられて 困ってる” -埼玉、福沢繁。

(毎日新聞、平成20年5月5日号より)

(この世だけで腹一杯。)

***<今の松江> (平成20年6月15日撮影)
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^cx^千手院入口(石橋町)
^cx^千手院参道(石橋町)
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^<%image(20080812-3562.jpg|320|240|千手院入口(石橋町))%>
^<%image(20080812-f682.jpg|320|240|千手院参道(石橋町))%>
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^cx^千手院参道(石橋町)
^cx^千手院境内(石橋町)
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^<%image(20080812-96b6.jpg|320|240|千手院参道(石橋町))%>
^<%image(20080812-2058.jpg|320|240|千手院境内(石橋町))%>
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