裏金アラカルト 7

 納入価額に100億円を上乗せすること、― 昨今防衛省がらみの不正事件で話題になっている、防衛商社の山田洋行による水増し請求と同じような構図です。防衛省の場合は、アメリカのメーカーからの請求書を商社である山田洋行が改竄(かいざん)したといわれていますが、このODA案件でも、日本のプラントメーカーもしくは大手商社の段階で積算の水増しがなされているものと思われます。特殊なプラントであり、しかもODAがらみの随意契約となればもっともらしい見積りの積算など朝メシ前、どのようにでも細工できるでしょう。

このような水増し請求は、公金を騙し盗ることを意味します。言い換えれば税金ドロボーということです。政治家とおぼしき『日本の要人』が、相手国の要人と親密な武道家をエージェントという名のフィクサーに仕立て上げ、日本の国庫から金をかすめとるという図式です。日本国内で公共工事のピンはねをやっている政治家と変わるところがありません。ちなみに、公共工事を受注する際に一部の政治家に仲介手数料(ワイロということです)が手渡されるのは公然の秘密のようなものですが、これについても公共工事を受注しようとするゼネコンが自らの利益を削ってまでワイロを工面しているのではない、ということです。自分達の利益はしっかりと確保した上で、ワイロ部分を水増ししているだけなのです。
 形の上では入札方式を採用していても、単なるカモフラージュであることが多く、役所側が作成した入札予定価額は事前に業者側に筒抜けになっていますし、研究会と称したりする“談合”が跡を絶たないのです。このところ談合の摘発が続いているようですが、氷山の一角、どこ吹く風といったところです。ことに最近は公共工事の絶対量が削られていますので、ワイロを生業(なりわい)としている政治家への謝礼の率が、従来の3%から5%へと引き上げられたというウラミ節が不況にあえぐ業者から漏れてくるのも、利権構造がしっかりと温存されている証(あかし)です。
 このような、談合-ワイロという公金の収奪構造は果していつまで続くのでしょうか。

 ODAの場合は、日本国内での「談合-ワイロ」というピンハネの構図に較べて海外がからむだけにやや複雑になります。別の見方をいたしますと、エージェント料(ワイロということです)を受け取るのに、海外との取引がからんでいますので国内取引と較べて露見して摘発されるリスクは格段に小さくなるはずです。ワイロを受け取る政治家としては、安全性の高いウマ味のある案件という訳です。いま取り上げているケースについて言えば、プラントメーカーにしても、大手商社にしても、国内・国外を含めて、それぞれ数百社の子会社とか関係会社を持っていますので、いくつかの会社にキャッチボールのようなことをさせたりすれば、ウラ金工作など頭を悩ませるほどのことではありません。いくつかに分割して通常の取引の中にブチ込んでしまえば、公認会計士の監査はもちろんのこと、強制力をもっている国税の調査においても、こと細かな内部告発でもない限り、ウラ金の実態が表沙汰になることはまずないでしょう。ましてや、経済事件についての捜査能力が決定的に欠けている検察にいたっては、海外取引自体、理解することさえできないかもしれません。たとえて言えば、小学生に大学の入試問題をやらせるようなものでしょうか。しかも、その小学生としての検察官が余りデキの良くないコドモであったとすれば、振り回される国民としたらたまったものではありませんね。

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 ここで一句。

“里山の アケビをねらう 子らもなく” -大分、春野小川。

(毎日新聞、平成19年12月19日号より)

(アケビとクルミは子供のころの私にとっては最高のおやつでした。台風が過ぎ去った朝早く、松江の城山(じょうざん)に駆けつけてクルミを拾い集めるのは何よりの楽しみでした。)

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