冤罪を創る人々vol.110

2006年04月25日 第110号 発行部数:600部

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「冤罪を創る人々」-国家暴力の現場から-
http://consul.mz-style.com/catid/11

日本一の脱税事件で逮捕起訴された公認会計士の闘いの実録。
マルサと検察が行なった捏造の実態を明らかにする。
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山根治(やまね・おさむ)  昭和17年(1942年)7月 生まれ
株式会社フォレスト・コンサルタンツ 主任コンサルタント
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●「引かれ者の小唄」 ― 勾留の日々とその後
http://consul.mz-style.com/catid/41

「おぞいもん -その1」より続く
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・ おぞいもん -その2

出雲弁の「おぞいもん」は、「おぞい」+「もん」である。「も
ん」というのは、「もの」の音便だ。若いもん(若い者)、うまい
もん(うまいもの)、甘いもん(甘いもの)、などと使われており、
出雲弁特有のものではない。

「おぞい」はどうか。我が家で一番大きな国語辞典(日本国語大
辞典、小学館刊)で調べてみたところ、『おぞ・い(悍)』と出て
おり、2つ目の意味合いとして、恐ろしい、こわいとあった。用例
として、源氏物語とか天草本平家物語などから引用されている。
奈良時代はどうなのか気になったので、万葉集に限って調べてみ
た。折にふれてページをめくっては遊んでいる「萬葉集總索引、正
宗敦夫編。平凡社刊」にあたってみたところ、万葉集の中には「お
ぞい」、あるいは「おぞし」「おずし」「おず」の用例は一つもな
いようである。
おそらくは奈良時代以前にも使われていたであろうが、現在のと
ころ文献として残っているものは、平安時代からのものであろう。
それにしても、出雲弁として日常使われている「おぞい」という言
葉はレッキとした古代語なのである。
かつて万葉集と日本書紀とを親しく教えていただいた朴炳植(パ
ク・ビョンシク)先生は、つねづね

“地名とか方言は、タイム・カプセルのようなもので、多くの情報を
内に秘めている。”

と、おっしゃっていた。
たしかに、わが出雲弁は、かなり多くの古代語だけでなく、中世、
近世と、それぞれの時代の言葉を豊かに残している。読書を通じて
私が古い時代に遊ぶことができるのは、あるいは、古い時代の言葉
をしっかりと残している出雲弁のおかげではないかとさえ思ってい
る。一つでも実感できる言葉があれば、それを手がかりにして作品
の中にスンナリと没入することができるからである。
尚、「おぞい」を恐ろしいとか怖いという意味で使っているのは、
出雲地方だけでなく、全国各地に広がっているようだ。各地で使わ
れているのには、それなりの歴史的な背景があったであろうし、そ
の経緯についてあれこれと空想の輪を広げてみるだけでも楽しいも
のである。

今昔物語の中に、あろうことか、猫が怖くてしかたがない男の話
が出てくる。猫が「おぞい」のである。私のような猫大好き人間に
とっては、とても信じがたいことだ。
男の名前は、藤原清廉(きよかど)、平安時代中期を、77歳ま
で生き抜いた実在の人物である。山城、大和、伊賀の三ヶ国にわたっ
て多くの領地を持っている『器量の徳人』(いかめしのとくにん。
大変な資産家)であったが、官物(かんもつ。納めるべき租税とし
ての米)を納めたことがない。ケチなのである。いくら督促されて
も、ノラリクラリと言を左右にして逃げている。叙爵されている身
分をカサにきて、税を逃れようとする、なんともしたたかな人物で
あった。
いざとなれば、東大寺にでも領地を寄進したことにすればよい、
木っ端役人の国司ごときに手出しなどさせるものかと、心の中で嘯
いている、まことにもって食えないオヤジである。現代の日本にお
いて、宗教法人を隠れ蓑にして税逃れを企んでいる連中とかわると
ころがない。
ところが、税を取り立てる国司のほうが、役者としては一枚上手
であった。国司の名は、藤原輔公(すけきみ)、奇策をもって税を
完納させてしまったのである。

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●山根治blog (※山根治が日々考えること)
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・ ゲームとしての犯罪 -1

