裏金アラカルト 5
- 2008.01.01
- 山根治blog
フィクサーであるO.H.氏が渋々ながら重い口を開いて明らかにしたのは、次のようなことでした。「大手商社が受けとるコミッションは5%、そのうち、自分の会社(現地のダミー法人のことです)が1%、別の会社(日本のダミー法人のことです)が1%だ。これは表向きのもので、この他に実は裏のコミッションがある。
この裏のコミッションは10%、これは両国(日本と中近東のODAの相手国)の“天の声”に渡すことになっている。その内訳は、相手国の天の声に6%、日本の天の声に4%だ。」
金額的に言えば次のようになります。
+表のコミッション。円借款375億円の5%、18億7,500万円。
++大手商社の取り分は3%、11億2,500万円。
++日本のダミー法人の取り分は1%、3億7,500万円。
++現地のダミー法人の取り分は1%、3億7,500万円。
+裏のコミッション。円借款375億円の10%、37億5,000万円。
++現地の“天の声”へ。6%、22億5,000万円。
++日本の“天の声”へ。4%、15億円。
私は、O.H.氏に対して“天の声”とは誰のことか問いただしてみたのですが、相手国の要人、日本の要人としか答は返ってきませんでした。更には、最も興味があった、裏金の実際の流れ、つまり、誰がどのようにして10%の裏金を工面して、どのようにして“天の声”に首尾よく届けるのかについても尋ねてみたのですが、頑として教えてはくれませんでした。私には捜査の権限があるわけではありませんし、また、知人からの依頼も、ODA話の真偽ということでしたから、それ以上立ち入ることは控えることにいたしました。
ただ一つだけどうしても気になっていたことがありましたので、カマをかけて聴き出すことにしました。
私から思いもかけなかった質問が飛び出してきたので驚いたからでしょうか、ギョッとした顔付をしながら、何故、そんなことをきくのかと反論してきましたので、私が疑問に思うに至った理由を話すことにしました。
このような状況のもとで、1%といっても金額的には3億7,500万円と少なからぬものではあるが、その6倍もの金がヌレ手に粟の形で現地の要人に渡るというのが今一つ私には分かりづらい。
更には、彼らからかなりの前金を要求されているということで、それを立て替えるあなたには相当以上のリスクがある。このようなことを考え合せると、あなたが1%だけのコミッションで眼の色をかえて走り回っているのがどうしても腑に落ちない。」
しばしの沈黙の後、実は、といってこのフィクサーが声をひそめて明らかにしたのは、日本の要人への4%はそのまま要人に流れるが、現地の要人分の6%については、半分の3%は自分がもらうことになっているというものでした。
―― ―― ―― ―― ――
ここで一句。
(詐欺師と言われている人々の多くに共通するのは、自分が詐欺師であるとは夢にも思っていないことです。自分でもっともらしい話を創り上げているうちに、フィクションを真実のものと思い込んでしまうからなのでしょうか。これも心の病の一つなのかもしれませんね。私は40年の会計士人生の中で、かなり多くのこのような人々との出会いを経験しています。)