粉飾された2兆円 -6

 テーマの背景についての説明はひとまず終え、2兆円という数字を何故インチキであると判断したのか、その説明に移ります。



 私が注目した公文書は、

-『河川改修事業及びダム建設事業の再評価項目調書

と題された一枚でした。

 これは、30年ほど前から続けられてきた斐伊川水系の河川整備事業について、費用対便益分析(B/C分析のことです)を行った結果を示したものです。

 そこでは水系全体のB/C分析の結果は、総費用(C)が、6,047億円であるのに対して、総便益(B)が、20,658億円(2兆658億円)であるとされ、B ÷ C = 20,658億円 ÷ 6,047億円 = 3.42として、B/C=3.42の値が示されています。

 この数字が妥当であるかどうかを吟味するに際しては、計算の拠(よりどころ)とされている『治水経済調査マニュアル(案)平成12年5月版』(以下『マニュアル』と言います。ただし、現在、公表されているのは、平成17年4月版です)が正しいものとし、かつ、『マニュアル』に忠実に従って計算がなされているものと仮定いたします。
 このような仮定を置いた上で吟味をせざるを得ないのは、次の2つの理由によります。

 一つは、国交省河川局が出している『マニュアル』そのものが、かなり怪しいシロモノで、いくつかのオカシナ点が見受けられることです。たとえば、総費用(C)の算定にあたって、総便益(B)と同じように4%で割引計算をしてみたり、あるいは、総便益(B)の算定にあたって、家屋や家財を再調達価格で算定してみたりと、随分オモシロイことをやってのけているのです。この『マニュアル』そのものの誤りについては上記の他にも散見されますので稿を改めて論ずるつもりでいますが、ここでは、一応正しいものと仮定することにいたします。

 二つは、分析の結果が公表されているだけで分析のプロセスが明らかにされていないことです。
 私達は、分析のバック・データ(分析の詳細な計算明細のことです)を開示するように、国交省出雲河川事務所に対して、文書とか口頭でたびたび要請したのですが、
『明らかにすることはできない』
と拒否され今日に至っています。『マニュアル』には

“なお、費用対便益分析に用いたデータ及び計算方法は原則として公表するものとする。”(『マニュアル』P.78)

とされていることを差し示して要請しても尚、頑なに開示しようとしないのです。
 従って、現時点では、算定されたB/Cの値3.42が『マニュアル』に忠実に従ったものであるかどうか直接には確認することができません。ストレートに計算過程のチェックができないのです。ここでは一応、『マニュアル』に忠実に従って計算がなされているものと仮定し、B/Cの値が妥当であるかどうかの吟味の出発点といたします。

(この項つづく)

 ―― ―― ―― ―― ――

 ここで一句。

“獲物狩る 目をしてチラシ 見てる母” -東京、木村美智子。

(毎日新聞、平成20年4月24日号より)

(一緒になって40年を過ぎたわが配偶者もチラシ大好き人間の一人。朝の時間が楽しそうです。)

***<今の松江>
 白壁が連なる塩見縄手(北堀町)。わが愛する小径の一つ。(平成20年5月16日、撮影)

塩見縄手 塩見縄手

塩見縄手 塩見縄手

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