パソコン・ゲームの影響もあるのでしょうか、近年、少年による
ゲーム感覚の犯罪が多発しています。ごく普通の子供が、さしたる
理由もないのに残虐な殺人をしたり、これまたごく普通の女の子が、
オヤジ狩りと称して計画的に痴漢事件をデッチ上げたりしています。
ともに、犯罪意識が全く欠けているようです。
ゲームならばリセットできるでしょうが、殺された人は生きかえ
ることはありませんし、痴漢の冤罪事件に巻き込まれた人は、それ
こそ取り返しがつかないほど人生がメチャクチャになってしまいま
す。
一方、犯罪を犯した子供の方は、少年法という手厚い保護がある
ため、氏名とか顔写真が公表されることはありません。面白半分に
痴漢事件をデッチ上げた女の子たちも、“被害者”ということで、
それ以上の追及がなされることはありません。処罰に関しても、罪
一等を減ずるどころか、更生を主な目的としている少年法によって、
よほどのことがない限り、刑務所に送られることはありません。
つまり、犯罪を犯したとしても、彼ら及び彼女たちは安全圏内に
いるのです。しかも、安全であることを誰よりもよく知っているの
が彼ら及び彼女たちなのです。ゲームの相手を破滅にまで追い込ん
だとしても、自分達はほとんど傷つくことはありません。ゲームを
リセットし、新たなゲームに興ずることが可能です。
このような考えは、少年犯罪の被害者側に顕著なものですが、第
三者の立場から見ても決して否定することのできない現実です。

ライブドア事件を振り返ってみますと、このような少年犯罪と驚
くほどよく似ていることが判ります。

まず、当事者がコドモであることです。これについては、一年前
に友野雪子さんが女性ならではの鋭い直観力によってズバリ見抜い
ています。(「ホリエモンの錬金術-号外」で言及しました)。現
時点で友野さんのお書きになった記事(“Will”2005年5
月号所収)を読み返してみますと、その的確な指摘に改めて感心い
たします。

次に言えることは、コドモが株式市場をゲーム感覚で弄(もてあ
そ)んだことです。バーチャルなパソコンゲームをいじっていたと
ころ、いつの間にか現実の世界に結びついてしまったということで
しょう。
IT企業としての実態がほとんどないにも拘らず、いくつかのゴ
マカシを組み合わせて、将来性をフーセンのように膨らませて遊ん
でいたら、実態と全くかけ離れた株価で上場ができてしまったので
す。しかし、現実の株式市場は決してバーチャルな世界ではありま
せん。真実の事業収益が冷徹に見据えられる、厳しい現実の世界な
のです。

もともと実態を伴わない架空の事業計画しかなかったのですから、
上場後はいきあたりバッタリの連続で、高い株価の背景とされた
キャッシュフローなど実現できるはずがありません。上場後の一時
期、ライブドアの時価総額(株価×発行済株式数)が50億円ほど
になったことがありますが、このときの株価こそ、当時の株式市場
が妥当であると判定した水準だったのでしょう。
ところが、時価総額が上場時の10分の1にまで下がったのです
から、最も利害関係があるチャイルド・オーナーとしての堀江貴文
氏にとっては、なんともガマンできないことだったのかもしれませ
ん。
ここで再び、株価をつり上げるためのバーチャルなゲームが机上
で考えられ、現実の世界で実行に移されました。それが破天荒な一
万分割という株式分割であり、決算のゴマカシ(粉飾決算)でした。
まともな経営者であれば、頭の中で思いつくことはあってもとても
実行に移すことなどできないトンデモないことです。ゲーム感覚の
コドモのアソビだからこそ、できたことでしょう。
この結果、時価総額は5000億円へと、100倍にもつり上げ
られました。その後は、怪しげな外資であるリーマンブラザーズが、
コドモの火遊びに800億円というお金を提供して、ドサクサまぎ
れに荒稼ぎをしたかと思えば、フジテレビは、コドモの脅しに屈し
て、ニッポン放送株を高値で買い取らせられたり、440億円もの
増資に応じて、インチキ虚業集団の仲間入りをし、自民党にいたっ
ては、小泉改革のシンボル、小泉チルドレンの代表格として堀江氏
を選挙にかつぎ上げ、その虚像を更に拡大する役割を果しました。
その結果、昨年の12月には、時価総額が8000億円までに膨ら
んでしまったのです。

―― ―― ―― ―― ――

ここで一句。

“悪知恵も東大卒で質高く” -福島、式野美子。
(毎日新聞:平成18年4月18日号より)

(Mファンド-総会屋とか、乗っ取り屋として名を馳せた横井英樹氏
とどこが違うでしょうか。いずれも、まっとうな商売ではありませ
ん。東大卒といってもピンからキリまで。数多くいる、質の高いピ
ン・クラスはあまり目立ちませんが、キリ・クラスがとかく話題に
なるようですね。なんだかチルドレンの中にも、少しばかりトウの
立った目障りなオバサンが一人がいたりして。)

 

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