ゲームとしての犯罪 -5

では、一般の人に較べて破格の条件でライブドア株を手に入れることができた人、あるいは手に入れる権利を持っている人とはどのような人達でしょうか。しかも、オーナーである堀江貴文氏と共通の利害を持っている人達とはどのような存在なのでしょうか。

ライブドアからストック・オプション(一定の条件で株式を購入する権利)を付与された人達、このような人達がこれに該当します。他にも小細工があるでしょうが、人数の多さからいって、ストック・オプションの右に出るものはありません。

この6年間でライブドアが関係者に与えたストック・オプションの全ては次の通りです。

***<表3>ライブドアが関係者に与えたストック・オプションの全て
^^t
^cc”^回
^cc”^付与年月日
^cc”^株数 (株)
^cc”^単価 (円)
^cc”^付与人数 (人)
^^
^No.1
^平成12年1月19日 (上場前)
^rr”^497
^rr”^250,000
^rr”^42
^^
^No.2
^平成13年7月19日
^rr”^457
^rr”^570,300
^rr”^127
^^
^No.3
^平成14年12月20日
^rr”^600
^rr”^247,000
^rr”^145
^^
^No.4
^平成15年12月19日
^rr”^5,000,000
^rr”^451
^rr”^323
^^
^No.5
^平成16年12月26日
^rr”^6,000,000
^rr”^583
^rr”^334
^^
^rr” colspan=”4″^延人数
^rr”^971
^^/
上の表で気がつくのは、人数の多さです。5回にわたって付与された人の数は、延でナント、971人にもなるのです。それぞれ、ライブドアあるいは子会社の役員と従業員に付与されているのですが、No.5の平成16年12月26日のストック・オプションは、役員とか従業員に加えて「社外協力者」にも与えられています(第9期有報、「ストックオプション制度の内容」に記載)。ただ何故か、第10期(平成17年9月期)の有価証券報告書の上では社外協力者という言葉が消えています。
延971人のうち、名前と与えられた株数が開示(ディスクローズ)されているのは、上場前のNo.1(平成12年1月19日分)の42人だけで、残りの929人については明らかにされていません。
要するに、延で1000人近くのライブドア関係者に、ストック・オプションという特別な権利が与えられていたということです。大盤振舞いですね。なにせライブドアとしたら、株券という紙切れを印刷して渡せばいいのですから。

このところ、堀江貴文氏とライブドアを擁護するような論調の外に、ライブドアの従業員については、

“粉飾をして一般投資家を騙したり、風説の流布などをして株価の操作をして私腹を肥したのは、堀江氏をはじめ一握りの幹部であって、ほとんどの社員は一所懸命に汗水流して働いている真面目な人達である。”

とか言われているようです。
私はこのような意見については、否定も肯定もする立場にはありません。ライブドアの社員と親しいわけではなく、彼らがどのような仕事をどのように行っているのか知らないからです。
ただ、少なからぬ人数の社員に対して、ストック・オプションが与えられていたことは厳然たる事実です。この事実は、オーナー経営者である堀江貴文氏の利害と、ストック・オプションを与えられた多くの社員の利害とが完全に一致していたことを示すものです。つまり、どのような理由からであろうとも、ライブドアの株価が上がれば上がるほどその人達はボロ儲けできますし、逆に株価が下がるとその儲けが夢と消えてしまう仕組みになっていたのです。
ストック・オプションを割り当てられた、「社外協力者」についても同じようなことが言えるのですが、この人達は一体どのような人達なのでしょうか。まさかジャーナリストとか政治家には渡っていないでしょうが、実際のところを知りたいものですね。

―― ―― ―― ―― ――

ここで一句。

“捨てられぬ 株券をただ じっと見る” -五條、ノウマイ。

 

(毎日新聞:平成18年5月10日号より)

(ストック・オプションは、いわば当籤がほぼ約束された宝くじのようなもの。一般投資家との落差は余りにも大きい。)

 

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